戦国の鍛冶師

和蔵(わくら)

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第58話 アンジェと企み

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御者組合から、鍛冶屋の黒猫屋に戻ってきた好成だったのだが、帰るなり直ぐに
芳乃達を集め、今日の出来事を皆に、話し出したのだった。町の漁師達の事、安
酒場での傭兵団の事、建築組合の事、最後に御者組合での事を芳乃達に話して
訊かせたのだった。

それぞれの者達への対応を芳乃達と話し合って、決めていったのだった。そして
オレーク式で出来上がった銃を箱から出すと、出来上がりを確かめてから、芳乃
達に渡して行き、銃の試し撃ちをさせると、明日からの取扱い説明会で使える様
にしていったのだった。説明会に参加する人数が人数だけに、それなりの銃を集
めて置かなければ、説明会にきた者達に銃が行き渡らなくなる可能性があった。

来式もオレークさんと静に頼んでいるので、量は少ないが数十丁はあるから、説明
会でも取り扱いの説明は出来るのだが、オレーク式に比べると数が圧倒的に少ない
から、人材集めが終われば俺も来式の生産を本格的に始めなければ、奪還時期まで
に数を揃えることが出来なくなる恐れがあった。そうなれば、奪還自体が失敗する
恐れさえあるのだ。そうならない為にも、早めに俺が生産に回らなければならなか
ったのだ。

銃の点検も終わり、俺達は宿に帰ると夕飯にしたのだった。夕飯の内容は、ステー
ク・フリットと言う肉料理だった。モモやフィレなど、霜降りではない赤身の肉肉
しい肉を塩胡椒でシンプルに焼き上げ、たっぷりのフライドポテトを添えた料理な
のだ。食べて見ると、肉が癖になる味で、ぴりっとした辛さの中に、肉の旨みが程
よく絡み更に味を良くしていた。

それと、野菜のスープも出されたが、流石にスープは食べられなかった。
肉とポテトと言う芋を食べたら、お腹が一杯になってしまう、これ以上食べるのは
無理なので、スープには手を付けずに残したのだった。

残ったスープを見詰めていたのは、アンジェとダーンだった。2人は俺達が残した
スープを4人分を貰うと、凄い勢いで食べてしまったのだ。相変わらずの大食いは
変わらずである。更にスープに付いていたパンも、4人分貰っているのだから対し
た食べぷりである!

それぞれ食事が終わると、食堂でお湯を貰ったりしている。このお湯は身体を拭く
為のものなのだ。温泉地に帰れば、俺達は迷わず温泉に浸かるのだが、此処には
温泉もなければ、お風呂もなかったのだ。だから、食堂でお湯を貰っているの!

俺もお湯を貰って部屋に帰ろうと思っていると、ベランダにアンジェが居る事に
気が付いたので、アンジェの傍に行き、少しだけだが話をしようと話しかけたの
だった。

「アンジェ!あのさ~訊きたい事があるんだけど、話できるかな?」

「話って何の話かな?」

「今回のケット・シーの集落での事なんだけど、これって全てはアンジェが企んだ
 事だよな?インガ婆様や匠の店主さん、ヤーコブとアントン達にも話をしたのっ
 て全てアンジェなんだろ?」

「何だ全部知っていたんだね?あたいが頑張って裏でコソコソ企んでいたのも、
 全部お見通しだったのかな?なのに何で怒らないのかな?」

「こんな事をしなくても、俺はアンジェの手伝いをしたよ!集落で大切な人が待っ
 てるんだろ?ならば、早く迎えに行かないとな、俺に出来る事があれば、何時で
 も言ってくれ協力させてもらうよ」

「何で好成は、そんなに優しいんだ!普通は利用されたら怒るよ!それなのに好成
 は全然怒りもしないし、あたいを攻めもしない、おかしよ!何でなの?それとも
 何か企んでいるの?」

「怒らないのが、そんなにおかしな事だったのか?それならば、今からでも怒鳴り
 散らす事はできるが、怒鳴られたいのか?そうじゃないだろう?協力するって言
 ってるんだから、素直に俺の気持ちを受け止めればいいのにな!」

「何も企んでいないの?人間なのに!?好成は不思議な人間だね!人間って言うの
 は精霊を見下し、利用し、隙あらば食い物にするのが人間なんだよ!それなのに
 好成は、あたいに協力してくれるとまで言ってくれた。どこまでも御人好しなの
 ありえないよ!」

俺はアンジェに笑って答えるだけだった。この世界の人間は、精霊や妖精をそんな
風に見ている事は、何となくだが、雰囲気で解っていたが、アンジェ達も表には出
さなかったが、村人以外の人間に対しては、非常に警戒している事は見てて、知っ
ていた。

辺境の村や集落では、助け合わなければ死ぬだけだが、町に出ると人間は精霊や
妖精を食い物にするのだろう!?だから、アンジェは俺に逆の事をした。それだ
けの話なのだ。

「何で何も言わないで笑ってるだけなの?好成は馬鹿なの!?あたいは好成に酷い
 事をしたんだよ。それなのに好成は、あたいを許してくれるとでも言うの?」

「アンジェ!一緒に暮らす仲間を信じられないのならば、温泉地で一緒に暮らす
 事は出来ない!なので、アンジェを信じるし、全てを許すよ!」

「もう何なんだよ.....好成って大馬鹿だよ.....ううぅぅぅぅ」

アンジェは、最後には泣き出してしまったのだが、傍にいたのだろうダーンが直ぐに
俺に挨拶をすると、アンジェを部屋に連れて行ったのだった。

すれ違い様にダーンが俺に「有難う」と、だけ言うと、素早く部屋に向かったのだ。
ダーンも素直じゃないな!でもアンジェ寄りかは素直かもしれない!

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