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第53話 説明と説得
しおりを挟む俺の我慢の限界に達した事により、乱暴な言葉遣いになってしまたが、
支部長さんからは返事をもらう事が出来たのだった。恫喝まがいの事で
返事を貰ってしまったが、俺達には俺達の都合がある、向こうの都合に
付き合う余裕は、今の俺達にはないのだ。
「怒鳴ってしまい、申し訳ない。だが、俺達には3ヵ月以内には行動に
移さなければ成らないのです。ぐだぐだ議論する時間さえ惜しいので
すよ。我々シーランド銃組合は3ヶ月後には、特殊組合に昇格するか
もしれない、その時に特殊組合として要請しても良いのですが、それ
では余りにも遅すぎるのです。どうか我々を信じて仕事をして下さい
お願いします。」
「出来たばかりの組合が、特殊組合になるのか......そんなのは大砲組合
に次いで2番目の事じゃないか!銃と言う物は、それだけの代物と言
う事なのか!うーむ......儂としては返事をした以上は依頼を受けたと
言う事だからな、建築組合は受けた依頼は必ず遣り遂げる事で、皆か
らの信頼を勝ち取ってきた組織じゃて、それを今更だが、儂が壊す訳
にはいかん、じゃから引き受けた以上は、儂等の命は御主に預ける!
若い衆を死なない様に鍛えて遣ってくれんか!」
「支部長さんや!貴方は陣頭指揮を執らないと行けない立場の方ですぞ、
そんな指揮官が、若い衆だけに任せる事は間違っていると思うんです
支部長さんも若い衆と一緒になって、戦闘訓練に参加して下さいね」
「なんじゃとぉ~!?」
俺は支部長さんに、爽やかな顔をして、その事を伝えたのだった。
支部長さんは驚いていたが、指揮官が戦闘も出来ないでは、部下を
守れないではないか!部下を守れない指揮官など、無能の極みよ!
支部長さんは、そんな指揮官では無いと信じている。
「それでは、明日から鍛冶屋の黒猫屋にて、シーランド銃の取り扱い説明を
しますので、出来る限り参加して下さいね。期限は明日から3ヵ月間とし
たいと思います。支払いは領主様の館に取りに行ってください。」
「昼間は仕事をしている者達もいるのじゃがな、その者達はどうすれば良い
かの?後はな1人辺りの単価を訊いて良いか?」
「仕事が終わり次第に、黒猫屋に来てください。そうしたら取り扱い説明を
1日1時間ずつして行きます。それと1人に付き1日30ベルクでは、どう
でしょうか?傭兵の方々も1人1日30ベルクで引き受けてます。」
「1人1日30ベルクか、悪くない数字ではあるが、傭兵も雇っているのか!?
傭兵は何人雇っているのじゃ?それと人夫とかは何人いるんじゃ?そこを
詳しく教えて欲しいんじゃがな!」
「傭兵は30人を雇い入れてます。それと人夫ですが、ベールプコヴァールト村の
生き残りの者達とケット・シー族の生き残りの者達がします。その数は数百人
と訊いてますよ。どちらの村々も村長代行と族長の許可は取っておりますので、
ご心配には及びません!それとですね、傭兵団の名前は、シーランド兵団と言
う名の傭兵団です」
支部長が知りたいと思う情報を俺は、支部長に訊かれる前に、包み隠さずに言って
しまっていた。これで支部長さんも安心が出来るならば、それに越した事はなかったからだ。
「人夫は村と集落の生き残りの者達で、そして、2ヶ所も建築場所があるのじゃろ
そうしたら、傭兵の人数はどうするんじゃ?半々にして配置するのか?それとも
どちらかだけに配置させとくのか?そこを訊かせて欲しいの」
まだ決めて無い事を訊かれても、此方としても困るんだがな!だが、此処は確りと
支部長さんの不安を解消しとかないと、後でぐだぐだ言って働かないと言う事にも
なりかねないから、確りと考えてから伝えよう!
「それはですね、傭兵団には村と集落の守りではなく、荷馬車隊の守りに付いて
もらい、村と集落の守りには、人夫の方々がします!」
《えっ!?》
支部長と棟梁監督は、俺の言葉を聴いてから、2人とも固まってしまったのだ。
そんなに衝撃的な事を言った積りでは無かったのだが、2人は信じられないと
言う風な顔をしている。俺は何か不味い事を言ったのか?
「ちょっと待って下さい。私の部下に死ねと言ってるのと一緒ですよ!そんな
事は断じて出来ない!そして私は行きたくない!」
この棟梁監督さん、最後にさらっと本音を言ったよね?
「そうじゃ!そうじゃ!ちょっと待ってくれ!人夫だけで村と集落を守るとか
無謀ではないか?そんな無謀な事が出来るはずがないわ!そして儂も行きた
たくないんじゃが!」
おい.....俺は短気ではないが、我慢を超えると爆発してしまう事になるぞ?
さっきも爆発したのに、また爆発させる気なのか?
「シーランド銃を舐めないで貰いたい!誰にでも扱える様にしているから、子供で
もシーランド銃の取り扱い説明をすれば、扱える様になるのに、無謀だとか言っ
て逃げるのは、どうかと思いますけどね。それならば、今からでも2人には、
取り扱い説明をして、撃つ事が出来る様になって貰いましょう!」
俺は、切れ気味に早口で、2人に今から取り扱い説明を受けて貰うと、伝えてたの
だが、2人の反応はない、と言うか2人は、変な体勢で固まっていたのだった。
余程に、2人とも行きたく無かったのだろうか、顔には悲壮感しか残されていなかったのだ。
バァーン!
1発の銃声が、静かだった建築組合の中庭に、鳴り響いて静かな午後の終わりを
知らせていた。
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