戦国の鍛冶師

和蔵(わくら)

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第45話 思惑と利権

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俺達が話し合いをしている最中に、アンジェとダーンがターニャに
連れられて遣って来てきたのだ。2人は何でこの場に呼ばれたのか
理解できずに、困惑顔で部屋の隅に立っていた。

「好成、あたいに何の用があって呼び出したのよ?」
アンジェが呼ばれた理由を俺に訊いて来たのだ。

そこで、俺はアンジェとダーンに今までの経緯を話すと、2人は俺と
オレークさんに、ケット・シー族もシーランド銃組合に参加させて欲
しいと頼み込んだのだった。

ダーンはアンジェの軽率な行動に対して、もっと考えてから行動して
欲しいと懇願しているのだが、当の本人は気にもしていなかったのだ。

「アンジェ様、そんな大事な事を考えもしないで、即決で決めるのは
 決して良い事とは言えませんよ!もっと慎重に考えてから、伝える
 べきだと、ボクは前から申しているではないですか!」

ダーンもアンジェの行動で、大変苦労をさせられている事がわかるな!
小言をアンジェに言っても、アンジェは素直に訊くとも思えないが、
それでも、あきらめずにアンジェに言うダーンは、家臣の鑑のような
存在であるな!

「アンジェさんや!お前さんは、組合に参加したいと言っているが、組合
 では何が出来るんだい?それを訊かせて貰おうか?」

「あたい達が、掘ってきた鉄鉱石を組合に、納品する事ができるよ!」

《はい?》

一同が顔見合って、アンジェが言った発言を理解しようと必死だった。
アンジェは、ケット・シー族が掘ってきた鉄鉱石を組合に、譲ってくれ
ると言っている事に、気が付いたのは半刻もした時だったか。
まさに、棚から牡丹餅と言う言葉が、相応しい検案だったのだ。

「でもね~鉄鉱石がある場所がね.....旧ケット・シーの集落の倉庫なん
 だよね.....どうしよう?」

人を喜ばせておいて、オチがそれなのか!

「ケット・シーの集落に、鉄鉱石を取りに行けば良いのか?それならば、
 直ぐにでも鉄鉱石を取りに行こう。」

オレークさんは、ケット・シーの集落が、今現在どうなっているかを知
らないで、そう発言したのだったが、俺達は直ぐにオレークさんに現状
を伝えたのだった。

「それと、好成達には言って無かったけど、シーランド・レッドウルフの
 繁殖地にされたぽいんだ。この前狩ったのは、シーランド・グレーウル
 フって奴なんだけど、それの上位種にあたるのが、レッドウルフなんだ」

それを訊いたオレークさんは、悲壮な表情をしていた。グレーウルフでも
オレークさんは倒すのに苦労していたからだ。俺達ならば、遣れない事も
ないのだ。何故ならば俺達には、アレがあるからだ。

「集落が襲われた時に、お腹が大きなレッドウルフが、何匹も集団に居た
 のを目撃されているから、今はもう繁殖地になっている可能性が高いの」

もしもレッドウルフを退けられる事が、可能ならば組合に、今まで掘った
鉄鉱石を全てを譲る用意があると、アンジェは言ってきたのだった。
だが、オレークさんには、その言葉も霞むようで、夢物語としか捉えて
おらず、アンジェの提案は嬉しかったのだが、現実問題は鉄鉱石の奪還
は不可能と判断していた。

「一時的だが、俺達ならば鉄鉱石を取りに行ける」
俺はそう皆に提案していた。

「それは、どう言う事か説明してもらえるか?」
オレークさんは俺に、事の説明を求めていた。

「俺達が、この世界に持ち込んだ物で、竹筒焙烙と言う物が少しだけある
 それを使い、レッドウルフから一時的だが、集落を奪い返すことは出来
 ると思う、奪え返したら直ぐに、倉庫からあるだけの鉄鉱石を運び出せ
 ば、アンジェの提案は現実の物となるだろう」

「レッドウルフは、繁殖地を追われても、直ぐに奪え返しに来ますよ。そう
 なると、戦闘員はそれなりに要りますし、運び出す荷馬車や護衛も必要に
 なりますよ。どの様にするつもりですか?」

荷馬車に護衛は、ユニオンに依頼を頼む事を提案したのだった。これで荷馬車
と護衛は問題ない。そうなると残りは、集落に残って戦闘をする者達だったの
だが、戦闘員には俺・芳乃・静・秋が名乗り出ていた。

その他には、ダーンとアンジェ・オレークさん家族も一緒に戦ってくれると
言ってくれたのだが、それでも人数が少なく、これでは成功の確率が見込め
なかったのだが、何処から現れたのか知らないが、インガ婆様が窓の外から
俺達に向けてアピールをしている事に気が付いたのだった。

「なんじゃ~水臭いの!私も参加するに決まってるじゃろ!」

バァーン!

勢い良く黒猫屋のドアが開いたと思うと、匠の店主が中に入って来たのだった

「シーランド銃を思いっきり撃ちたいんじゃが、一緒に狩りに行かんか?」

「ちょっと!このくそ爺は何処から現れた!」

「んっ!誰かと思えば、くそ婆じゃねか!」

あれ.....この2人って知り合いだったんだ!
そして更にドアが勢い良く開かれたのだった。

バァーン!!

そこに居たのは、見知った2人の青年達だった。

《その話に私達も混ぜて貰いましょうか!》
ヤーコブとアントンだったのだ。

おい!利権が絡むと、凄い勢いで人が群がってくるな!
俺とオレークさんは、ユニオンでシーランド銃組合を
直ぐに作り、これ以上の利権が減るのを防ごうと決めた
のだった。

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