戦国の鍛冶師

和蔵(わくら)

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第43話 店主と道楽

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道具雑貨店・匠の店主に、またも無理難題を頼む事になってしまったのだが、
匠の店主は、俺の無理な注文を嫌な顔せずに聴き、直ぐに店の奥に行く消え
て行ったと思うと、手に箱を持って現れたのだった。

「お客さんの注文したのは、この位の大きさの望遠鏡かね?」

匠の店主は、俺の注文をちゃんと訊いてくれていて、注文通りの物を持って来
てくれていたのだ。その望遠鏡は、折り畳みは出来ない物だったが、小さい物
だったので、来式の上に取り付ける事が出来そうだったのだ。

これを幾らで売ってくれるかと訊くと、店主からは1つ100ベルクと言われたの
で、皆と相談すると言って、考えさせて貰う事にした。

鋳造に掛かる費用が、1丁に付き100ベルク・木材は5本で50ベルク・魔法陣
を描く薬が、1瓶で10.000ベルクだが、1瓶で100回は魔法陣が描けると訊いてい
るので、1丁に掛かる費用は100ベルクだ・魔力球は5型ならば、200ベルクするが
4型ならば、1つ100ベルクで済む!5型が主流になってきた今では、4型の値段は
半額になっている。そうなると1丁を作るのに、費用が410ベルク掛かる事になる
こうなった場合に、売値の値段が1丁に付き、800ベルク辺りで売り出すのが妥当
だと思っている。大砲を買うより少しばかりだが、安く買える値段だった。

大砲は魔力球も込みだと、1000ベルク以上はするのだ。

来式は5型魔力球は使わずに、4型魔力球を使用する事で、費用を安くし、尚且つ
命中精度を上げる事になるだろう。4型は次弾を打ち出すのに、30秒もの時間を
必要としているが、その時間は欠点になるが、5型より威力が少しだけ高かった
事に目を付けたのだった。威力が高いと射程が延びるから、それで飛距離を伸ば
しつつ、命中精度を保つと言う理屈である!

それと、銃身を大砲みたいにして、根元は太くなり、先は細くする事で、更に距離
を伸ばせないかと思案している最中だった。この事は秋の一言がきっかけになった
のだった。

「大砲って銃とは違って、先の方は細めに出来てますよね?あれって何でですか  
   ね?理由とかあるのかな?」

この一言が俺に、閃きを与えてくれたのだ。

道具雑貨店に、何故か大砲が売っているのは、この際は不問にしておき、匠の店主
に話を訊く事にしたのだった。

「大砲の先が細くなっている理由が知りたいじゃと?それはな、爆発して生まれた
 魔法を細くした筒を通る事で、遠くに飛ばす用に作られておるからじゃ!」

「つまりは、逃げ道を細くする事で、威力が増し、その威力が飛距離になって居る  
   と匠の店主は言っているのだろうか?」

「おっ!若いのに理解が早いの!そうじゃぞ、その理屈であっておるぞ」

「ところで、望遠鏡は買うのか、買わないのか、どっちだ?」

店主も望遠鏡を持ったまま、カウンターで暇していたのだろう?
俺にさっさと、買うか買わないか決めてくれと、言ってきてきた。
俺は店主に、望遠鏡の先に十字になった望遠鏡はないかと訊くと
店主は、またも奥に消えて行ったのだった。

「注文が多い客は、店側に嫌われるんだぞ!ほれ此れでいいのか?」

憎まれ口を叩きながらでも、しっかりと仕事をしてくれる店主に感謝の言葉を言い
俺は、望遠鏡を覗きこんでいた。

「親父さん、望遠鏡の中を覗き込むと数字が見えるんだけど、この数字は何か    
   な?」

「これはな、距離を測る為の望遠鏡じゃよ!1つ150ベルクでいいぞ!」

「親父さん、冗談でしょ!100ベルクにしてくれたら、100個買うよ!」

「くっ!10.000ベルクだと!駄目じゃ駄目じゃ!」

「定期的に、この望遠鏡を買うと言ったら、1つ100ベルクで売ってくれるかな?」

「定期的にって、何に使うんじゃ?」

店主は俺が定期的に、この望遠鏡を買うと言うと、不思議に思ったのだろう。
使い道を訊いてきたのだった。そこで俺は、話すより実物を見せた方が早い
と思い、銃をカウンターの上に置いたのだった。

「この筒はなんじゃ?玩具ではなかろうの?」

店主は、始めてみる銃を不思議そうに見て、手に取ると、色々と触ったりしていた。
店番を代わりの者に頼めるかと訊くと、店主の変わりの者がカウンターに入り
俺は、店主と共に、店の裏側にある空き地に遣ってきていた。

望遠鏡をベルトで固定すると、直ぐに望遠鏡の数字の意味を訊き、それを女子衆
に話して訊かせたのだった。女子衆は、数字の意味を理解したようで、直ぐにで
も銃を撃てると、俺に言ってきたので、撃たせる事にしたのだった。

「バァーン!!!」

店主は大きな音に驚き、飛び上がったのだが、直ぐに銃に興味を持ちはじめて、
俺に銃を撃たせて欲しいと、懇願してきたのだった。

「これを的に合わせて、引き金を引くのじゃな?この筒は少し重くないか?」

店主には銃が少し重いようだった。だが、来式が一番軽くて、命中精度があると
店主に告げると、店主は納得した様で、直ぐに銃を的に向かって撃ち始めたのだ。

「バァーン!!!」

空き地は狭かったのだが、初めて撃った店主でも、的に当てる事が出来たのだ。
店主は興奮しながら、銃を売ってくれと俺に言ってきたのだが、まだ完成して
いないので売れないと言うと、店主は残念そうな顔をしていた。

店主には、もっと飛距離を出せる作りにしたら、販売すると伝えると、その時は
一番に知らせて欲しいと頼まれてしまったのだ。この店主の店は、大砲も置いて
る店だから、銃が置いてても不思議ではないだろう!

「売り物なんか後回しじゃ!まずは儂が遊ぶ用に買うんじゃ!」

店主さんや、ちゃんと来式を販売して下さいね!

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