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第39話 歓喜と狂気
しおりを挟む砂型を作って鉄を流し込み、魔法陣の筒を作り始めていたのだ。
2つのパイプを作り、魔法陣が描かれる部分は細く作り、そして
最後尾になる部分は、少しだけ太いパイプになるように調整され
ている。この2つを1つに組み立てるのだ。
その2つのパイプに、同じ位置に穴を開けて、パイプが取れない
様にもする。そしてバネを引っ掛ける突起も取り付けられている
この突起が引き金に繋がっており、引き金を引くと、魔法陣が描
かれた先端のパイプだけが、魔力球に当たり、そうして弾が撃ち
出される仕組みなのだ。
「好成よ!組み立てて試射をするぞ!」
オレークさんに促されて、俺は細工部分の調整を終らせたのだ。
確りと引き金が作動するか、そして、魔法陣が描かれてる筒が
魔力球に当たるかの調整を済ませると、魔法陣の筒を取り外し
筒の先端に魔法陣を描いてもらってたのだ。
因みに、俺が考案した魔力球を入れる場所は、横から出し入れが
出来る様になっており、オレークさんが考案した魔力球を入れる
場所とは違うのだが、どちらも確りと引き金を引くと、パイプの
先端は、魔法球に確りと当たっていたのだ。
オレークさんが考案した場所は、上から入れる様になっており、
そちらでも問題はないのだが、使う者としては、横からの方が
使い勝手が良い様に思うのだが、それは、試射をしてみて爆発
しなければ、実践での試射になった時に、使い勝手が解るだろう。
2種類の魔力鉄砲銃を作り、どちらが由り使い勝手が良いかを
実戦での試射で判断して行くと、オレークさんは言っている。
俺はまた、あの島に行くのかと訊くと、町から半日程行った場所
で、狩りをしてみるとの事だった。
魔法陣が描かれた筒が、2種類の魔力鉄砲に取り付けられたので、
早速その2種類を試射台に、確りと固定してから紐を安全な場所
まで伸ばすと、俺とオレークさんは秒読みを訊きながら静に待って
いるのだ。
3――2――1――撃てぇ!
「バァン! バァン!」
俺が考案した横から魔力球を入れる銃も、オレークさんが考案した
上から魔力球をいれる銃も、どちらも確りと銃から弾が飛び出して
試射台の先にある、土嚢袋が積まれている場所に命中して、土嚢袋
が弾け飛んでいたのだ。
威力が前の銃より上がっている!
俺とオレークさんの銃は、どちらも同じ位の威力にしか見えず、魔力球
の位置が変わっただけでは、大差ない事が解った。だが、確実に前の銃
より、新型の銃の方が威力は上がっているのだ。
「前の銃は、構造的に欠陥だった代物なんだろう!だがな好成!初めて
魔力鉄砲銃何って物を作りだしたのは、お前さんだ!先駆者は失敗を
積み重ねて成功を手にするんだ。だから、今回の成功は全て、お前が
積み重ねてきた物が成果をだした結果なんだ。喜べよ好成!」
オレークさんが俺を褒めてくれていた。
そして俺は、静に誰にも解らないように、涙を流している。決して感動
した訳ではない!目に睫毛《まつげ》が入ってしまったのだ!
男は人前で涙を見せるものではない。
芳乃や静に秋も、俺に抱きつき一緒になって涙を流している。
女子の涙を拭くのが、男の甲斐性と言う物だ!俺は芳乃や静に秋の
涙を拭いてあげると、一緒に成功を喜んだのだった。
そんな感動してる場面に、似つかわしくない人物が乱入してきたのだ。
その人物とは、ボサボサの白髪で、両手で小さな荷車に積んだ大砲を
必死に押している人物だった。誰か言わないでも解ると思うが.....
「私《わし》の店から盗んだ魔法薬をお返し!」
オレークさんの母親、インガ婆様だったのだ。
「ダニエルの馬鹿は何処に逃げた?出てこい!」
インガ婆様の乱入で、感動の場面は失われ、あるのは狂気に満ちた悲劇
の現場だけだったのだ。ダニエルが強引にインガ婆様の店から魔法薬を
持ち出さなければ、こんな事にはなってなかったのだが。今言っても、
仕方が無い!
「母さん!何してるんだ?ダニエルが如何したと言うんだ!」
オレークさんに俺は後ろから、ダニエルがインガ婆様に、何をしたのかを
言うと、オレークさんが「またダニエルが、母さんに強引な事をしたのか?」
と言い出していた。何回も同じ事をしているのか?
「母さん、商売の話をしよう!耳を貸してくれ――」
そう言うとオレークさんは、インガ婆様の耳元で商売の話を始めたのだった。
話が進むに連れて、インガ婆様の表情が変わって行ったのだ。最初は呆けて
いたのだが、途中から激昂したり、喜んだり、そして泣いたりしたのだ。
最後は何で泣いたのだろうか?
「私は何って、親孝行の子を持ったんだろうね!私は幸せものさね!」
オレークさんに話を訊くと、魔力鉄砲銃の製造に、インガ婆様も参加させる
事で本人に納得させて、更には魔力鉄砲銃の売り上げも、インガ婆様に分配
すると言ったのだとか。
あぁ~~遣っちゃいましたねオレークさん!
それは悪手だ。
俺はちゃんとオレークさんの取り分から、インガ婆様に分配して欲しいと伝
えたのだった。此方も芳乃や静に秋の取り分は、俺の取り分に含まれている
のだから、それは当然の話なのだ。
オレークさんも、解ってると言う顔をしていた。
そして、何故か悲しそうなオレークさんの背中を俺は眺めていた。
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