36 / 122
第34話 盗人と栗鼠
しおりを挟む昼飯も食べ終わったので、アンジェの依頼を終らせる為に俺は、
薬草採取を始めていたのだ。この薬草は万能薬として、町では
欠かせない薬草で、定期的に島に採取依頼が出されている物だ。
魔物・魔獣の討伐依頼も同じく定期的にだされている。
小島の中央に、池があり薬草は、そこでしか採取できない物だった。
此処の池までに来る途中で、魔獣を仕留めたのだが、持ち運べる訳
でもないので、近くにある木に吊るし、血抜きをしている。
薬草採取が終ったら、一旦浜辺の野営地に帰り、船から組み立て式
の荷車を下ろして、組み立ててから、狩った獲物を運ば手はずだ。
この世界には、楽に運べる物は、荷車しかないのだ。日ノ本でも
そうだったが、別に苦にはならない。
薬草10束で1組、それを10組取ると俺達は、野営地へと帰路に付いた
のだった。帰りにワイド・ボア(大きな猪)日ノ本の猪よりかは、少
しだけ大きな猪だ。それと。デュー・ホーン(大きな鹿)日ノ本の鹿
より格段に大きく、日ノ本では見る事はまず無いだろう。木に吊るし
ている獲物を確認しながら、浜辺の野営地を目指したのだ。
デュー・ホーンが吊るされてる木に、デュー・ホーンが居なかったの
を除けば、全て問題なかった。木に吊るしたはずの、デュー・ホーン
が無くなっているのだ!?誰かが横取りしたのかとダーンに訊いたの
だが、ダーンも信じられないと言う顔をしている。
俺とダーンは、芳乃・静・秋に、オレークさんとアンジェを任せてか
ら先に野営地に戻って、残りの獲物を回収する用に伝えた後に、森の
中を探索する事にしたのだ。幸いにデュー・ホーンを引きずった跡が
残っているので、その跡を辿って行くことにした。
デュー・ホーンを引きずった跡は、野営地とは違う方向の浜辺に向かっ
て付いており、どっちにしろ浜辺に行くしかなかった。
浜と森の間に岩があり、その岩には穴が開いていたのだ。多分ここが
盗人の住処なのだろう?俺とダーンは中の様子を伺いながら、穴に近づ
いて行ったのだ。
すると!
岩穴の直ぐ近くまで、近づいた時だった。穴の中から凄い勢いで、何かが
外に飛び出して来たのだ。
中から出てきたのは、大きな栗鼠《リス》で、大きさ的にはツキノワグマ
程だろうか?その位はある栗鼠だったのだ。魔獣だと俺は判断して、直ぐ
様に栗鼠に、斬り掛かったのだが、ダーンから「好成さん駄目です!」と
制止されてしまった!?
この栗鼠の名前は、シーランドリスと言うらくし、シーランド本島と周辺の
小島などにしか生息していない、非常に貴重で知能が高い種族なのだそうだ。
その為に、シーランド本島や周辺海域の小島に住む、シーランドリスを狩る
事を禁じているらしく、もしも襲われてないのに狩ると、罰金と牢屋に入れ
るか、下手すると死罪になる場合もあるとか!
見た目はリスなのだが、人語を話せるみたいで、シーランドリスと話をする
事にしたのだ。
シーランドリスの名前は、ニーロと言い家族で住んでいると言っている。この
為に、家族で食べる為の肉が必要で、森に入ったら肉が吊るされていたのを見
て、神様が己等にくれた物だと信じて、巣まで運んだそうだとか......
んっ......凄い解釈だな!悪気は無いのは解ったのだが、これは如何すれば良い
ものかと決めかねていると、ダーンが取り合えず、デュー・ホーンを返して貰
ってから、野営地までデュー・ホーンを運ばせ、それから皆で決める事にして
はどうかと提案されたので、俺はダーンの提案に賛成して、野営地まで戻った。
野営地までは、ものの半刻で付いてしまった。
シーランドリスの背に乗って移動したからだ。ニーロの家族総出で、野営地まで
デュー・ホーンと俺達を運んで貰った。野営地では、組み立て式の荷車を組み立
て終えた直後で、俺達が戻るのが少し遅かったら、入れ違いになっていただろう。
俺とダーンは、デュー・ホーンが消えた顛末をアンジェやオレークさん達に話し
て伝えると、皆も困った顔をしている。
シーランドリスは、ニーロを含めても5匹も居たのだ。これをどうするか....いい案
が出ずに時間だけが経ってしまっている。
オレークさんが発言しだしたので訊いて見る事にした。
「取り合えずは、今まで狩った獲物を運ぶのを手伝って貰って、その報酬とし
てワイド・ボアかデュー・ホーンの肉をニーロの家族に別けると言うのはど
うじゃろうの?」
他に良い案もないので、オレークさんが提案してくれた案に、皆が賛成していた。
ニーロも自分がした事を反省してる様で、その提案を喜んで引き受けている。
「己等が皆さんに迷惑を掛けてしまって、申し訳ないだ。この償いは働いて返すだで、
何なりと己等に言ってくだせい」
シーランドリスと言うのは、戦闘は出来るのだが、そんなに強くない種族で、肉を
この島で獲得するには、命がけなのだそうだ。でも肉を食べなくても、シーランド
リスは雑食で、何でも食べるとかダーンが言っている。もしかして、人間も食べる
のかと訊くと、ダーンは変な顔して「内緒♡」といった。
おめ~が可愛く言っても、全然可愛くないから!
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
【R15】お金で買われてほどかれて~社長と事務員のじれ甘婚約~【完結】
双真満月
恋愛
都雪生(みやこ ゆきな)の父が抱えた借金を肩代わり――
そんな救世主・広宮美土里(ひろみや みどり)が出した条件は、雪生との婚約だった。
お香の老舗の一人息子、美土里はどうやら両親にせっつかれ、偽りの婚約者として雪生に目をつけたらしい。
弟の氷雨(ひさめ)を守るため、条件を受け入れ、美土里が出すマッサージ店『プロタゴニスタ』で働くことになった雪生。
働いて約一年。
雪生には、人には言えぬ淫靡な夢を見ることがあった。それは、美土里と交わる夢。
意識をすることはあれど仕事をこなし、スタッフたちと接する内に、マッサージに興味も出てきたある日――
施術を教えてもらうという名目で、美土里と一夜を共にしてしまう。
好きなのか嫌いなのか、はっきりわからないまま、偽りの立場に苦しむ雪生だったが……。
※エブリスタにも掲載中
2022/01/29 完結しました!
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
その者は悪霊武者なり!
和蔵(わくら)
ファンタジー
その者は悪霊!戦国の世を生き、戦国の世で死んだ!
そんな人物が、幕末まで悪霊のまま過ごしていたのだが、
悪さし過ぎて叙霊されちゃった...叙霊されても天界と現世の
狭間で足掻いている人物の元に、業を煮やした者が現れた!
その後の展開は、読んで下さい。
この物語はフィクションです!史実とは関係ありません。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
麗しのラシェール
真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」
わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。
ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる?
これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。
…………………………………………………………………………………………
短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる