戦国の鍛冶師

和蔵(わくら)

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第34話 盗人と栗鼠

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昼飯も食べ終わったので、アンジェの依頼を終らせる為に俺は、
薬草採取を始めていたのだ。この薬草は万能薬として、町では
欠かせない薬草で、定期的に島に採取依頼が出されている物だ。

魔物・魔獣の討伐依頼も同じく定期的にだされている。

小島の中央に、池があり薬草は、そこでしか採取できない物だった。
此処の池までに来る途中で、魔獣を仕留めたのだが、持ち運べる訳
でもないので、近くにある木に吊るし、血抜きをしている。

薬草採取が終ったら、一旦浜辺の野営地に帰り、船から組み立て式
の荷車を下ろして、組み立ててから、狩った獲物を運ば手はずだ。
この世界には、楽に運べる物は、荷車しかないのだ。日ノ本でも
そうだったが、別に苦にはならない。

薬草10束で1組、それを10組取ると俺達は、野営地へと帰路に付いた
のだった。帰りにワイド・ボア(大きな猪)日ノ本の猪よりかは、少
しだけ大きな猪だ。それと。デュー・ホーン(大きな鹿)日ノ本の鹿
より格段に大きく、日ノ本では見る事はまず無いだろう。木に吊るし
ている獲物を確認しながら、浜辺の野営地を目指したのだ。

デュー・ホーンが吊るされてる木に、デュー・ホーンが居なかったの
を除けば、全て問題なかった。木に吊るしたはずの、デュー・ホーン
が無くなっているのだ!?誰かが横取りしたのかとダーンに訊いたの
だが、ダーンも信じられないと言う顔をしている。

俺とダーンは、芳乃・静・秋に、オレークさんとアンジェを任せてか
ら先に野営地に戻って、残りの獲物を回収する用に伝えた後に、森の
中を探索する事にしたのだ。幸いにデュー・ホーンを引きずった跡が
残っているので、その跡を辿って行くことにした。

デュー・ホーンを引きずった跡は、野営地とは違う方向の浜辺に向かっ
て付いており、どっちにしろ浜辺に行くしかなかった。

浜と森の間に岩があり、その岩には穴が開いていたのだ。多分ここが
盗人の住処なのだろう?俺とダーンは中の様子を伺いながら、穴に近づ
いて行ったのだ。

すると!

岩穴の直ぐ近くまで、近づいた時だった。穴の中から凄い勢いで、何かが
外に飛び出して来たのだ。

中から出てきたのは、大きな栗鼠《リス》で、大きさ的にはツキノワグマ
程だろうか?その位はある栗鼠だったのだ。魔獣だと俺は判断して、直ぐ
様に栗鼠に、斬り掛かったのだが、ダーンから「好成さん駄目です!」と
制止されてしまった!?

この栗鼠の名前は、シーランドリスと言うらくし、シーランド本島と周辺の
小島などにしか生息していない、非常に貴重で知能が高い種族なのだそうだ。
その為に、シーランド本島や周辺海域の小島に住む、シーランドリスを狩る
事を禁じているらしく、もしも襲われてないのに狩ると、罰金と牢屋に入れ
るか、下手すると死罪になる場合もあるとか!

見た目はリスなのだが、人語を話せるみたいで、シーランドリスと話をする
事にしたのだ。

シーランドリスの名前は、ニーロと言い家族で住んでいると言っている。この
為に、家族で食べる為の肉が必要で、森に入ったら肉が吊るされていたのを見
て、神様が己等にくれた物だと信じて、巣まで運んだそうだとか......

んっ......凄い解釈だな!悪気は無いのは解ったのだが、これは如何すれば良い
ものかと決めかねていると、ダーンが取り合えず、デュー・ホーンを返して貰
ってから、野営地までデュー・ホーンを運ばせ、それから皆で決める事にして
はどうかと提案されたので、俺はダーンの提案に賛成して、野営地まで戻った。

野営地までは、ものの半刻で付いてしまった。

シーランドリスの背に乗って移動したからだ。ニーロの家族総出で、野営地まで
デュー・ホーンと俺達を運んで貰った。野営地では、組み立て式の荷車を組み立
て終えた直後で、俺達が戻るのが少し遅かったら、入れ違いになっていただろう。
俺とダーンは、デュー・ホーンが消えた顛末をアンジェやオレークさん達に話し
て伝えると、皆も困った顔をしている。

シーランドリスは、ニーロを含めても5匹も居たのだ。これをどうするか....いい案
が出ずに時間だけが経ってしまっている。

オレークさんが発言しだしたので訊いて見る事にした。

「取り合えずは、今まで狩った獲物を運ぶのを手伝って貰って、その報酬とし
 てワイド・ボアかデュー・ホーンの肉をニーロの家族に別けると言うのはど
 うじゃろうの?」

他に良い案もないので、オレークさんが提案してくれた案に、皆が賛成していた。
ニーロも自分がした事を反省してる様で、その提案を喜んで引き受けている。

「己等が皆さんに迷惑を掛けてしまって、申し訳ないだ。この償いは働いて返すだで、
   何なりと己等に言ってくだせい」

シーランドリスと言うのは、戦闘は出来るのだが、そんなに強くない種族で、肉を
この島で獲得するには、命がけなのだそうだ。でも肉を食べなくても、シーランド
リスは雑食で、何でも食べるとかダーンが言っている。もしかして、人間も食べる
のかと訊くと、ダーンは変な顔して「内緒♡」といった。

おめ~が可愛く言っても、全然可愛くないから!


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