戦国の鍛冶師

和蔵(わくら)

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第29話 グローブ短筒と鋳造

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ダーンから借りたグローブ剣をバラバラに解体して、構造解析から
試作3号銃の開発に取り掛かりだしたのだ。グローブ剣の作りは、
腕に鉄の筒に手の甲の部分に、短剣が取り付けられている物である
これに短筒を取り付けるには、どうすれば良いかをまず考えだした。

グローブ筒には、鉄鎧の籠手みたいに、指を入れる部分はなくて、
言ってみれば、グローブの先端は鍋の底みたいに、丸くなっている。
中にはグローブの先端に、ランスと呼ばれる槍を取り付けた物まで
あるのだ。

ダーンのグローブは短剣型なので、短槍型とは違っている。

これを短筒に交換しないとわるい、そこで俺は短槍型の作りに注目して
みていた。このランスと呼ばれる槍を短筒に交換できれば、直ぐにでも
完成できるのだが、どう作ればいいのやら.....頭で考えても好い案は浮か
んで来てはいなかった。

それでも、オレークさんには、短槍と同じ長さの銃身を鋳造して貰って
いる。それをグローブの先端に取り付けるのは好いのだが、その後の
作りが問題であった。魔力球の交換も出来て、魔力の補充も出来ければ
ならないからだ。

短筒を取り付けて、魔力球の位置は、魔力大砲の作りを参考に、大砲の
後方に設置する様にして、紐で魔力球を引く......引く事ができるのか?
悩んでる部分は、此処なのである!

ふっと隣を見ると、オレークさんが、魔力鉄砲に使う銃身を鋳造してい
いるのが見えた。鋳型に溶かした鉄を流し込み、鉄を流し込んだら冷え
るまで放置しとくのだが、俺には鋳造する技術はなかったので、この際
だから少し勉強する事にしたのだ。気分転換にもなる!

「好成、もっと鋳型を叩いて固めないと、鋳型を裏返した時に壊れるぞ」

オレークさんから、鋳造の作り方を習いって、気分転換をしだしたのだが
何故か、こちらが優先になってしまっていた。オレークさんの息子のダニ
エルと一緒になって、鋳造の鋳型作りを真剣にしている。

模型を型枠に配置して、隙間を砂で埋めて行き、この時に、湯口も同時に
形成する。(材料を流し込む穴)湯口が作り終えたら、中子と言われる物
を入れて行き、型枠に中子を配置する。それが終ると、型合わせをしるの
だが、これが非常に難しいのだ。下の型枠の上に、上部分の型枠を重ねる
だけなのだが、型枠の砂を良く固めてないと、重ねた時に型枠が壊れてし
しまう事が非常に多い、慣れた職人でないと型合わせは、失敗してしまう
だろう。型合わせが出来たら、今度は注湯(溶かした鉄を型枠に入れる)
である。これまで終れば後は冷えるのを待ち、砂ばらし作業をする。

砂ばらし作業が終れば、砂落とし作業に鋳仕上げ作業(鋳物特有の湯口の
バリ取り)バリを取り終えて、やっと加工に移れるのだ。この流れを生砂
型鋳造法と呼ぶ。

鋳造の作り方も、大分解って来た時だった。

湯口を入れる部分をグローブ短筒に、生かして使えないかと思ったのだ。
手の甲の部分に、開けられる入り口を取り付け、そこから魔力球や魔力切
れになった時に、魔力を注入できる様にすれば、グローブ短筒も作れるの
ではないか?

オレークさんに、鋳造で短筒の上に、穴を開ける事は出来るかと訊いてみ
た。そうするとオレークさんは、簡単に作れると答えてくれたのだ。これ
でやっと試作品が作れそうだ。オレークさんとダニエルに、俺が考えた事
を話すと、2人からは解ったと返事を貰ったのだった。

後はダーンが、グローブの中にある紐を引けるかだが、これは無理だった。
ダーンやアンジェには、紐を引ける様な手をしていなかったのだ。これに
は参った!魔力球の交換は出来るが、弾を発射する事ができないのだ。

そこで考えたのが、グローブの下に取っ手を取り付けて、それを引くと
弾が発射されると言う仕組みだった。これも鋳造で作れるかオレークさん
に訊くと、大丈夫との事だった。ダーンに試しに、取っ手が付いた物を
引いて貰うと、器用に取っ手を引いている。此れならば大丈夫だと確信
した。

そうして、それから2日後に、試作3号銃が完成したのだ。

安全を考えて、試射台の上にグローブ短筒を固定している。
試作1号銃みたいに、爆発されては困るからだ。試射もして
ない銃をダーンに撃たせる訳にも行かないのもあったからだ。

グローブの下に付いている取っ手に、紐を2本取り付けると、いよいよ
試射の開始だ。胸の心の蔵が早くなっているのが、今の俺でも良く解った
それだけ、俺は緊張をしていたのだ。そうして、いよいよ試射を開始する
為に紐をあらん限りの力で、自分の方向に引っ張っていた。

すると......

「バンッ!!!」

訊きなれた音と少し焦げた匂いが、辺りに充満していた。
魔力球の滑りを良くする為に、上部閉鎖機に塗ってあった
油が焦げたのだろう?今の俺達には、その匂いが堪らなく
好い匂いに感じられている。

「好成さん、ボクが装着して撃っても良いですか?」

ダーンは嬉しそうな顔をして、俺にそう訊いてきていた。


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