戦国の鍛冶師

和蔵(わくら)

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第25話 デザート専門店と鍛冶屋

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紡績道具と織物機のお店シルクで、買い物を終えた俺達はシルクの
店主に造船所・ガレアスまで、買った荷物を運んで貰い俺達は、と
言うと、そのまま次の目的のお店に行こうとしたのだが、我が儘な
女王様が暴れだして、寄り道をしなければならなくなったのだった。

この我が儘女王様ときたら、自分達の仕事道具より甘味を優先する
のだから、俺達もほとほと呆れている。ダーン君も涙目でアンジェ
を諭しているのだが、我が儘女王のアンジェ様は、誰の言う事も
訊かずに、甘味屋を目指して走りだしていたのだ。

もうアンジェを止める者は誰もいない!デザートと叫びながら、一目散
に甘味屋に駆け込んで入っていったので、俺達もアンジェの後を追って
甘味屋の中に入ったのだ。

デザート専門店・ホイップと言うお店では、シュークリームと紅茶とケーキ
と言う物を食べた。今まで食べた甘味より、ホイップで食べた甘味の方が、
皆も俺も好みだ.....いやだが.....つぶあんやこしあんも捨てがたい!

甲乙付けがたい!羊羹も旨いからな!
これは此れで、ありだな!

お腹も一杯になった事だし、そろそろ次のお店に行こうかな!
「みんな~次のお店に移動を開始しようか!」

俺が移動を促すと、まだケーキを食べているアンジェが、ケーキを食べながら
俺に文句を言ってきている。

「あたいのチーズケーキと苺タルトが、まだ来てないのに次に行ける訳が無い!」

アンジェって、どんだけ甘味を食べたんだろう?皿が6枚?いや7枚も重なっている
お昼は宿屋で食べたはずなのに、甘味屋でこんなに食べるアンジェのお腹は、
どうなっているのか?

アンジェが注文した物を食べ終わるまで、俺達は紅茶を飲みながら待っている。




......................................................



{鍛冶屋・黒猫屋にて}

アンジェが甘味屋から、中々出なくて困っていたが、ダーンがアンジェを
説得する事に成功したので、やっと次のお店にやって来れたのだった。
女子の甘味への執念は、凄まじいものだ!

デザート専門店・ホイップを出てから、先に立ち寄ったのは、道具雑貨店で
は無く、鍛冶屋の黒猫屋だったのだ。此処にまず先に立ち寄ったのは、訳が
あるからだ、此方の世界の鍛冶道具を知りたかったのと、出来れば黒猫屋から
紹介された道具雑貨店に行きたかったからだ。

包丁を広場の市で買った。その見事な作りに俺は一目ぼれする程だった!
これほどの業物も、そうそう御目に掛かれるものではない。

それを作った鍛冶屋の黒猫屋に、やっと来れたのだから、どんな作り方を
してるのか、どんな道具を使ってるのか、そんな些細な事なのだが、俺は
全てが知りたくて堪らなかったのだ。そして作った本人とも話してみたい!

「すいません、此方にこの包丁を作った方が居ると訊いて来たのですが!」

「は~い、ちょっと待って下さいね」

お店の奥から、うら若い女子の声が響いてきた。奥を覗くと丁度、奥から
1人の女子が、お店に出てきたのだ。

「はい、何の御用でしょうか?」

女子に、持って来た包丁は誰が作ったのかと訊くと、直ぐに答えてくれた。

「これは父親の作品ですよ!この包丁がどうかされましたか?」

この女子の父親に会わせて貰えないかと、女子に尋ねると女子は直ぐに、
お店の奥に消えて行ったのだった。しばらくすると、女子が戻って来て
鍛冶場に連れて行ってくれたのだ。

「儂に用があるんだって、どんな用なんだい?」

鍛冶場に居たのは、背は高くは無いが、体は筋肉隆々で、手には飛び散った
鉄で火傷した痕が、無数にあり、顔は髭だらけだが、目の奥には鋭さがある
そんな親父だった。

「今朝、広場の市で買い物をしてたら、この包丁を見つけて、思わず一目ぼ
 れをして、直ぐに買ったんです。そのお店の店主に、此処の鍛冶屋の事を
 訊いたので、是非とも作り手の方にお会いしたくて、遣って来た次第です」

俺が、親父にそう言うと、険しい顔をしていた親父が、凄い表情になったと
思ったら行き成り、俺の前に顔を持ってきて、こう言ったのだ。

「兄ちゃん、この包丁の良さが解るのか?」

「俺も鍛冶師の端くれです!物の良し悪しは解る積りですよ」

「兄ちゃんは鍛冶師なのか?そんなにひょろっとしてるのに?」

親父はそう言うと、俺の体を触りだしたのだ。まずは手を握られ、その次は
方を揉まれ、二の腕なども触られた。

言っておくが!俺は男色の気は一切無い!

「ほう!中々に体は出来てるな。兄ちゃんはどんな物を作るんだい?」

「俺は刀鍛冶と鉄砲鍛冶を生業としています」

「鉄砲ってなんだ?魔力大砲みたいな物か?」

黒猫屋の親父は、鉄砲を知らなかったので、1から鉄砲の説明をして行ったのだ。
そうすると、親父は火薬に興味を持ったようで、俺に必要に火薬の作り方を訊い
てきたのだが、この世界で火薬は存在しないので、作れないと言うと親父は、
残念そうな顔をしだした。

火薬の代わりに、魔力大砲の原理で、鉄砲を作れないかと親父に訊くと、親父の
目の色が変わり、俺に顔を寄せてきたのだった。顔が近いから!

「兄ちゃんは、魔力鉄砲を作りたいって事か?」

「火薬が無いのなら、変わりの物で代用するのが、一番早いと思たんです」

「なるほどな!面白そうだな儂にも、何か手伝える事があるなら言ってくれ」

こうして、この世界で魔力鉄砲の製作に向けて、静だが俺達は歩き出したの
だった。


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