戦国の鍛冶師

和蔵(わくら)

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第21話 魚市場と宿屋

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オクトパスを港まで曳航して、魚市場に水揚げを終えるとダーンが
魚市場の買取人と話し合っている。ダーンがオクトパスの買取値段
の交渉をしてるから、俺も今後の事を考えてダーンの取引を覗かせ
て貰う事にした。

「親父さん!10m級のオクトパスだよ。それは安いよ!」

「いやいや!10m級何って、まだ子供だよ!1000ベルクでも高い位だ!」

「それならば、1500ベルクにしてよ!」

「1100ベルクじゃ~駄目かな?」

「ダメダメ!1500ベルク出してくれないなら、個人で買い手を探すよ」

「くっ!1300ベルクなら駄目か?」

「1500ベルクでないと駄目だね!」

「ちくしょう!1500ベルクで買うよ!」

ダーンも中々遣る時はやるな!少し見直したぞダーン!
一言多いだけの男ではなかったのだな。

ダーンが嬉しそうに、1500ベルクを手に握り締めて俺に報告してきた。

「好成さん1500ベルクで売れましたよ!これで造船所の事は忘れてくださいね」

ダーンは、まだ造船所の親父を怒らせて、値引きが出来なかった事を気にして
居たようだ。ダーンも基本は真面目なのだと思った。そして好い奴である!

「よし!もう夕方になったし宿を探そうか!」

ガレー船に戻ってアンジェ達と合流すると、俺達は宿屋を探す事になった
ヤーコブ達も、まだ領主に事情説明が最後まで終ってないとかで、俺達と
一緒に宿屋を探す事になったのだ。

ヤーコブが説明を終ってないとなると、アンジェは事情説明も終ってないのかな?
アンジェに訊くと「私とアントンさんは事情説明は終ったわよ」と言われた。
順番で説明をして行った為に、ヤーコブが最後になったとかで、明日はヤーコブ
1人で領主の館に赴かないとわるいとか?

「そうなると。アンジェとアントンも朝市に一緒に行くか?」

俺がアンジェとアントンに、朝市に行くかと尋ねると2人からは。

≪是非とも行きます!!!≫

よし決まりだ!明日の朝市には、俺達とアンジェにアントンも一緒に行く事に
なったのだった。アントンも村の再建の為に色々と買い物をするとかで、船の
手配などもしないと行けないと言っている。色々と大変そうだが、アントンなら
全てをこなせるだろう!

ダーンが港から帰ってきた。船を係留する為に造船所に寄ってきてたのだ。
もう一隻の中古船のサムブーク船型の改装が済むまでは、造船所の船着場を
使っても良いと、造船所の親父から許可を貰っているので、有難く使わせて
もらっているのだ。

「好成さん!造船所の親父がですね、気を使ってくれて、知り合いの宿屋を
 紹介してくれましたよ。好成さんって造船所の親父に、気に入られましたね」

ダーンが造船所の親父から、親父の知り合いの宿屋を紹介されたので、その宿屋
に向かったのだが、造船所の親父だけあって知り合いが、港から直ぐの宿屋だった。ご近所付だから知り合いになったのか?

「港の宿屋・ガレオンと書いてますよ好成様!」

芳乃が目的の宿屋を探し当ててくれたので、皆で宿屋に入ってみると、そこには!

「いらっしゃい!お客様は何名様ですかの?」

造船所の親父が、宿屋に居たのだが.....
この親父は何をしてるのだろう?

「この宿屋はな、儂と娘達が切り盛りしているんじゃ!お客さん金をバンバン
 使ってくれて構わんぞ!夕飯も安くしとくからな何日も泊まって行ってくれ」

この親父.....出来る!

商売上手と言う言葉で、この親父を語っては駄目なのかも知れないな!
堺にも居たな、こんな妖怪爺は、一癖も二癖もある奴ばっかりだ。
この親父と商いの話をする時は、気を付けて話を進めないと痛い目に合いそうだ!
気をつける事にしよう。

アントンが言うには、1人辺りの宿泊料が、他の宿屋より安いと言っている。
普通ならば、1人が一泊するのに必要な金額が、50ベルクなのに此処の宿屋
では一泊で30ベルクで泊まらせてくれる。

「なんじゃ~お主等、宿代が安かったか?もっと宿代を高くしても良かったん
 じゃがな?昼間に船を2隻も買ってくれたお客さんだからの、宿代位はサービス
 しとくよ。だから心配するな安心して、もっとお金を使っても好いんだぞ?」

「それならば、夕飯も付けて貰って良いですか?」

俺が親父に夕飯を付けて欲しいと言うと、親父はにっこりと微笑んで、「夕飯はサービスしとくよ」と言っているが.....サービスってなんぞ?何かの呪文なのか?
サービスと言う呪文の言葉が、俺の頭から離れなかった。

部屋に荷物を置いてから、1階にある食堂で、各自が好きな時間に食事を取って
後は、お湯を貰い体を綺麗にしてから寝るだけだった。

今日は忙しい1日だったが、久しぶりに楽しくもあったな。
明日は、朝から買い物が待っている、早めに寝て疲れを取ろう。

おやすみ!

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