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第1話 はじまり

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この者、乱世に生き乱世で死んだ者なり。
だが...この者は未だに現世に居たのだった。

現世に未練を残してるからだ!どんな未練なのかは不明だが、
この者にとっては大事な事なのかも知れない、多分そうであろう!
そうでないと、この世に未練を残してまで存在はしないだろう。

拙者は、吉弘 統幸よしひろ むねゆき前主君大友義統 おおとも よしむね様と
共に関が原の合戦では西軍に組して戦った者なり!

石垣原の戦い、そこで主君・大友義統様に別れを告げた、残りの手勢30余騎で黒田勢に突撃。
七つ石において昔、お世話になった黒田家臣・井上之房殿に功を挙げるため、
自刃して討たれたのである。

それは別に良いのだ。それが武家の慣わしなのだから!恨んだ事も無い。

だが...何故か成仏していないのである.....何でかな?

主君の大友義統様が東軍に付かず、西軍に参戦したからか?
その理由が、大坂城下に側室と子の松野正照様が西軍によって軟禁されていたから?

いや...これも違うな...これも理解できる!
そんな時代に生きた人間の宿命だから。

なら何の未練があるのか?大友家が改易されたからか?
んっ...これも違うな!

ま~あれだ!大昔の事で覚えてないってのが正解だ!
だが今は幕末だ!拙者は人斬りをするでござる。

悪霊だもの!少し位は悪さしても誰も怒らないよね?

あれ?何でお坊さんが怒ってるの?

いや...成仏しろって...いやだ!

くぅ...苦しい...あぁ~~まだ拙者は成仏出来ないのだ!

理由?拙者に理由を聞くのでござるか?

理由は忘れたでござる...ちょ....まって!

ぐぁ.....くるしい!

見逃してくれたら、この家宝の刀を拙僧に差し上げるでござる...

名刀かって?此れは...無名だが...ちょっと説明がまだあるから!

無名なのだが、此れは国東の来一門の刀工の作である!

江戸時代中期には、刀鍛冶を辞めて僧侶になったがな...

まってまって!切れ味は最高でござるよ!

本当なのかと?では拙者が斬ってしんぜよう!

てぇ~い!.....痛い!痛いでござる!

拙者こう見えても、九州の剣豪・丸目長恵様から直々に教えられたのだが...

何でかって?それは大友家家臣じゃったからな!

威張ってないから...ぐぅ....痛いって!

この鎧も付けるから!許しすでござる...

上から目線が気に入らないって....

痛い痛い.....お経を読むの止めて!

刀が持てない?何ででしょうか?

拙者の大事な刀を蹴る何って...あれ?

空振りしてるでござるな?

では拙者が、拾っておくでござる...勿体無い!

んっ?...もう成仏しろって?嘘!?

やめるでござるよぉ~~~~~!



吉弘 統幸よしひろ むねゆきは天空の狭間に消えていった}



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



んっ.....何でござるか?眩しいでござる!

此処は何処でござるか?目の前が真っ白なんじゃが?

誰か居ないのでござるか?居たら返事をするでござる。

拙者は吉弘 統幸よしひろ むねゆき逃げも隠れもしないでござる!

.......

反応が何も無いのは困るでござるな!

それでは、拙者は帰らせて頂くサラバ!


「帰らせる訳には行かんな」


誰か!?姿を現すが良かろう!


「儂が誰かなど、キミには関係ないだろ?」


拙者に何の用なのじゃ?用件を言わぬか!


「キミは、普通に喋れないのかい?」


拙者を愚弄するか!許せん!斬る。


「はっはははは!儂を斬ると申すか?」


何が可笑しいのじゃ?


「無駄じゃよ!儂は斬れんよ。」


タイ捨流に斬れない物は...ない!



「ならば、儂を斬ってみよ!」


きえぇ~~~~い!バン!


「えっ?.....あれ?話し合おうか?」


吉弘統幸は、声のする方角に向けてタイ捨流の奥義を
解き放っていた!これには声の主も驚いたのであろう...
いや.....完全にビビッタんだろう!態度を改めている!


「あのですね...そろそろ成仏してくれないと困るんですよ。」
何が困るんじゃ?拙者はまだ成仏はできんのじゃ!

「戦国武将で成仏をしていないのは、もう吉弘さんだけなんです!
             お願いですから、成仏してください。」
知らん!

「困ったな.....何で成仏出来ないんですか?」

知らん!

「えっ.....理由を聞きたいんですけど...」

知らん!解らん!

「あの...何か遣りたい事が、あって成仏できないとか?」

謎じゃ~!

「いや...儂も困ってるんですよね...仕事が捗らなくて」

拙者のあずかり知らぬ事!(キリッ)

「ならば、こうしましょうか!現世に戻る事は出来ないけど、
      違う世界に行くと言うのは?どうでしょうかね?」

興味が無い!

「何なのこの人...悪霊にも程があるよ!あっ!そうだ」

なんじゃ?申してみよ!

「実はですね~悪い大名が居てですね、領民を苦しめているんですよ!」

何じゃと!許せんな...斬るしかあるまい!

「そうでしょ!そうでしょ!その悪い大名を吉弘さんに退治して貰いたいのです」

そんなことか?ならば、何故はよ~言わんのじゃ!

「すいません!忘れてました.....」

そう言うてくれればな、拙者も事を荒らげなくても、すんだのじゃぞ?

「ごもっともです!」

でぇじゃ!~その大名の名は?

松永 久秀まつなが ひさひでと言います」

ぶぅふぁ~~!?あの妖怪爺生きていたの?

「領民を助けて下さるのならば、今だけ!今だけのお得な特典をお付けします」

特典?なんじゃそれは?

「はい!霊体だと何かと不住ですよね?」

そうかの?ここ300年くらいは、このままじゃったからの?

「そこでですよ!健康なお体を差し上げます!」

ほぉ~身体をくれるのか?

「はい!それと着ている装備も、そのまま使える様にしときます」

ふむふむ!

「他に入る物は御座いませんか?」

そうじゃな~拙者!腹が減った!握り飯が食いたい!

「んっ...少し待ってください」

{声の人が走って何処かに行ってしまった?」


{待つ事1時間後}


ぐわぁ~ごぉ~ぐわぁ~~ごぉ~~

「吉弘様!吉弘様!起きて下さい!」

んっ!戻ってきよったか?

「この握り飯を持って行ってください。」

おぉ~~かたじじけない!

「その握り飯は、1日に3個までなら食べられますよ」

そうなのか?また便利なものじゃの?

「そうですね!魔法の力です」

ま...まほん?の力?何じゃその...まほんって言うのは?

「気にしないで下さい」

うむ...そうなんじゃな?

「では!いってらっしゃいませ!」

んっ!出陣する!...拙者の愛馬がいない...

「ちょ...馬ですか?もう仕方ないですね!」


{また1時間後}


「この駄馬でいいですよね?」

ん?駄馬じゃと?立派な駿馬しゅんめではないか!

「はい!文句は無しって事で!出発!」

解った解った!行くぞ! ヒヒィ~~~ン!



{やっと出かけたか...あぁ~苦労した...}
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