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Day to Day

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 幼少期の頃。僕はそこそこ賢かったそうだ。何か大きな事をした訳じゃないが、立ち振舞が何処か他と違ったらしく、きっと大物になると期待されていたらしい。
 僕には二歳上の兄がいた。僕に比べて活動的で、小さい頃は沢山失敗して怒られていたように思う。兄は馬鹿しながら小学校を卒業して、中学校で部活に打ち込んだ後に必死に勉強して、第一志望の進学校に合格した。その光景を見ながら、僕は特に何も思わなかった。そこそこ良かった成績をそこそこに維持し、兄がいる学校より下のランクの学校を選ぼうとしていた。テストは高得点でも、先生に嫌われていて内申点がボロボロだったからだ。それでも、周りは兄と同等かそれ以上の学校を期待していた。少なくとも、僕にはそう見えた。結果、僕は『僕の意志で』無謀な受験をし、見事に撃沈した。
 寮制の高校に入ってから、僕の成績はどんどん落ちていった。特待クラスから進学クラスへ落ち、授業についていけなくなった。長期休暇の度に会う親には叱られ、遅れを取り戻そうとしても何が分からないのかすら分からず、毎日が苦痛で苦痛で仕方がなかった。
 そんな折、僕は音楽に出会った。勉学そっちのけでギターを触り、バンドを組む仲間を募った。求める音楽を探し、理想を追う為に何度も作曲や作詞を行い、ギターの練習を行った。何度もライブハウスに行ったし、夜間徘徊もした。そこで殴り合いの喧嘩をすることもあった。本当に楽しかった。
 仲間ができたのは、二年生の夏だった。最高のメンバーだと思った。だが、男三人女一人の四人でバンドを組んで活動を始めてすぐ、僕らは大学受験の存在に気がついた。僕以外の三人も大学受験だというので、同じこの地域の大学を目指して勉強することを決めた。それから、僕は必死に遅れを取り戻そうとした。分からないところが分からないと先生に告白し、ひたすら愚直に尋ね続けた。
 結果。僕は第三志望の大学に合格した。つまり、第一と第二は落ちてしまった。本当に全てが嫌になりそうだったが、地域は他の三人と同じ城金だったので問題ない。浪人しなかっただけマシだろう。
 そう思っていた矢先、ドラムとキーボードの男女がバンドを辞めると言いだした。音楽性の違い。総括するとそういう事だったが、実際のところはその頃二人は付き合っていたらしいので、本音はそんなところだろう。ただ、建前の為に僕の音楽性を馬鹿にしたことは僕の心の中を淀ませた。
 残ったのはベースとギター。ベースの男と僕は、それ以降仲が良くなった。よく一緒に遊んだし、新しいバンドのメンバーを探そうと話し合った。
 そして数ヶ月後、彼は突然死んだ。
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