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「7」x 「7」part 2
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「俺、もっとシンジのこと、知りたい。
話したくないことは無理に話す必要ないけどな!」
ケイタはそう言うと、シンジのおでこから手を離し、
今度は頭を強く撫でた。
初めてあだ名の「7」ではなく、「シンジ」と呼ばれた当の本人は
髪をくしゃくしゃにされながら、黙ったままだ。
ケイタが手をシンジの頭から離した瞬間、保健室の扉が開く音がした。
ケイタは勢いよく立ち上がり、ベッドに背を向けた。
自分の心臓が激しく音を立てているのが聞こえる。
危うく、シンジの頭を撫でているところを見られるところだった。
パーテーションの隙間から、保健室の先生が顔を覗かせる。
「あら。気づいたのね。
なんだか、顔が赤いけど、大丈夫?」
シンジの方を見てそう言ったが、ケイタの様子は気になっていないようだ。
背後でシンジがモゾモゾと動く音が聞こえる。
「担任の先生から、バイト先には連絡入れてもらったわ。
安心しなさい。」
パーテーションから離れ、
保健室の端のデスクに向かいながら、先生が言った。
再びパーテーションの中にシンジと取り残されたケイタは黙ってそれを聞いた。
「バイト先の店長さんから伝言よ。
今日はしっかり休むこと。業務命令。」
シンジはいい人のところでバイトしてるんだな、とケイタは少し安心する。
「それから、」
デスクについた先生がこちらにも聞こえるよう大きな声で言う。
「お迎えだけど、どうする?」
シンジは何も答えない。
「お母さんに電話して来てもらう?
一応あなたに確認してから電話するように、担任の先生に言われてるの。」
シンジはまだ何も言わない。
ケイタは振り返ってシンジに答えを促そうとした。
が、その瞬間、シンジがサッと腕を伸ばして、ケイタの手首を強く掴んだ。
布団に顔の下半分が隠れていて、表情は読めないが、
目は不安そうに揺れている。
そして、ゆっくりと首を横に振った。
首を振りながら、ケイタの手首を掴んだ自分の手を見つめている。
ケイタは掴まれた方と反対の手をシンジの手に添えながら、
シンジに変わって答えた。
「俺が送っていきます!
多分、そっちの方が早いんで!」
「大丈夫?また倒れない?」
先生が心配そうな声で聞いた。
「大丈夫です!様子見ながら行くんで!」
シンジはまだ不安そうな表情をしている。
ケイタはシンジの小さな手を自分の大きな手でしっかりと包み込む。
手首を掴むシンジの力が少しずつ抜けていくのを感じた。
話したくないことは無理に話す必要ないけどな!」
ケイタはそう言うと、シンジのおでこから手を離し、
今度は頭を強く撫でた。
初めてあだ名の「7」ではなく、「シンジ」と呼ばれた当の本人は
髪をくしゃくしゃにされながら、黙ったままだ。
ケイタが手をシンジの頭から離した瞬間、保健室の扉が開く音がした。
ケイタは勢いよく立ち上がり、ベッドに背を向けた。
自分の心臓が激しく音を立てているのが聞こえる。
危うく、シンジの頭を撫でているところを見られるところだった。
パーテーションの隙間から、保健室の先生が顔を覗かせる。
「あら。気づいたのね。
なんだか、顔が赤いけど、大丈夫?」
シンジの方を見てそう言ったが、ケイタの様子は気になっていないようだ。
背後でシンジがモゾモゾと動く音が聞こえる。
「担任の先生から、バイト先には連絡入れてもらったわ。
安心しなさい。」
パーテーションから離れ、
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再びパーテーションの中にシンジと取り残されたケイタは黙ってそれを聞いた。
「バイト先の店長さんから伝言よ。
今日はしっかり休むこと。業務命令。」
シンジはいい人のところでバイトしてるんだな、とケイタは少し安心する。
「それから、」
デスクについた先生がこちらにも聞こえるよう大きな声で言う。
「お迎えだけど、どうする?」
シンジは何も答えない。
「お母さんに電話して来てもらう?
一応あなたに確認してから電話するように、担任の先生に言われてるの。」
シンジはまだ何も言わない。
ケイタは振り返ってシンジに答えを促そうとした。
が、その瞬間、シンジがサッと腕を伸ばして、ケイタの手首を強く掴んだ。
布団に顔の下半分が隠れていて、表情は読めないが、
目は不安そうに揺れている。
そして、ゆっくりと首を横に振った。
首を振りながら、ケイタの手首を掴んだ自分の手を見つめている。
ケイタは掴まれた方と反対の手をシンジの手に添えながら、
シンジに変わって答えた。
「俺が送っていきます!
多分、そっちの方が早いんで!」
「大丈夫?また倒れない?」
先生が心配そうな声で聞いた。
「大丈夫です!様子見ながら行くんで!」
シンジはまだ不安そうな表情をしている。
ケイタはシンジの小さな手を自分の大きな手でしっかりと包み込む。
手首を掴むシンジの力が少しずつ抜けていくのを感じた。
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