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しおりを挟むセルフィの一件により結局さくらんぽしか買うことができなかった俺は神様に水を分けてもらっていた。当のセルフィなんかは手ぶらで城を飛び出してきたのである。
お荷物以外の何物でもない。それに加えてレイプ魔。もうどうしようもないのである。
「お前マジで何しに来たんだよ。」
勿論、セルフィに向けて言ったのである。
「貴方を追いかけて来たのです。」
いや、まぁ、その。普通に美人の部類に入るであろう彼女。普通は喜ばしい言葉なんだろうがな。
「その辺にしておけ。」
と神様。セルフィは「は~い」となんとも間抜けな返事をする。
現在、既に太陽が沈み月が見えてるほどの時刻である。どこへ向かっているのかは定かではないがこのまま行くと¨砂漠¨地帯へと突入するそうだ。
そのせいか若干暑くなってきている気がした。
幸い神様がこんなことを想定して水をけっこうな量購入してくれていたことが救いだがどこにその水をしまっているかは謎だ。
「すまんが今日はここで野宿だ。」
そう言い指を指した場所には「ぽん!」と音が鳴って煙が晴れるとテントが置かれていた。
そんなことが出来るのならいっその事、家でも建てておいてくれよ。勿論、セルフィは国に送り返すが。
セルフィは俺が神様と呼んでいることは知っているが本当に神様だということは知らない。説明すると俺が神様と呼んでいることは知っているが本当に神様だとは思っていないのだ。
名前とか聞かれたらその辺はどうするんだろうな。
「天成さん?」
傍から見るとボーっとしているように見えたのか既にテントの中に入っていたセルフィに「早くぅ~」と声をかけられる。
いや、出来れば別々のテントが良いのだが。
「あ、あぁ。今行く。」
口元は物凄い引きつっているであろう事が安易に想像できる。
おそるおそるテントの中に入るとその中はテントと言うよりも¨家¨だった。
「!?」
ベッドにキッチンまで設備されており最早ここが住処でもいいんじゃないか。
「え、これテントなの?」
家なのかテントなのか、微妙なラインではなく完全に家なのである。
「んー。これじゃあただの家だな。」
良かった。神様がテントと家の違いが分からない不思議っこちゃんを通り越してアホじゃなくて。
「まぁ、いいだろ。我慢してくれ。」
我慢もなにもこの周辺に何もない平原にしたら豪華な一夜だと思うんだが。
しかし残念なことに風呂はついてないそうな。心の底から残念である。
一日入らないだけでこんなにベタベタしているのに二日、三日入らなかったら俺の髪はどうなってしまうのだろうか。
きっとベタベタを通り越してネチャネチャだ。
せめて明日は水浴びでもできるよう、と思ったところで砂漠地帯に迫っていることを思い出し吐き気を催しながら眠りにつくのであった。
◇
あついあついあつい。だるいだるいだるい。
それはあの日の坂のだるさをも凌駕するものだった。
そのせいか一日合わないことが珍しい親友の顔を思い出し走馬灯のように思い出がよみがえる。
「おーい、死ぬなよ?」
神様に顔を軽くビンタされあまりの痛さに悶絶しそうになるが顔を腫らすのみで終わった。
現在、セルフィは俺の背中に乗って寝ている。 というよりあまりの暑さに半分気絶しているようなもんだ。
「……。なぁ、神様。」
俺のまじめな表情で何かを察したのか歩みを止める神様。
「どうした?」
聞こうか、それとも黙ろうか。結構迷った。
「俺はこの世界から元の世界に¨生きた状態で帰ること¨はできるのか?」
もとはといえば神様に勝手に殺された命。こうして転生ができるのだから俺が元の世界に再び降臨することも可能なはずだ。
「できない、ことはないが。」
やはり、できる。
「俺はあそこで殺されたことにも理解がいってないしここに転生させられたのも納得してない。あそこで殺されたからこの世界に来てしまった。
もし帰れるのなら、この旅が終わってからでもいい。もとの世界に帰してくれ。」
「そうか……。考えておこう。」
こう、真面目な話をした後だとなんとなく明るい雰囲気に持って行けずセルフィがさっさと起きることをこのときばかりは強く願った。
俺の願いが通じたのか、先程頭を叩きまくったのが効いたのかは分からないがセルフィは目を覚ました。と共にセルフィはひと言言い残して再び目を瞑った。
「あそこに人が倒れていません…?」
日本の夏の数倍は暑い砂漠の中。俺たちは更なる荷物を抱え込むことになる。
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