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kangaroo court
ぼくを…
しおりを挟む◆◆◆◆◆◆
好きなんだ……だから
それが俺とどう関係あるんですか?
好きなものが、居なくなるのって、今後自分が所有出来なくなるって……嫌だろ?
――それが俺と、どう関係あるんですか?
=================================-
月 日
これを、と所長に紙を渡される。事前に預かっていたもののようだ。
懐かしい光景に、一瞬嫌な思い出が脳裏に過ったが、あえて気にしないふりをして黙って受け取った。
何て事のない、事務所の方針についての会議を行うというもの。
どうしようと、どうなろうと、国が決める方針に従わされるしか無いのに。
そう半ば投げやりな気持ちで数枚束ねられたそれを捲る。
「あーーーーっ!!!!! 他人の好意を歪んだ形で受け取る奴、居るよね!!!!」
そこから感じるのは、無骨な文字列と裏腹に激しい憎悪の感情で、俺は少し戸惑ってしまった。
『彼』にとっては、 何故藍鶴色があんなにも なのか っていない。
それを認めること、理解することは、 という事実を認めるのと同義だ。
同時に、少し前に貰った、彼奴のメモを思い出した。
「なんでだよぉ。ぼくが、もう『使えない』という事実が許せない……!
許せない……ぼくはあいつを使う権利があるんだ……その為にスマイルに売ったのに」
「スマイル、ですか、また。これは……懐かしいものを」
「あいつに分かるわけ無いよ。日本人の区別なんかつかないんだからね。
でも問題は、そこじゃあ無いんだ、なんで、分かってくれないんだろう、ぼくに使えないとバレてしまったら、まずい。スマイルの事だけじゃなくて」
「――――これまで消して来た著名人の数、用意した影武者との年代の辻褄が合わない、ですか?」
「――――っあ、彼奴らが悪いんだ!! ぼくは、ぼくは、悪くない……だって!! あいつらが、ついでに消して欲しいって。ぼくは、黙ってもらう代わりに、それを実行しただけなんだ、だからあいつらも、死ぬまで黙ってる!! バレる訳がない、証拠も何処にもない!!」
「………」
「そうだよぉ、それなのに、恐れてる。何処かで露見するんじゃないか。そうだよ!!あいつらが、ぼくを見てる!!でも、バレる訳にはいかない。
だって、ぼくを逮捕したら、どうなる?
そいつらの依頼は? これまで優遇してやった事も、全部、全部、ぼくがいけないのか? なぁ」
「…………」
「藍鶴色は、手放せないんだ、手放しちゃ、いけないんだ。だって、それ、だって、もし、ぼくが、ぼくが露見したらどうなる? 誰が止められる?誰が――――なぁ!!ぼくがやめたら、これまでの――――」
・・・・・・
なぁ界瀬
どうしたらいいと思う?
どうするべきだった?
なんて、分かる訳無いよな。
あのときから、本当は、ずっと時間が止まったまま。
それだけが真実なんだ。
罪は罪で、罰は罰で、でも、そんな事を言ったらいつか生れなきゃよかったと言ってしまうような気がして、それが怖かったんだ。
だけど、このままじゃいけない。
俺たちを細胞レベルで複製しようとしていた、あのときに思った。
止めないと、このままじゃあの人も、不相応な力に依存しきって、とんでもないことになってしまう気がする。
◆◆◆◆◆
「人間、足掻くのを辞めるのも、悪いことではないと思います」
「嫌だ!!やだやだやだやだ!!!」
――――ガタン。
「足掻くのを辞めるのは、今じゃない!!今じゃない!!足掻く、足掻いてやる……まだ間に合う、皆待ってくれる……!!」
「優れた道具を与えられてるのに、自分の技量が原因で結果が出せない……だがまだやれる。セッティングが合ってる合ってない、って話はあるかもだけど、その方向に作り込んだのは自分だから、言い訳のしようがないね。
まぁ、改善する術はあるので、ボチボチやっていきましょう……本当、なんで人間の技量って後退するんだろう……ブツブツ…… 」
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