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08.異臭騒ぎ

シオリの親友

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 ぼくたちはシオリさんの部屋の前に行く。
「シオリさん」
彼女は取り乱したままだったが、まつりが、「小室さんについて聞きたいんだけど」と単刀直入に言うと、彼女は一瞬、静かになった。
「何!」
「いや……みんな小室さん探してるから、何か知らないかなって思って」
「し……」
で、彼女の言葉が止まる。においのせいなのだろう。
目が虚ろというか、半狂乱というか、やはり様子がおかしい。
「し?」
「……」
無言。
「もしかしたら部屋に居るのかな?」
(いや、絶対そんな事は無いけど)まつりが言うと、彼女は案内しろってこと?と言った。
「骨と恋愛をする小説を書いてたんだって?」
まつりはそれには答えずに、やんわりと脅すような口調で言う。

「はぁ? 何言ってんの。あんなの逆張りに決まってるでしょ」
彼女は貶すように笑った。

「何?馬鹿にしに来たの?」
「そうじゃないけど」
「数ある作品の中で目立つにはインパクトがなくちゃ売れないから、ちょっと前に見た映画で骨好きの女が居たのを使っただけですけど? 変人とか才能とか突出してないと読んで貰えないってだけ。
別に他に思い入れがあるわけじゃないんで」

 最近みた映画等からウケると思った変人を適当に使って奇をてらった。
それがシオリさんの真意らしかった。
思い入れなど無く――――

「何? あの子から何を聞いたか知らないけど――――」
シオリさんは心底鬱陶しそうに此方を見る。
「小室さんに聞いた話をしたいんだけど、ついでに小室さんの部屋に行きたいんだよ」
対し、まつりは途中で彼女の言葉を遮って言った。
淡々と、慣れ切っているかのような無表情だ。

「親友、でしょ?」

「そうだけど……なんで私が?」
戸惑っているシオリさん。
しかし親友という言葉には絶対の自信を持って居るようだった。

「ほら、いきなり言っても驚かせるし。親友の頼みなら聞いてくれるんじゃないかなって」









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