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04.まつりとささぎ

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 研究所の事件の後も、まつりは多くの情報を漁っていた。
研究所をざっと調べた限りでも不可解な点が複数見受けられることが判明し、
どうやら、まつりと関わったというだけでは無さそうだという疑問を持って居た為だ。
 何より不可解なのが一般人ということになっている彼があんなに脅迫される理由があるのか?という点だ。
 (資料が数多く保管されている事等、組織が10年以上黙認しているような感じがあった点も不自然だった)

 それで、多少は頼りになりそうなところに身辺調査も依頼してみることにした。




――――昨晩、実はその結果が書斎で分厚く纏められた書類で届いた。
 夏々都が夜中、部屋で課題をするのを監視、監督する傍ら、
内容を読み込んでいたのだが……


其処にはまつりが思っていた以上の情報が羅列してあった。


・『生体そのものを利用した兵器開発が本部でも行われていた事』
・『兵器開発自体は本来北の某国で行われていた事』
・元々、北にはまだ幼い彼の情報を無断で持ち出し、研究機関に売り込んだ者が居た。その人物の名前は明らかにされていない。年齢は19歳程。

・『代理戦争が起きた際、北国と提携している日本のある企業が兵器の開発をすることになり、 ちょうどその関係者と知り合いでハワイに社員旅行に行っていた母親が彼の心をデータ化してさらに北国の人に売ってしまった。


・今まで利用していた観測プランの解約をするのが嫌な為、
・研究が出来なくなったら自分たちが追い出されてしまう、あるいは北に戻されてしまう為。
彼らの言う「これまでの苦労が泡になる」はこの意味と思われる。

『「どうにかして乗り切ろう」と言う動きになっている。これが「どんな手段を使っても」になってきているようだ。彼を保護していた目撃者が殺されたのも口封じの為だろう』


『――結論から申し上げますと』
『彼は戦争兵器の一部として生まれ、本人にも知らせることなく育てられていた、と言う事ですな』
『――それらが明るみになる事を恐れている者が大勢いる故、今こうして騒いでいる輩がおるのです。送った資料は見ていただけましたかな?』



 確かに此処まで巨大ビジネス化しているとなれば、
企業の多すぎる妨害工作にも合点が行く。
 それに、以前にまつりが調査に出かけた際、研究員が言っていた『ショウと同じ事を言う』の裏も出来る限り取ってみたけれど……ショウは、同じように何かに利用された被験者の一人だったようだ。

 彼の状態と、他の被験者は相違する点が多々ある。
  家庭環境も、虐待の有無も異なっている。
決して同じ事など言って居ない。

なのに、調べるたびに彼らの話をしていると思われて疑いを被せられるような事も多々あり、他の研究者に聞いてもすぐに「ショウ」や「メグミ」で片付けたがる輩が出てくる。
 それが障壁となってさらに幾度と捜査を妨害するのも一度や二度ではなかった。

――大方、いくら研究しても新しいネタが出てこなくなったので、予算をせびるために無断で寄せてレポート内容を嵩増しする連中が数多くいる……
それがさらに誤解を生む、というところなのだろう。
(もう……碌な審査もされないんだな)


 前から解っていた事だった。
『彼ら』の中で、あの実験は既に古い歴史で終わっている事になっている。
そして誰も、当時終わったことにしている状況に関わりたくない。
『掘り返さないでくれ』と。信じられない事に、多くの大人が話も聞かずに門前払いする。
 それは想定していた以上の孤独で、想定していた以上に、彼に言いづらくなる程に圧倒的な孤独。
被験者の敵は被験者――――そんな、意味の分からない地獄。
だからこそ、まつりだけは諦めるわけにはいかない。
孤独だった自分といつも一緒に居てくれたから。




「……しかし、どんな手を使っても、ね」

 先日も、夏々都の行く先で人が死んだ、と思い出す。
⦅彼女》も死んだ。北国と、あの組織がどう関係があるかはわからないが、彼らのいうところの『ハワイアンブルー』、『01/39番』その基礎あるいは、『出生の秘密について』公にしたくなかった連中が存在するらしいということは騒ぎの大きさからも確かなことのようである。

国に戻るよりは、傷害事件を起こす方がマシ、これまでの苦労が台無しになると言う連中が多いのだとすれば……

(それもそれで、悲しい話だな)

 自分の存在そのものによって、誰かが死んでいく。自分を知っていると思われれば――そのように自分たちを模した内容であるほど、口封じのために狙われるだろう。

 生き残っているとすれば、目立たないか、あちら側の本体のどちらか。
ずっと繰り返している事のはずなのに、まつり達には『彼ら』の欲望を止める術がない。
いつだって、死体を発見してようやく知る事が出来るだけだ。
それでも自分を責めていてばかりではいけない。

組織が口封じのために手段を選ばない事は既に解っている。
彼らは冗談みたいに何処にでもいて、こうしている間にも、嘘みたいにバタバタと人が消えているのだから。
今は出来る事をこなして、少しでも多くの情報を得なくては。


  ふと、思い出す。
「そういえば、研究所って、使わなくなった校舎を利用していたな」
佳ノ宮系列の、何割かは教育関係に流れている。
「学校……か」


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※通常、組織が動く際は、一般に被害が及ばないようにしており、定期的に連絡会が行われる。
何らかの異変があればまつりの耳にも入る為、それがなかった事が一部の統率が乱れていることを示している。
※問題を認識していたならその時点で動けた筈である。

 
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