未来世界に戦争する為に召喚されました

あさぼらけex

文字の大きさ
上 下
211 / 215
地球へ

第211話 つぶれたバカンス

しおりを挟む
 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 この時代に召喚されたマイは、バカンス先でリムの教え子のイツナと再会する。
 イツナに再戦を挑まれたマイは、特殊シミュレータを使ってイツナと再戦する。
 イツナは以前より腕をあげてはいるが、まだまだマイの敵ではなかった。


 イツナはショックを受ける。
 マイ相手に、話しにもならなかったからだ。
 トライフォースを展開出来ない、たった一機だったマイ相手に。

「あなた、三角形は意識してるの?」
 そんなイツナに、マイは話しかける。
「三角形、ですか?」
 イツナは、マイの発言の意図が分からず、聞き返す。

 トライフォースとは、三角形をイメージした陣形である。
 その三角形の頂点に、三機の機体がいる。
 この三角形を意識すれば、頂点にいる機体の位置も、自ずと決まる。
 つまりトライフォースとは、三機の機体をばらばらに動かす訳ではないのだ。
 この事は、トライフォースが初めて書かれた時にも、解説している。
 と思う。確認はしてないが。

 そしてこの三角形を底辺とする、三角錐のテトラフォーメーションも同様である。
 ちなみに、その三角錐を構成する三角形から、もう一つ頂点を伸ばして、ふたつ目の三角錐を作るのが、テトラフォーメーションダブル。
 独立した三角錐をふたつ作るのが、テトラフォーメーションツインである。
 これ、星間レースの際に、マイとケイがそれぞれ使用してたと思う。

「そうだったんです、か、知らなかった、です。」
 上記の説明を聞いて、イツナは落胆する。
 リム教官からも、そう言われた気はする。
 しかしイツナは、三機の機体を操る事に精一杯で、三角形のイメージが疎かになっていた。

 本来トライフォースは、三人の仲間同士で構成する。
 仲間の死角を補う様に展開するのだが、そこも三角形のイメージである。
 それを伴機を使ってひとりで展開するのは、その分難易度が高い。

「マイさん、お願いです。私を特訓して下さい!」
 イツナの申し出に、マイとマインは顔を見合わせる。
 イツナは教官となったリムの教え子。
 友であるリムの教え子の頼みを、ふたりは断わる理由を持たなかった。
「ええ、僕たちでよければ、相手になるわ。」
「ほんとですか、やったー。」
 イツナはマイの差し伸べる右手を両手で握る。

「でも、ほんとに良かったの。」
 イツナが離れた後、マインは小声でマイに聞いてみる。
「何がよ。」
 マインの意図が分からず、マイは聞き返す。
「ほら、メドーラに会いに行くんじゃなかったの。」
「ああ、そう言えば。」
 マインに言われて初めて、マイは思い出す。
 今回のバカンスの目的を。

 だけどマイは、首をふる。
「メドーラには、いつでも会いに行ける。
 つか、メドーラは望んでないかもね、僕が会いに来る事を。」
「何を今さら。」
 マイの発言に、マインはため息をつく。
 メドーラに会いに行こうとするマイを、マインはそんな理由で最初はとめた。
 だけどマイは、聞く耳持たなかった。

「でも、イツナに教えられるのは、今だけ。
 これも何かの縁だわ。」
 上記の事を意に介せず、マイは言いきる。
「そう、ならメドーラには私ひとりで、会ってくるね。」
 マインはにこやかに手を振る。
 そんなマインの手を、マイはがっちり握る。
「いや、マインも一緒だから。」
「えーと、言ってる意味が分からないな。」
 真顔のマイに、マインは困った笑みを浮かべる。
「だから、僕たちふたりで、イツナの特訓に付き合うんでしょ。」
「私、人に教えるのって、苦手だから。」
「それは僕も一緒だよ。」

「何やってるんですかー?」
 イツナは後ろを振り返り、何やら話しこんでるマイ達に声をかける。
「ごめーん、今行くー。」
 マイはイツナにそう告げると、マインに視線を向ける。
「ほら、行くよ、マイン。」
 マインはふくれっ面でマイに答える。
「人に教えるのも、案外楽しいものよ。」
 と言ってマイはマインの手を引いて、走りだす。

 ここは惑星イプビーナスの衛星フォルボス。
 ここに訓練施設があって、マイ達はこの訓練施設の特殊シミュレータを使わせてもらうのだが、このシミュレータを十日間は自由に使えた。
 本来このシミュレータを使うには、特殊な申請が必要で、実際に使用出来るまでに、数日かかる。
 だけど今は、ここの訓練生達のほとんどが校外実習に出ている事もあり、このシミュレータは実質、マイ達の独占状態だった。

 これは、単なる偶然なのだろうか。
 マインはジョー達の陰謀を感じたが、マイは特に気にしなかった。

 マイ達はイツナの特訓に付き合う傍ら、ここの訓練生達への講演を頼まれる。
 訓練生の誰もが、白銀の大天使マインの話しを聞きたがっていた。
 対して、期待の超新星マイの知名度は、低かった。
 北部戦線での戦いを終決させた事は、極秘にされていた。
 なのでマイの知られている活躍は、初期の星間レースくらいだった。

 マイ達はイツナの特訓の合間に、バカンスも楽しんだ。
 惑星イプビーナスにも、いわゆるレジャー施設はあった。
 イツナの案内で、マイ達は惑星イプビーナスの観光を楽しんだ。
 惑星イプビーナスに密入国したマイとマインは、イツナの同行が無い限り、イプビーナスへの入国は制限される。
 任務で立ち寄る時は、その限りではない。
 しかしプライベートで立ち寄る際は、今後一年間、イツナの同行が義務付けられた。

 イツナとマイとの、シミュレータを使った特訓。
 そしてその後の反省会。
 これはこの訓練施設の訓練生達にも公開された。
 一連の講義は、大盛況となり、この訓練施設は期間限定の特殊カリキュラムを組む。
 そんな時間に束縛されたくないマイ達であったが、ここのシミュレータを特別に使わせてもらってる手前、断りきれなかった。
 この特殊カリキュラムには、校外実習に出ていた訓練生達も、急遽戻ってきた程である。

 マイの指導の下、めきめきと上達するイツナ。
 いつしか伴機無しのマイは、苦戦するようになる。
 そんなマイの指導力に、訓練施設内でのマイの人気も、急上昇。
 元から人気のあったマインと、肩を並べるくらいなる。
 そしてイツナの相手は、ここの訓練生達になる。
 マイばかりを相手にしていては、対マイに特化するだけで、他への応用が効かなくなるからだ。
 伴機を使えないマイを相手にするより、伴機を使える訓練生達の方が、理に適っていた。
 この訓練生達は、連邦警備隊候補生のイツナよりも格段に格下である。
 しかしマイとマインの指導により、イツナでも油断出来ない程には成長していた。

 このマイとマイン。
 戦ったらどっちが勝つか。
 ここの訓練生達で話題になるが、実際ふたりが戦う事はなかった。
 伴機が使えない今の状況では、勝負がつかない事を、ふたりは理解していた。
 このふたりの勝敗を分けるのは、伴機の使いこなしにかかっていた。

 そして、バカンス期間の十日間が過ぎた。
 別れを惜しまれつつ、マイとマインは宇宙ステーションに戻る。
 イツナは新たな任務を受け、その対象区画へと直接向かう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

ギフト争奪戦に乗り遅れたら、ラストワン賞で最強スキルを手に入れた

みももも
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたイツキは異空間でギフトの争奪戦に巻き込まれてしまう。 争奪戦に積極的に参加できなかったイツキは最後に残された余り物の最弱ギフトを選ぶことになってしまうが、イツキがギフトを手にしたその瞬間、イツキ一人が残された異空間に謎のファンファーレが鳴り響く。 イツキが手にしたのは誰にも選ばれることのなかった最弱ギフト。 そしてそれと、もう一つ……。

異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

社畜の俺の部屋にダンジョンの入り口が現れた!? ダンジョン配信で稼ぐのでブラック企業は辞めさせていただきます

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

【なろう440万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ

海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。  衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。  絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。  ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。  大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。 はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?  小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。 カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。  

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

処理中です...