未来世界に戦争する為に召喚されました

あさぼらけex

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地球へ

第206話 密入国

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 この時代に召喚されたマイのクローンであるアルファは、この時代の地球を支配していた。
 その地球を取り戻すために、マイは召喚された。
 マイのアバター体が女性型である理由を、ジョーから聞いたマイとマイン。
 全ての疑問が明らかになったので、あとは地球に行き、アルファと対峙する事になる。
 地球は、マイ達の居る宇宙ステーションから、10億光年から75億光年の距離にある。
 距離が曖昧なのは、アルファが太陽系を全宇宙から隠してしまったためである。
 そう、地球の正確な位置は今の時代、全く分からないのだ。
 そんな地球への水先案内人が、シリウスアルファースリーに乗るベータだった。
 集団無意識に潜れる彼を中心にトライフォースを組めば、アルファの戦闘機、シリウスアルファーゼロと共鳴する。
 実体の無いベータが戦闘機に乗り込むには、サポートAIのアイに憑依する必要があった。
 そしてベータの憑依に耐えるには、アイの改造が必要だった。
 さらにマイとマインの戦闘機にも、地球に向かうための追加装備が必要だった。
 その準備には最低10日はかかり、マイとマインは10日間、暇になった。


 宇宙空間に、二機の戦闘機が駆ける。
「ひっさしぶりの、宇宙だね。」
 マイは久しぶりの宇宙に、大はしゃぎ。
「ちょっと飛ばしすぎよ、マイ。」
 そんなマイを、マインがたしなめる。

 ふたりが今乗る戦闘機は、シリウスガンマツー。
 いつもの戦闘機は、改良中で、乗る事は出来なかった。
 そんな訳で、10日間のバカンスを楽しむ事になった。

「だって、久しぶりにメドーラに会えるんだよ。」
 マイとマインは、メドーラがいるはずの、グリムア共和国へと向かっている。
「だからって、飛ばしすぎは危ないって。」
 マインはマイをたしなめる。
 今のふたりは、サポートAIのサポートを受けていない。
 それは、脱出用システムが使えない事を意味している。
 そして、ちょっとした情報のダウンロードも、ちょっとした戦闘のサポートも、受けられない。
 サポートAIのアイとミサは、ベータの憑依に耐えられるように、改造をほどこされている。
 マイとマインのふたりは今、この時代に来て初めて、自分ひとりで宇宙を飛んでいる。

「でも、10日しかないんだよ。
 下手したら、メドーラに会えないかもしれないし。」
 はしゃいでいる様に見えるマイは、内心焦っている。
 メドーラが今居る正確な位置は、分からないのだ。
 メドーラのパートナーである、サポートAIのアイツウ。
 マイ達がジョーとの会食を済ませて、部屋に戻った時、マイの部屋にアイツウは居なかった。
 そして、ナコの姿もなかった。
 このふたりは、マイ達の地球行きの準備に駆り出されていたのだが、マイもマインも、その事は聞かされていなかった。

 そんな訳で、メドーラに会うためのアポは、取っていない。

「少しは落ち着いて。
 この子達が案内してくれるはずでしょ。」
 マインの戦闘機には、一匹の子猫が乗っている。
 それは、マイの戦闘機にも同様だった。

 マイ達の乗るシリウスシリーズの戦闘機は、特殊な技法でないと、整備出来なかった。
 いつもはメカニックマンのジョーが使っている、膝くらいの高さの円柱形ロボットが、整備にあたる。
 この子猫は、その円柱形ロボットが変形した物だった。
 そして同じ子猫を、メドーラも二匹連れている。
 つまり、マイ達が連れている子猫達なら、メドーラの居場所が分かるかもしれない。

 そんな子猫達は、ある惑星の側で、その惑星をしきりに気にしている。
 この惑星は、ブロントサウルス座のイプシロン星系の第二惑星。
 元は生物も住めない荒野の惑星だったが、人類が植民用に改良した惑星である。
 しかしここは、ブルレア連邦の中。
 メドーラのいるはずの、グリムア共和国ではない。

「行ってみましょう、マイ。」
 マインは、子猫ロボットの導きに従う事を提案する。
「そうね、僕もこの子の反応が気になるわ。」
 マイも、マインに同意する。
「いいの?メドーラに会えなくなるかもしれないのに。」
 マインは、あんなにメドーラに会いたがってたマイを、気にかける。
「いいのよ。メドーラには、今でなくても会えるし。」
 そう答えるマイは、どこか寂しげだった。
「それに、今行かないと、絶対後悔するでしょ。」
 マイは、メドーラに会えなくて残念に思う気持ちを、マインに感じ取られてしまったと感じ、努めて明るく振る舞う。

「そうね、だったらこっちの用事を早めに済ませれば、メドーラに会いに行ける時間くらい、稼げるはずよ。」
 マインは第二惑星へと進路を変更する。
「待ってよー、マイン。」
 マイも慌ててマインの後を追う。

 この第二惑星は、イプビーナスと呼ばれている。
 イプシロン星系のビーナス〔金星)と言う意味からだ。
 しかし、植民開拓時に使われてた名称は、BB〔ビービー)。
 多くの人は、こちらのビービーと呼んでいる。

「ところで、マイって入国手続きって、した事ある?」
 惑星ビービーへの大気圏突入間近のタイミングで、マインはマイに尋ねる。
「にゅーこく?え、なに?」
 マイには、マイン言葉の意味が分からない。
「やっぱりね。」
 とマインはつぶやく。

 普通、どこかの惑星の空港に着陸する時は、その惑星に入る為の手続きが必要になる。
 まだ宇宙へと翔びたてない文明レベルの惑星なら、その限りではないが。
 普段ならサポートAIがやってくれるのだが、今のマイ達は、サポートAIのサポートを受けていない。

「実は、私もよく分からないのよね。」
 サポートAI任せなのは、マインも同じ。
 マインにもそのやり方は、よく分からない。
「なら、聞けばいいんじゃない、この惑星の人に。」
 マイは当然の事の様に言うが、マインはそれを否定する。
「それが出来れば、苦労しないわよ。」
「と言うと?」
「ここの入国管理官はね、気に食わない入国者を、何日も監禁する事で有名なのよ。」
「はあ?何よそれ。」
 マインの発言にマイは驚く。

「そのまま、衰弱死させた事例もある。」
「ちょっと、そんな事許されるの?」
「それが、許されるんだよ、この星では。」
「な、」
 マイは、思わず絶句。
「そんな証拠は、勿論隠蔽するし、バレてもしらばっくれる。」
「何よそれ。この星の司法はどうなってるのよ。」
「怪しい入国者が悪い。これがこの星の考え方さ。」
「はあ?疑わしきは罰せずでしょ。なんで僕の時代より酷くなってるのよ。」

 マイは思わずマインにあたってしまうが、これはマインには関係ない事。
 ただ、この惑星はそう言う所だと言う事。
 ならば、マイ達の入国方法は、ひとつしかない。
 そう、密入国だ。

 これくらいの文明レベルの惑星なら、使われなくなった人工衛星は数多く存在する。
 そのひとつを地表に落とす。
 同時に、マイ達の乗る戦闘機も、自由落下。
 地面に激突寸前に、地面に向けて特殊ミサイル発射。
 戦闘機の落下の、衝撃波を偽る。
 そして地面ぎりぎりで墜落を回避。
 戦闘機は、多次元空間の格納庫に隠される。
 そしてマイ達は、お着替えステッキで、この惑星の住人になりすます。

「うまくいったみたいね。」
 マイはお着替えステッキをマジカルポシェットにしまい、とりあえず安心する。
「まだ安心は禁物よ。」
 マインは子猫ロボットをだっこする。
 子猫ロボットは、子猫のぬいぐるみのふりをする。
 マイも同様に、子猫ロボットをだっこする。
 ふたりは今、街から遠く離れた山のふもとにいる。
 この惑星では浮遊スクーターが使えるので、ふたりはマジカルポシェットから取り出し、街を目指す。

 マイ達は、子猫ロボットの導きで浮遊スクーターを走らせる。
 子猫ロボットは、大きなお屋敷にマイ達を招く。
 そこは、街外れよりも少し離れた所にあり、お屋敷も長年放置されてるらしく、だいぶ荒れていた。

 子猫ロボット達は、勝手に屋敷の中に入って行く。
 マイ達も、慌てて後を追う。

 子猫ロボット達はとある部屋の本棚を、引っ掻いていた。
「はあはあ、勝手に入ってきちゃ、ダメでしょ。」
 息をきらせて追いかけてきたマイは、子猫ロボットを注意する。
 子猫ロボット達は、本棚を引っ掻き続ける。
「この本棚に、何かあるの?」
 マインは、子猫ロボット達の行為を気にかける。
「本棚って、まさか隠し通路があったりして。」
 マイは本棚に何かあると聞いて、そう連想する。
「それよ!」
 マインも、マイの意見に同意する。

「何か仕掛けがあるはずよ、よく探して。」
 マインは、本棚のあちこちをいじくり回す。
「そんなバカな。」
 マイは自分で隠し通路と言ったが、本気で言った訳ではなかった。
 マイは本の並びで、一冊だけ背表紙の色が違うのが気になり、その本を手に取ってみる。
 しかしその本は、隣り合う本のどこかにつかえてるらしく、引き出せない。
 マイはその本を上下にぐりぐりしてみるが、やはり引き出せないので、元に戻す。
 したら、突然ガゴンと言う音がして、本棚が右にスライドする。
 本棚がどいた場所には、地下へと続く階段があった。

 子猫ロボット達は、その階段を駆け降りる。
 マイとマインは、お互い見つめ合い、うなずく。
 そしてふたりも、階段を降りる。
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