201 / 215
地球へ
第201話 クローンの感情
しおりを挟む
これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
この時代にマイが召喚された理由。
それは、マイのクローンであるアルファを、どうにかしてくれとの思いからだった。
持てる才能を完全に開花させたアルファは、自らのクローンを創り出す。
と言っても、完全に同じクローンではない。
自分とは、どこか違うところがあるクローンだった。
アルファがクローン軍団を創った目的は、死の星と化した地球を再生させるため。
そのための才能に特化したクローンを、数万と創った。
このクローン達は、見た目も能力も個性も違い、自らの確固とした意志を持っていた。
クローン体として共通していたのは、アルファと同じ思想を持っている事だけだった。
そしてアルファは許せなかった。
地球をこんな状態で放置していた人類達を。
回復した地球に、さも当然に乗り込んで来た人類達を。
ここに、アルファと人類達との間で、戦争が起きる。
アルファは地球を回復させたクローン達の叡智を結集させ、人類達を追い払う。
そして太陽系外周部にあるという、オールトの雲に光を屈折させる装置を張り巡らせる。
これにより、太陽系の灯りは、宇宙から消えた。
そしてアルファは、これより先に侵入してくる者を、許さない。
帰りの列車に乗り込むマイとマインと、アイとミサの四人。
マイとマインが隣りあって座り、その向かいの席にミサが座り、ミサの横でアイが横になる。
来る時はぴったり隣りあってたマイとマインだが、今は拳ふたつ分、離れている。
これはやはり、マイの魂が男だと分かった事に起因する。
男嫌いのマインと、そんなマインに気をつかうマイ。
ふたりは知らない間に、距離をとる。
「これはまずいかもな。」
そんなふたりを見て、ミサは思う。
愛を持つ者じゃないと、アルファは倒せないと、ベータは言っていた。
この愛を持つ者の意味は分からないが、今のふたりがそうではない事くらい、ミサにも分かる。
そんなふたりの間には、微妙な空気が流れている。
「ねえミサ、ちょっと聞きたいんだけど。」
そんな空気をおしのけ、マイはミサに尋ねる。
ミサはおもむろにマイへと視線を向け、マイの質問を待つ。
「なんでアルファは、他の全人類相手に、戦争なんてしたのかな。」
マイのその疑問に、ミサは驚きの表情を浮かべる。
「それをおまえが聞くのか。」
「え?」
マイには、ミサの言っている意味が分からない。
「だってアルファは、おまえのクローンだろ?
アルファの考えてる事くらい、分かるんじゃないのか?」
「そ、そう言われても。」
マイは、ミサの言葉にたじろぐ。
ミサはマイの性格を、分かっていない。
ミサのパートナーのマインは、合理的に割り切れる性格だが、マイは違う。
女々しくて、女の腐った様な性格。
興味のある事にはのめり込むが、基本後ろ向きで、物語の主役には向いていない。
作者も話しを先に進められず、困ってるほどだ。
「はあ、いきなり全部分かれって、そりゃ無理があるでしょ。」
ここでマインが横から、助け船を出す。
「ちゃんと経緯を説明しなさい。」
とマインに凄まれても、ミサも困る。
「経緯っつっても、その頃私は造られていない。
詳しくは、知らないよ。」
「そうなんだ、ミサにも分からないんだ。」
ミサの答えに、マイはしょげる。
そんなマイを見て、ミサもマインも、呆気にとられる。
「ご、ごめんね、変な事聞いちゃって。」
そんな空気を察して、マイは謝る。
「おいおい。」
ミサは思わずつぶやく。
マイは、言葉の額面通りにしか捉えないのか。
その言葉の言い方とかから、別の意味を持つ事くらい、分かるだろ。
ミサとマインは、顔を見合わせる。
素直すぎるマイに対して、後ろめたさを覚える。
「まあ、詳しい経緯は分からんが、アルファの立場に立って、考えてみようや。」
ミサは、マイにこう提案する。
マイみたいなタイプは、答えを教えても理解しない。
自分で考える事で、初めて理解出来る。
ミサのAIの学習機能は、そう告げている。
「アルファの立場?」
マイは聞き返す。
ミサはうなずき、話しを進める。
「アルファが地球環境を甦らせました。
さあこの時、人類は、どうしたでしょう?」
「そう言う事。」
ミサの話しを聞いて、マインはミサの意図を理解する。
マインのこのつぶやきは、マイの耳には入らなかった。
「それは、地球環境を甦らせてくれて、ありがとうってお礼を言ったんじゃないの。」
マイのその答えに、横で聞いてたマインは、首をふる。
ミサもニヤける。
「いや、違うな。
私もその時には、造られていなかったけれど、それは断言できる。」
「いや、なんでよ。」
マイは、納得いかない。
「自分達に出来なかった事を、やってくれたんでしょ?
普通は感謝するでしょ。」
マイは思わずミサを責める。
ミサも自分には関係ない事で責められても、困るだけだ。
「マインなら、分かるんじゃないか?」
ミサはマインに話しをふる。
マインも、話しに加わりたがっているのに、ミサは気づいていた。
「そうね、そんなの、感謝するわけないじゃない。」
「え、マイン?
何言ってるの?」
ニヤけながら答えるマインの発言は、マイには信じられなかった。
そんなマイを尻目に、マインは続ける。
「クローンなんて、人が作り出した道具にすぎない。
道具を使って行なった行為で、どこに感謝するわけ?」
マインは逆にマイに聞き返すが、マイは何も言えない。
「私は、クローンとか人造人間の類いにも、心がある事くらい、知ってるわ。」
マインはニヤけた態度を一変、真剣な表情になる。
「クローンやAIが反乱を起こしたから、鎮圧してくれって任務を、私は何度か受けた事があるから。」
マインは一瞬だが、悲痛な表情を浮かべた。
マイは、そんな表情を見せるマインに、どこか安心する。
「過去の時代から来た私達には分からないけれど、これがこの時代の人達の認識なのよ。」
「何よ、それ。」
マイはマインの発言に、少なからずショックを受ける。
マイは隣りに座るマインの左肩に寄りかかり、顔を伏せる。
「そんなの、アルファが怒って、当然じゃない。」
マイの身体は、悲しみに震えている。
マインはそんなマイの頭を、優しくなでる。
これからマイとマインは、アルファと戦わなくてはならないのだ。
この時代にマイが召喚された理由。
それは、マイのクローンであるアルファを、どうにかしてくれとの思いからだった。
持てる才能を完全に開花させたアルファは、自らのクローンを創り出す。
と言っても、完全に同じクローンではない。
自分とは、どこか違うところがあるクローンだった。
アルファがクローン軍団を創った目的は、死の星と化した地球を再生させるため。
そのための才能に特化したクローンを、数万と創った。
このクローン達は、見た目も能力も個性も違い、自らの確固とした意志を持っていた。
クローン体として共通していたのは、アルファと同じ思想を持っている事だけだった。
そしてアルファは許せなかった。
地球をこんな状態で放置していた人類達を。
回復した地球に、さも当然に乗り込んで来た人類達を。
ここに、アルファと人類達との間で、戦争が起きる。
アルファは地球を回復させたクローン達の叡智を結集させ、人類達を追い払う。
そして太陽系外周部にあるという、オールトの雲に光を屈折させる装置を張り巡らせる。
これにより、太陽系の灯りは、宇宙から消えた。
そしてアルファは、これより先に侵入してくる者を、許さない。
帰りの列車に乗り込むマイとマインと、アイとミサの四人。
マイとマインが隣りあって座り、その向かいの席にミサが座り、ミサの横でアイが横になる。
来る時はぴったり隣りあってたマイとマインだが、今は拳ふたつ分、離れている。
これはやはり、マイの魂が男だと分かった事に起因する。
男嫌いのマインと、そんなマインに気をつかうマイ。
ふたりは知らない間に、距離をとる。
「これはまずいかもな。」
そんなふたりを見て、ミサは思う。
愛を持つ者じゃないと、アルファは倒せないと、ベータは言っていた。
この愛を持つ者の意味は分からないが、今のふたりがそうではない事くらい、ミサにも分かる。
そんなふたりの間には、微妙な空気が流れている。
「ねえミサ、ちょっと聞きたいんだけど。」
そんな空気をおしのけ、マイはミサに尋ねる。
ミサはおもむろにマイへと視線を向け、マイの質問を待つ。
「なんでアルファは、他の全人類相手に、戦争なんてしたのかな。」
マイのその疑問に、ミサは驚きの表情を浮かべる。
「それをおまえが聞くのか。」
「え?」
マイには、ミサの言っている意味が分からない。
「だってアルファは、おまえのクローンだろ?
アルファの考えてる事くらい、分かるんじゃないのか?」
「そ、そう言われても。」
マイは、ミサの言葉にたじろぐ。
ミサはマイの性格を、分かっていない。
ミサのパートナーのマインは、合理的に割り切れる性格だが、マイは違う。
女々しくて、女の腐った様な性格。
興味のある事にはのめり込むが、基本後ろ向きで、物語の主役には向いていない。
作者も話しを先に進められず、困ってるほどだ。
「はあ、いきなり全部分かれって、そりゃ無理があるでしょ。」
ここでマインが横から、助け船を出す。
「ちゃんと経緯を説明しなさい。」
とマインに凄まれても、ミサも困る。
「経緯っつっても、その頃私は造られていない。
詳しくは、知らないよ。」
「そうなんだ、ミサにも分からないんだ。」
ミサの答えに、マイはしょげる。
そんなマイを見て、ミサもマインも、呆気にとられる。
「ご、ごめんね、変な事聞いちゃって。」
そんな空気を察して、マイは謝る。
「おいおい。」
ミサは思わずつぶやく。
マイは、言葉の額面通りにしか捉えないのか。
その言葉の言い方とかから、別の意味を持つ事くらい、分かるだろ。
ミサとマインは、顔を見合わせる。
素直すぎるマイに対して、後ろめたさを覚える。
「まあ、詳しい経緯は分からんが、アルファの立場に立って、考えてみようや。」
ミサは、マイにこう提案する。
マイみたいなタイプは、答えを教えても理解しない。
自分で考える事で、初めて理解出来る。
ミサのAIの学習機能は、そう告げている。
「アルファの立場?」
マイは聞き返す。
ミサはうなずき、話しを進める。
「アルファが地球環境を甦らせました。
さあこの時、人類は、どうしたでしょう?」
「そう言う事。」
ミサの話しを聞いて、マインはミサの意図を理解する。
マインのこのつぶやきは、マイの耳には入らなかった。
「それは、地球環境を甦らせてくれて、ありがとうってお礼を言ったんじゃないの。」
マイのその答えに、横で聞いてたマインは、首をふる。
ミサもニヤける。
「いや、違うな。
私もその時には、造られていなかったけれど、それは断言できる。」
「いや、なんでよ。」
マイは、納得いかない。
「自分達に出来なかった事を、やってくれたんでしょ?
普通は感謝するでしょ。」
マイは思わずミサを責める。
ミサも自分には関係ない事で責められても、困るだけだ。
「マインなら、分かるんじゃないか?」
ミサはマインに話しをふる。
マインも、話しに加わりたがっているのに、ミサは気づいていた。
「そうね、そんなの、感謝するわけないじゃない。」
「え、マイン?
何言ってるの?」
ニヤけながら答えるマインの発言は、マイには信じられなかった。
そんなマイを尻目に、マインは続ける。
「クローンなんて、人が作り出した道具にすぎない。
道具を使って行なった行為で、どこに感謝するわけ?」
マインは逆にマイに聞き返すが、マイは何も言えない。
「私は、クローンとか人造人間の類いにも、心がある事くらい、知ってるわ。」
マインはニヤけた態度を一変、真剣な表情になる。
「クローンやAIが反乱を起こしたから、鎮圧してくれって任務を、私は何度か受けた事があるから。」
マインは一瞬だが、悲痛な表情を浮かべた。
マイは、そんな表情を見せるマインに、どこか安心する。
「過去の時代から来た私達には分からないけれど、これがこの時代の人達の認識なのよ。」
「何よ、それ。」
マイはマインの発言に、少なからずショックを受ける。
マイは隣りに座るマインの左肩に寄りかかり、顔を伏せる。
「そんなの、アルファが怒って、当然じゃない。」
マイの身体は、悲しみに震えている。
マインはそんなマイの頭を、優しくなでる。
これからマイとマインは、アルファと戦わなくてはならないのだ。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
おじさんと戦艦少女
とき
SF
副官の少女ネリーは15歳。艦長のダリルはダブルスコアだった。 戦争のない平和な世界、彼女は大の戦艦好きで、わざわざ戦艦乗りに志願したのだ。 だが彼女が配属になったその日、起こるはずのない戦争が勃発する。 戦争を知らない彼女たちは生き延びることができるのか……?
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/sf.png?id=74527b25be1223de4b35)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる