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異次元からの侵略者
第163話 独り言の様に見えても、誰かとの会話かもしれない
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これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
北部戦線についにブルードラゴンが現れた。
しかし神武七龍神を実感出来る者は、この戦場にはリムしかいなかった。
この宙域全体の戦闘システムを、全て遮断させるという、今までよりも数段次元の異なる攻撃。
そして、こちらの思考は全て筒抜け。
リムは、反抗する意思を失う。
しかしそれは、ブルードラゴンがどこか友好的だったからである。
ブルードラゴンがマイの名を口にした事で、この青い竜は、マイと会っている事が分かる。
そう、この青い竜は、マイに説得されて、この北部戦線に現れたのだろうと、リムは思う。
「で、マイは無事なの?
他にもふたり、居たと思うんだけど。」
リムは青い竜に、マイ達三人の事を聞いてみる。
マイと、ユアとメドーラの三人である。
「無事かどうかは、とらえ方によるとしか、言い様がないな。」
青い竜のその言葉に、リムの表情がかげる。
まさか無礼打ち?
とリムは即座に思った。
マイがそれと知らずに、地雷を踏み抜く事も、想像に難くない。
その巻き添えを、ユアとメドーラがくらう事も。
「そんな事はしなかったよ。」
青い竜はリムの思考を読み、それを否定する。
「あの者も一応、面識ある者だし、我の機嫌も悪くはない。
戦闘の原因を作った者だったら、そうはいかんがな。」
青い竜の口調も、厳しいものに変わる。
それはおそらく、この戦場で戦ったヤツだったら、無礼打ちの可能性はあったのだろう。
つまり、リム本人が最初に直接会ってたのなら、普通に殺されてたのかも知れない。
今持ってこちらの全軍が全滅しないのも、マイのお陰なのかも知れない。
そしてリムは、疑問に思う。
マイが面識ある者とは、どう言う事だろう。
「その事なら、本人に聞くといい。
ケイの事も、聞いてやれ。」
青い竜は、リムの思考を読んで話してくる。
「ケイ?」
突拍子もなく出てきたケイの名を、リムは思わず王蟲返す。
惑星ドルフレアで行方不明になったケイは、千年前にタイムスリップした。
そう、千年前の時代に死んだケイの名が、なぜいきなり出てくるのだろう。
ここまで読んでくれた読者さんなら、察しはつくだろう。
しかしリムは、ケイがタイムスリップした後の事を、知らない。
「我がここに来た目的のひとつは、この者達を返す事。」
ケイについての疑問を、リムがまとめあげる前に、青い竜は話しを進める。
青いモヤの一部が色濃くなり、青い竜の左手の手のひらを形作る。
その手のひらの上には、三機の戦闘機があった。
シリウスアルファーワン。
シリウスガンマファイブ。
そして、コックピットを大きく損傷したシリウスガンマスリー。
ひと目見ただけでは、コックピットの損傷には気が付かなかったが。
「な、ナコ、三人は無事なの?」
リムは額のチップを通じ、パートナーのナコに問いかける。
「それが、」
ナコからの返答は、なぜか鈍い。
「どうしたのよ、そこにアイ達はいるんでしょ。」
と、ナコの反応を待たずに、リムはたたみかける。
パートナーであるサポートAI達は、司令室にある専用カプセル内から、パートナー達をサポートしている。
つまり今のナコの隣りには、アイ達が居るはず。
そしてカプセル内に入っていれば、サポートAI同士の意思疎通も可能。
「寝ているのですよ!」
「え?」
リムに急かされたナコは、先に結論を述べる。
「そんな事が、あり得るの?」
「分かりません。この様な事態は、過去に記録はありません。」
と、ナコは簡潔に答える。
報告したい重大な事が、他にあったから。
「アイとアイツウは、寝ています。そして、」
ここでナコは言葉をつまらせる。
「なによ、ユウのいびきがうるさいの?」
三人のうち、ユウが別枠になる理由を、リムはこれくらいしか思い至らなかった。
「ユウの姿が、消えました。」
「え?」
リムは咄嗟に、三人の機体を見る。
しかし、ここからでは遠くてよく分からない。
ユウが消えた。ならば、パートナーのユアはどうなっている?
「モニター拡大、お願い!」
リムはオペレーターに指示を出す。
「座標は、X115、Y651、Z23!」
「モニター拡大、ポイントX115、Y651、Z23。」
オペレーターは復唱し、そのポイントを映し出す。
そこには、三機の戦闘機があった。
「あれはシリウス?」
「なぜこんな所に?」
乗組員達が驚く中、リムは膝から崩れる。
「ユア、」
ユアの機体だけ、コックピットが大きく損傷していた。
ユアはどうなったのか。
パートナーのユウが何故か居なくなった今、それは分からない。
だけど、生存は絶望的だろう。
一瞬ユアを殺された怒りがこみ上げてくるが、すぐに抑える。
「これが、戦争。」
と、リムは自分に言い聞かせる。
「ああ。これが戦争だ。」
青い竜はリムの言葉をくり返す。
「他の者の大切な物を奪う。
それは、大切な物を奪われる覚悟は、あるのだろう。」
「くっ。」
リムは言い返せない。
「虐げられた弱者からの反撃は、想定していなかったのであろう。
なんとも浅はかな事よ。
それがこの戦争の原因だと、知るがいい。」
青い竜は冷酷に言葉を続ける。
「そう、そうだったの。」
リムは両手を力いっぱい握りしめて、ユアの機体を見つめるだけしか出来なかった。
「この三名の機体を、おまえに引き渡したい。」
「え?」
青い竜は、唐突に話題を変える。
「我の顕現出来る時間も、そう長くはない。
早く来てくれ。」
そう言われて、リムは青いモヤが薄れている事に気がつく。
「わ、分かったわ。すぐ行きます。」
両膝をついてたリムは、即座に立ち上がる。
そして気づく。
ほぼ感覚の無かった右半身が、元に戻ってる事に。
これは、青い竜が何かしたのだろう。
「私は、あの者達の回収に向かいます。」
リムはモニターに映る三機の戦闘機を指さして、ブリッジ内の乗組員達に告げる。
「今後の、一切の戦闘行為を禁じます。
戦闘行為を行った場合、私達は全滅するものと、心得て下さい。」
リムはそのままきびすを返し、ブリッジを後にした。
残されたブリッジ内の乗組員達は、少しざわついた。
青い竜の声は、リム以外には聞こえない。
今回の話しは、側から見たら、リムの独り言にしか見えない。
だけどリムがパートナー持ちである事を、誰もが知っている。
パートナーからの会話は、他人には聞こえない。
乗組員達には、思えなかった。
リムがパートナーと話していると。
誰もが感知できない何者かと、会話してるのだろうと、多くの者は思った。
北部戦線についにブルードラゴンが現れた。
しかし神武七龍神を実感出来る者は、この戦場にはリムしかいなかった。
この宙域全体の戦闘システムを、全て遮断させるという、今までよりも数段次元の異なる攻撃。
そして、こちらの思考は全て筒抜け。
リムは、反抗する意思を失う。
しかしそれは、ブルードラゴンがどこか友好的だったからである。
ブルードラゴンがマイの名を口にした事で、この青い竜は、マイと会っている事が分かる。
そう、この青い竜は、マイに説得されて、この北部戦線に現れたのだろうと、リムは思う。
「で、マイは無事なの?
他にもふたり、居たと思うんだけど。」
リムは青い竜に、マイ達三人の事を聞いてみる。
マイと、ユアとメドーラの三人である。
「無事かどうかは、とらえ方によるとしか、言い様がないな。」
青い竜のその言葉に、リムの表情がかげる。
まさか無礼打ち?
とリムは即座に思った。
マイがそれと知らずに、地雷を踏み抜く事も、想像に難くない。
その巻き添えを、ユアとメドーラがくらう事も。
「そんな事はしなかったよ。」
青い竜はリムの思考を読み、それを否定する。
「あの者も一応、面識ある者だし、我の機嫌も悪くはない。
戦闘の原因を作った者だったら、そうはいかんがな。」
青い竜の口調も、厳しいものに変わる。
それはおそらく、この戦場で戦ったヤツだったら、無礼打ちの可能性はあったのだろう。
つまり、リム本人が最初に直接会ってたのなら、普通に殺されてたのかも知れない。
今持ってこちらの全軍が全滅しないのも、マイのお陰なのかも知れない。
そしてリムは、疑問に思う。
マイが面識ある者とは、どう言う事だろう。
「その事なら、本人に聞くといい。
ケイの事も、聞いてやれ。」
青い竜は、リムの思考を読んで話してくる。
「ケイ?」
突拍子もなく出てきたケイの名を、リムは思わず王蟲返す。
惑星ドルフレアで行方不明になったケイは、千年前にタイムスリップした。
そう、千年前の時代に死んだケイの名が、なぜいきなり出てくるのだろう。
ここまで読んでくれた読者さんなら、察しはつくだろう。
しかしリムは、ケイがタイムスリップした後の事を、知らない。
「我がここに来た目的のひとつは、この者達を返す事。」
ケイについての疑問を、リムがまとめあげる前に、青い竜は話しを進める。
青いモヤの一部が色濃くなり、青い竜の左手の手のひらを形作る。
その手のひらの上には、三機の戦闘機があった。
シリウスアルファーワン。
シリウスガンマファイブ。
そして、コックピットを大きく損傷したシリウスガンマスリー。
ひと目見ただけでは、コックピットの損傷には気が付かなかったが。
「な、ナコ、三人は無事なの?」
リムは額のチップを通じ、パートナーのナコに問いかける。
「それが、」
ナコからの返答は、なぜか鈍い。
「どうしたのよ、そこにアイ達はいるんでしょ。」
と、ナコの反応を待たずに、リムはたたみかける。
パートナーであるサポートAI達は、司令室にある専用カプセル内から、パートナー達をサポートしている。
つまり今のナコの隣りには、アイ達が居るはず。
そしてカプセル内に入っていれば、サポートAI同士の意思疎通も可能。
「寝ているのですよ!」
「え?」
リムに急かされたナコは、先に結論を述べる。
「そんな事が、あり得るの?」
「分かりません。この様な事態は、過去に記録はありません。」
と、ナコは簡潔に答える。
報告したい重大な事が、他にあったから。
「アイとアイツウは、寝ています。そして、」
ここでナコは言葉をつまらせる。
「なによ、ユウのいびきがうるさいの?」
三人のうち、ユウが別枠になる理由を、リムはこれくらいしか思い至らなかった。
「ユウの姿が、消えました。」
「え?」
リムは咄嗟に、三人の機体を見る。
しかし、ここからでは遠くてよく分からない。
ユウが消えた。ならば、パートナーのユアはどうなっている?
「モニター拡大、お願い!」
リムはオペレーターに指示を出す。
「座標は、X115、Y651、Z23!」
「モニター拡大、ポイントX115、Y651、Z23。」
オペレーターは復唱し、そのポイントを映し出す。
そこには、三機の戦闘機があった。
「あれはシリウス?」
「なぜこんな所に?」
乗組員達が驚く中、リムは膝から崩れる。
「ユア、」
ユアの機体だけ、コックピットが大きく損傷していた。
ユアはどうなったのか。
パートナーのユウが何故か居なくなった今、それは分からない。
だけど、生存は絶望的だろう。
一瞬ユアを殺された怒りがこみ上げてくるが、すぐに抑える。
「これが、戦争。」
と、リムは自分に言い聞かせる。
「ああ。これが戦争だ。」
青い竜はリムの言葉をくり返す。
「他の者の大切な物を奪う。
それは、大切な物を奪われる覚悟は、あるのだろう。」
「くっ。」
リムは言い返せない。
「虐げられた弱者からの反撃は、想定していなかったのであろう。
なんとも浅はかな事よ。
それがこの戦争の原因だと、知るがいい。」
青い竜は冷酷に言葉を続ける。
「そう、そうだったの。」
リムは両手を力いっぱい握りしめて、ユアの機体を見つめるだけしか出来なかった。
「この三名の機体を、おまえに引き渡したい。」
「え?」
青い竜は、唐突に話題を変える。
「我の顕現出来る時間も、そう長くはない。
早く来てくれ。」
そう言われて、リムは青いモヤが薄れている事に気がつく。
「わ、分かったわ。すぐ行きます。」
両膝をついてたリムは、即座に立ち上がる。
そして気づく。
ほぼ感覚の無かった右半身が、元に戻ってる事に。
これは、青い竜が何かしたのだろう。
「私は、あの者達の回収に向かいます。」
リムはモニターに映る三機の戦闘機を指さして、ブリッジ内の乗組員達に告げる。
「今後の、一切の戦闘行為を禁じます。
戦闘行為を行った場合、私達は全滅するものと、心得て下さい。」
リムはそのままきびすを返し、ブリッジを後にした。
残されたブリッジ内の乗組員達は、少しざわついた。
青い竜の声は、リム以外には聞こえない。
今回の話しは、側から見たら、リムの独り言にしか見えない。
だけどリムがパートナー持ちである事を、誰もが知っている。
パートナーからの会話は、他人には聞こえない。
乗組員達には、思えなかった。
リムがパートナーと話していると。
誰もが感知できない何者かと、会話してるのだろうと、多くの者は思った。
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