未来世界に戦争する為に召喚されました

あさぼらけex

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異次元からの侵略者

第151話 とりあえず我を失ってれば、なんか上手くいく

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 神武七龍神のブルードラゴンが、龍神騎に姿を変えた。
 対するマイとユアとメドーラの三人の戦闘機も、変形合体してオメガクロスに姿を変える。
 自分が主体で操縦する事に、マイは抵抗を感じる。
 だけど他のふたりも絶賛する操縦をした事で、マイはその弱気な思いを払拭する。
 マイは自分から、龍神騎を攻めたてる。


「はあ!」
 マイの操るオメガクロスは、右手に持ったナイフで龍神騎に斬りかかる。
 龍神騎は、ひょいと身をかわす。
 元々、一秒間に千発もの突きを繰り出す龍神騎である。
 こんな攻撃など、軽くかわせる。

「はあ!」
 その龍神騎がかわした先に、ナイフを振り下ろす。
「おっと。」
 龍神騎は一歩身をひいてかわす。
「はあ!」
 その龍神騎がかわしきる前に、龍神騎の移動先にナイフを振り下ろす。

「何?」
 龍神騎は慌てて飛び退くが、オメガクロスはぴったり付いて来て、ナイフを振り下ろす。
「くそ、こいつ!」
 龍神騎は上下左右、あらゆる方向に逃げるが、オメガクロスはぴったり付いて来て、ナイフを振り下ろす。

 ナイフを振り下ろすたびに掛け声をあげていたマイも、いつしか無言になる。
 その表情は凛とひきしまる。
 初めて見るマイの表情に、ユアもメドーラも、茫然と見入るだけだった。
 ふたりはマイに、頼もしさよりも、恐怖を感じてしまう。

「こ、この我が。」
 龍神騎に、苦悶の表情が浮かぶ。
 オメガクロスの攻撃は、ナイフを振り下ろすだけだから、身をよじれば簡単にかわせる。
 しかしそれは、振り下ろし以外の攻撃がくれば、かわすのは困難になる事を意味している。
 それは操る者が素人であるがゆえの未熟さであるが、この域での攻防において、これは手加減されてるとしか思えない。

「こなくそ!サウザンドスピアー!」
 龍神騎はかわしざま、至近距離から無数の突きを放つ。
 だが、その始点よりも早く、オメガクロスが動く!
「ミリオンダガー!!」
 オメガクロスは、一段階、いや二段階ほど速度をあげ、龍神騎の右ワキを通り抜ける。

「ぐは」
 龍神騎は右手に持つ槍を落とす。
 そのまま膝から崩れ、両ひざをつく。
 右手と右脇腹に衝撃が走る。

「ミリオン、ダガー。」
 龍神騎はつぶやく。
「その名の通り、百万回もその短剣を振るったのか。」

 いや、違う。
 ユアとメドーラは思った。
 オメガクロスを操るマイと、同じコックピットに居るから解る。
 マイがナイフを振るったのは、一度だけだ。
 すれ違いざまに、横一閃しただけだ。
 ただ、マイの気迫が一本のナイフに百万本分の衝撃を与えただけだった。

「あれ、僕何やってたの?」
 ここでマイが、正気に戻る。
 マイの瞳には、両ひざをつく龍神騎の後ろ姿が写る。
 なぜそうなったのか、今のマイには分からない。
 今までのマイの動きは、我を忘れたマイの動きだった。
「ま、マイお姉さま?」
 その事にメドーラが驚く。

「うおお!」
 マイの異変を察知して、龍神騎は槍を左手に持つと、両ひざをついた姿勢から、左足のつま先を外側に向け、左ひざをあげる。
 その勢いで左回りに後方へと槍を、横一閃!
 虚をつかれたオメガクロスは、その攻撃をまともにくらい、後方へと吹っ飛ぶ。

「いったーい。」
 マイのその言葉とともに、尻もちをつくオメガクロス。
 だけど龍神騎も、追撃をしない。
 槍を横一閃した体勢のまま、動きをとめる。
 今の急激な動きで、右脇腹の痛みが増した。

 龍神騎の動けない今こそ、反撃のチャンス。
 だけどオメガクロスも操縦者のマイが正気に戻ってしまい、今までのような動きが出来ない。
「マイ、自分が何やったのか、覚えてないの?」
 ユアがマイに向かって怒鳴る。
 自分達は、オメガクロスの操縦に邪魔になる。
 そう思ってたユアだが、今は龍神騎も動けない。
 今なら、マイ相手に充分議論ができる。

「お、覚えてないよ。気づいたら、ミズキが後ろ向いてた。」
 マイも記憶を遡るが、それ以上は思い出せない。
「いつからですか。」
 横からメドーラも議論に加わる。
「いつから覚えてないのですか!」
「そ、そんなに怒鳴らなくても。」
 マイはメドーラの迫力に、ちょっと委縮する。
「ブルードラゴンが動く前に、思い出して下さい!
 じゃないと私達、死にますよ!」
「死ぬ。」
 メドーラの言葉に、マイはつぶやく。
「死んじゃう。」
 マイは目はうつろだが、その意識は自身の内面へと潜りこんでいく。

「メドーラ、少し落ち着け。」
 熱くなったメドーラを、ユアがたしなめる。
「ですが、ユアお姉さま。」
 反射的に強い口調で応えるメドーラだが、冷静になろうと間を開ける。

「どうしたんだよ、メドーラらしくもない。」
 いつものメドーラは冷静にアドバイスして、良い結果へとマイを導いている。
 だけどここ数話のメドーラは、マイの行動にあきれてばかりだ。
「私らしいって、どういう意味ですか。」
 メドーラもここ数話の自分を振り返り、本当の自分とは何か、分からなくなっている。
「だって、マイお姉さまにしっかりしてもらわないと、私達は死んでしまうんですよ。」
 メドーラは涙声になりながら、どうにか言葉を絞り出す。

 そう、今や三人とも、脱出用システムに耐えられる魂ではない。
 それに頼る時は、三人の死を意味している。
 つか、この超高次元空間からの脱出用システムでの脱出は、不可能であった。

「そうだよ、思い出した。」
 自分の記憶を辿っていたマイは、メドーラの涙声で、その答えにたどり着く。
「僕が護らないと、ふたりとも死んじゃうんだ。」
 マイはニヤりと表情を変える。
「マイ、今のマイは、正気なの?話しは通じる?」
 そんなマイを見て、ユアは不安になる。
「話しは通じるかって?」
 マイはユアの方に顔を向ける。
 ユアはゾッとする。
 マイの表情は、いつものマイより、凄みを増していた。
「何をやったか、思い出してきたよ。」
 そう言うと、今度はメドーラの方に顔を向ける。
「だから、メドーラも安心して。
 僕が誰も死なせないから。」
 そう言ってほほえむマイの笑顔は、メドーラの知るマイの笑顔ではなかった。

「さて、今はブルードラゴンをやっつけるチャンスなんだよね。
 ごめんね、ミズキ。」
 マイは正面へと顔を向ける。
 龍神騎は左ひざを立てて後ろを向いた状態から、動けないでいる。
 右手で右脇腹をおさえ、左手を地面につき、こちらをにらんでいる。

「近づいたらやばそうだから、ここから行くよ!」
 マイは、オメガクロスの腰の右側に装備されたソーサラーボムを投げつける。
 龍神騎は地面につけてる左手をかざし、ソーサラーボムへの盾とする。

 ズガーン!
 ソーサラーボムは爆炎をあげて爆発する。
「一気にとどめ行くよ!」
 オメガクロスの腹部に装備された二発のミサイルが、龍神騎めがけて飛んで行く!
 ズガガガーン!
 命中したミサイルは、大爆破をおこす。

「ぐおおおおーー!」
 龍神騎は断末魔の雄叫びをあげる。
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