未来世界に戦争する為に召喚されました

あさぼらけex

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異次元からの侵略者

第143話 敵対関係にあっても、仲間は仲間

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 北部戦線での戦闘が始まる中、意見が対立するふたりのケイネシア。
 一方は全宇宙を敵に回しても、徹底抗戦する構え。
 一方はソゴム破壊を機に、姿をくらまそうという考え。
 元は、虐げられし者を救いたいという、同じ想いだった。
 だけど千年を経るうちに、ふたりの進む道は、僅かにずれていた。
 そんなふたりの対立を、ただ見てるだけのマイ達三人。
 ぶっちゃけ目の前のふたりを取り押さえれば、この衛星基地ソゴムを制圧出来て、この戦争も終わらせられる。
 だけど、それはあえてしなかった。
 ふたりのケイネシアの背後には、神武七龍神ブルードラゴンがいるからだ。


「私達も、そう長くはもたない事、もう気づいているよな。」
 ミイの別動体である方のケイネシアが、もうひとりのケイネシアに尋ねる。
「そんな感じはしていたが、やっぱりそうなんだな。」
 アバター体の方のケイネシアも、その事を悟る。
「ならば、無駄に戦闘に費やすより、今やるべき事は、分かりますよね。」
「ああ、我われの居た痕跡の隠滅、新天地の存在の隠匿。
 って、ちょっと待て。」
 アバター体の方のケイネシアは、自分の言葉をあわててふさぐ。

「これ、こいつらの前で、言う事か?」
 そう、この場には、マイとユアとメドーラがいる。
 加えて、フォログラフであるが、アイとユウとアイツウもいる。
 いわば、敵の目の前で、作戦会議をする様なものである。

「いや、これはこの者達の協力が必要なんだ。
 アイ、ユウ、アイツウ。おまえ達のチカラも貸してくれ。」
 マイ達三人には、ブルードラゴンの事を頼んでいる。
 そして今新たに、サポートAIの三人にも、頼み事をする。

「私達は一応、敵対者だぞ。そんな私達に頼むのか。」
 早速ユウが、憎まれ口をたたく。
 パートナーであるユアは、顔をそむける。
 ユアには、ユウの気持ちが分かるからだ。
「私は、あなた達の仲間だったミイの成れの果て。
 敵ではありません。時代を越えた仲間だと、私もミイも、思ってます。」
 ミイの別動体であるケイネシアは、凛として受け応える。
「とは言え、我われがおまえ達ふたりを取り押さえれば、事は終わるんだが、どう思う?」
 ユウはニヤけながら、ケイネシアを追いつめる。

「何?」
 アバター体の方のケイネシアは、カチンとくる。
「お待ちなさい。」
 そんなケイネシアを、メドーラが止めに入る。
「今は、事に成り行きを、見守りましょう。」
 それは、敵対する者に対してというより、仲間に対しての態度に近かった。

「それが出来るなら、とっくにそうしてるはずです。」
 ユウの問いに、はっきりと答える。
 別動体の方のケイネシアには、ミイの記憶も残っている。
 つまり、ユウ達サポートAIの性格も、分かっている。
 その立場上、敵対者と協力するには、はっきりさせなければならない事がある。

「出来るなら?
 やらなかっただけかも知れないぞ。」
 そう言ってユウは、ユアに問いかける。
「そうだよな、ユア。」
 話しを振られたユアは、少しめんくらう。
「さっきも言ったが、マイがいなかったら、私もメドーラも無事ではなかった。
 だから、やらなかったんじゃない。
 出来なかったんだ。」
「そっか。」
 ユアの答えに、ユウもどこかホッとする。

 この場で出来る事は、何も無い。
 それが明言されなければ、敵対者の申し出など、受け入れられない。

「だから私もメドーラも、マイのやりたい事につきあうつもりだ。」
 ユアは先ほどの台詞に、そう付け加える。
「私は元より、マイお姉さまに従います。」
 メドーラもユアの台詞に同意する。

「ふ、こんな日が来るとはな。」
 ユウは目を閉じて、感慨にふける。
 アイのパートナーは、四人全員死んでいる。
 本当は九人だが、ユウの知るのは四人だった。
 つまり、ユウのパートナーよりも格下だと思ってたアイのパートナーが、ユウのパートナーを超える日が来たのだ。

「ユウ、あなたもすでに、分かってますよね。
 私達のやるべき事が。」
 アイツウの声かけに、ユウは目を開ける。
「そうだな。
 私もおまえらに、チカラを貸すぜ。」
 ユウは最初に協力を求めたケイネシアに、やっと同意の意を示す。

「でも、ほんとに良いの?」
 ここでマイが口をはさむ。
「ここでの事は、全部筒抜けなんでしょ?」

 そう、今ここに居るユウ達サポートAIのフォログラフは、本体の目であり、耳である。
 フォログラフの感じた事は、全て本体に伝わる。
 それは、マイ達の基地である宇宙ステーション全体に伝わってる事である。
 この場に居るふたりのケイネシアを取り押さえれば、この戦いは終わる。
 それも、すでに伝わっているはず。

「それなら、心配ありませんよ、マイ。
 すでに私達は、本体とはつながっていませんから。」
 と言って、アイがにっこりほほえむ。

 元々、通信が遮断された空間である。
 戦闘機から一定距離を離れれば、本体との交信も不可能になる。
 マイとケイネシアとの様子を見て、アイが判断した。

 知らない方がいい。
 ここはマイ達に、任せるべきだ。

 アイとユウとアイツウの三人は、改めてケイネシアに協力する事を決める。
 といってもこの三人、ただのフォログラフなんだけど。
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