上 下
141 / 215
異次元からの侵略者

第141話 姿は同じでも、中身は違う

しおりを挟む
 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 1900年前に飛ばされたミイが、自らの意志を残すためにマザーコンピュータを作る際、自分が大型のマザーコンピュータになっても動き回れるように、別動体を作った。
 ケイの姿をした別動体と、ついでにケイのアバター体を作った。
 自分自身の姿とは、本人には分からないものである。
 だから、愛着のあるケイの姿にする事にした。
 ミイの当初の目的は、離ればなれになったケイに再び会う事である。
 ケイがブルードラゴンの依代になった後、ケイの魂を召喚するために、ケイのアバター体を作った。
 しかしミイは、ケイに会う事は出来なかった。
 800年の眠りについたミイは、ケイの来た時代に起きる事が出来なかった。
 ミイが目覚めたのは、ケイが行動をともにした勇者ローランの孫の時代だった。
 その時、ブルードラゴンの中にケイの意識はなかった。
 だが、ブルードラゴンと行動を共にする、確固たるケイの意志は感じた。
 ミイは、そのケイの意志に従う事にした。
 そして、ローランの孫が凶弾に倒れた。
 姉レイアと弟レウスの双子の姉弟。
 この姉弟の魂を、ケイのアバター体に召喚した。
 ふたりの死は、あまりにも早すぎた。
 これにより、ケイの姿をした者がふたりいる事になった。
 ミイは二代目の別動体の自分を作る時、ミイの姿で作ろうとしたが、もはやミイの姿を思い出せなかった。
 この次元空間の者が別次元に行く時、ケイの姿を投影するようになっていた。
 だから、このままでも別にいいかとの思いで、今にいたる。


「な、なんでここにおまえ達が!」
 マイ達ともうひとりのケイネシアがいる簡易他次元空間に来たケイネシアは、ソウルブレイドを展開して剣を作る。
「待って、僕達は敵じゃない!」
 マイの叫びも、ケイネシアには届かない。

 マイだけならまだしも、そこにはユアとメドーラもいる。
 野蛮で戦闘狂なユアとメドーラが。
 そしてあろう事か、三人の戦闘機がここまで攻め入っている!
 それも、パートナーのサポートAIを引き連れて!
 しかも、ここにあるはずの物が無くなっている。
 それは、マザーコンピュータミイの現状を映したフォログラフ!
 今ここにあるのは、フォログラフの土台となる簡易コンピュータだけだった。

「おまえ達、よくも!」
 ケイネシアはそのままメドーラに襲いかかる!
 この三人の中で、メドーラが一番脅威だったからだ。
 ユアは、ソウルブレイド戦に特化しただけの召喚者。
 それを崩す事は、容易に出来る。
 だけどメドーラは違う。
 戦闘機での戦場以外で見た事はないと言われるが、それは姿を見せなかっただけの事。
 実際は様々な舞台で暗躍していた。
 そしてゴンゴル三姉妹の名は、召喚前から有名だった。
 犯罪者列伝を紐解けば、歴史の片隅にその名を見る事が出来る。

「待ちなさい!」
 もうひとりのケイネシアは、ソウルブレイドを鞭に展開し、ケイネシアの剣を絡め取る。
 そして鞭をたぐり、一歩一歩近づき、ケイネシアとメドーラとの中間で止まる。
「この者達は、敵ではありません。剣を納めなさい、ケイ。」
 もうひとりのケイネシアは、鞭に展開したソウルブレイドをクダ状に戻す。
「気でも狂ったか、ミイ。そこをどけ!」
 ケイと呼ばれたケイネシアは、ソウルブレイドを剣状のまま、元に戻さない。

「どきません!」
 ミイと呼ばれたケイネシアも、そこは頑としてゆずらない。
「くそったれ、おまえのせいか。」
 ケイと呼ばれたケイネシアは、マイをにらむ。
「え、僕?」
 突然話しを振られて、面くらうマイ。

「おまえが来たせいで、ミイが狂っちまった。
 この大事な時に!」
 ケイと呼ばれたケイネシアは、斬りつける矛先をマイに変える!
「させません!」
 ケイネシアの攻撃は、メドーラが防ぐ。
 ユアに作ってもらった鉄パイプで。

「もうやめてよ、なんで争うの!」
 メドーラと鍔迫り合いをしながらこちらをにらむケイネシアを見て、マイも思わず叫ぶ。
「なんで争う?
 そんな事言うなら、もっと早くに来てほしかったぜ。」
 ケイネシアはうつむいてつぶやく。

「ええ、もう全ては終わったのです。」
「なに?」

 もうひとりの、ミイと呼ばれたケイネシアの言葉に、うつむいた方のケイネシアは顔を上げる。
 ミイと呼ばれたケイネシアは、もうひとりのケイネシアの顔を、右手でわしずかみ。
 そのまま床に叩きつける。

「ぐは、なぜおまえが、こんな事を。」
 顔をわしづかみされ、床に叩きつけられたまま、もうひとりのケイネシアをにらむ。
「言ったでしょう。もう全ては終わったのです。」
「くそ。」
 わしづかみされた右手を、両手ではぎとろうとするが、びくともしない。
 そう、ふたりのケイネシアは性能が違う。

 ケイと呼ばれたケイネシアは、アバター体である。いわば、生身の人間に近い。
 対してミイと呼ばれたケイネシアは、マザーコンピュータミイの別動体。こちらはアンドロイドに近い。
 アンドロイドはこの千年間で七代を数えたが、アバター体は一代目である。
 それがブルードラゴンの加護である。
 だが当の本人には、そんな千年前の記憶など、とうに無かった。

「くそ。今ここで復讐を遂げる事こそ、ミイの本懐のはず。
 なのに、なぜおまえは邪魔をする。」
 ケイと呼ばれるケイネシアは、顔面をつかむ手を、どうにかしようともがく。
 だが、どうにもならない。
「くそ。あいつらか。昔の仲間に会って、心変わりでもしたのかよ。」

 ミイと呼ばれるケイネシアは、もうひとりのケイネシアの顔面をわしずかみにしたまま、その身体を引きおこす。
「ミイの意思なんて、既に無いんだよ。」
「なに?」
 ケイネシアの耳元でつぶやくと、顔面をわしづかみにしていた右手を離し、その右手でお腹にパンチをぶちこむ!

「コアブレイカーが使われる。
 もう、おしまいなんだよ。」
 気を失いかけた耳元に、この言葉をつぶやいた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

性転換タイムマシーン

廣瀬純一
SF
バグで性転換してしまうタイムマシーンの話

TS調教施設 ~敵国に捕らえられ女体化ナノマシンで快楽調教されました~

エルトリア
SF
世界有数の大国ロタール連邦の軍人アルフ・エーベルバッハ。彼は敵国アウライ帝国との戦争で数え切れぬ武勲をあげ、僅か四年で少佐にまで昇進し、救国の英雄となる道を歩んでいた。 しかし、所属している基地が突如大規模な攻撃を受け、捕虜になったことにより、アルフの人生は一変する。 「さっさと殺すことだな」 そう鋭く静かに言い放った彼に待ち受けていたものは死よりも残酷で屈辱的な扱いだった。 「こ、これは。私の身体なのか…!?」 ナノマシンによる肉体改造によりアルフの身体は年端もいかない少女へと変容してしまう。 怒りに震えるアルフ。調教師と呼ばれる男はそれを見ながら言い放つ。 「お前は食事ではなく精液でしか栄養を摂取出来ない身体になったんだよ」 こうしてアルフは089という囚人番号を与えられ、雌奴隷として調教される第二の人生を歩み始めた。 ※個人制作でコミカライズ版を配信しました。作品下部バナーでご検索ください!

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

異世界転移した先で女の子と入れ替わった!?

灰色のネズミ
ファンタジー
現代に生きる少年は勇者として異世界に召喚されたが、誰も予想できなかった奇跡によって異世界の女の子と入れ替わってしまった。勇者として賛美される元少女……戻りたい少年は元の自分に近づくために、頑張る話。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ずっと女の子になりたかった 男の娘の私

ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。 ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。 そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

処理中です...