未来世界に戦争する為に召喚されました

あさぼらけex

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異次元からの侵略者

第133話 千年も経ってりゃ、最早別人

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 マイとユアとメドーラの三人の目の前に現れた、ケイネシア。
 ケイネシアは自分を、サポートAIミイの意志を継ぐ者と呼称した。
 そしてケイネシアは、マザーコンピュータミイの外部端末だった。
 サポートAIであったミイは、自らの経年劣化を感じ、新たな身体を作り、記憶データを引き継ぐ必要があった。
 虐待される者達を見続けるブルードラゴンは、いつしか暴走する。
 それをふせげるのは、マイだけだろう。
 ミイは、マイと再会するその時まで、自らの意志を存続させる必要性を感じていた。
 あり合わせの材料で、大型の円筒形のマザーコンピュータを作った。
 そして、自由に動けるように、外部端末としてのアバター体も必要だった。
 円筒形のコンピュータは、修理や改善を加えて、千年間もたせた。
 だけど動き回るアバター体は、千年の間に六体も作り直した。
 今のケイネシアは、七代目であった。



 目の前のケイネシアは、ミイではない。
 ミイとは別の存在だと、マイは気がついた。

「そうだな。ミイの記憶データはあるが、ミイの人格はすでに消えている。」
 ケイネシアは、マイの言葉を肯定する。
「そう、なんだ。」
 自分の言った事とはいえ、マイはミイにはもう会えない事を、悲しく思う。

「そりゃあ、千年も経ってればなあ。
 最初の二代目くらいまでは、ミイの人格もあったかもしれんが、
 私は七代目だ。」
 ケイネシアは落ち込むマイをはげますように、明るく振る舞う。
「七代ですか。」
 ケイネシアの言葉に、メドーラが反応する。
 その七代と言う言葉の持つ意味に、想いをはせる。

「七代か。確か、このアバター体って、もって20年だっけ。」
 ユアも七代と言う言葉に反応する。
「いや、私の身体は、おまえ達の様なアバター体じゃない。
 メンテナンス次第で、500年はもつ。」
「嘘ですね。」
 ケイネシアの言葉を、メドーラは否定する。
「同一の魂の意思でいられるのは、それ程長くはありません。
 これは、人の魂だろうが、AIの人工知能だろうが、同じはずです。」

「だから、メンテナンス次第だって。」
 ケイネシアは、メドーラが言う一般論に例外がある事を告げる。
「私にも先代の意思は残ってるが、それ以前の世代は、記憶が残ってるだけだ。
 現にサポートAIミイの意識は、すでに消えている。」

 ケイネシアの言葉に、メドーラは思う。
 ケイネシアの言う世代とは、新しく作られた身体の事を言ってるのだろうか。
 それとも…。

「ま、今はそんな事、どうでもいいよな。」
 話しが横道にそれそうな事を、ユアが修正する。
「ケイネシア、おまえはミイの遺志を伝えるために、マイを待ってたんだろ。」
 ケイネシアはユアとメドーラを野蛮人と切り捨てる一方、マイとだけは、対等に渡り合おうとしていた。
 これは、邪魔なユアとメドーラのふたりを排除しようとしてた事から、うかがえる。

「そうだな。」
 ケイネシアはユアの言葉に、目を閉じてニヤける。
 サポートAIミイが、共に行動して感じた、マイ達三人の性質。
 それを長年分析してた訳だが、実際会ってみて、初めて分かる事もある。
「ミイは、マイだけに伝えたかったみたいだけど。」
 ケイネシアは目を開くと、マイに視線を向ける。
「私は、おまえ達にも伝えたい。」
 ケイネシアはその視線を、ユア、メドーラにも向ける。

「ブルードラゴンを、止めてくれ。」
 ケイネシアは頭を下げる。

「ブルードラゴン。」
 マイはその言葉をつぶやく。
 千年前、ケイが依代になったブルードラゴン。
 そして、ケイの意識は、すでにない。
 そしてマイは思い出す。
 グリーンドラゴンであるナツキにも、同じ事を言われた事を。

「でも、どうやって。」
 ブルードラゴンを止めろと言われても、どうしていいか分からない。
 これは、書いてるヤツにも分からない。
「もうひとりのケイネシア。
 あちらが、ブルードラゴンの意志を継ぐ者って事でしたわね。」
 メドーラは、出会った頃にケイネシアが言っていた事を思い出す。

「ああ、そうだ。」
 メドーラの質問に、ケイネシアが答える。
「ついでに教えといておくが、あっちのケイネシアのアバター体には、ローランの孫の双子の姉弟の魂が、受け継がれている。
 もっとも、ふたりの意識は、すでにないがね。」

「あれ、でも。」
 マイは、もうひとりのケイネシアに出会った頃を思い出す。
「ローランの事も、ブルードラゴンの事も、知らないって言ってたよ。」
「そりゃあ、元はひとの魂だからな。
 千年も前の事なんて、覚えてないよ。
 自分の名前すら、覚えてない。」
 マイの疑問に、ケイネシアが答える。

 あの当時は、まだ設定が固まっていなかったとか、今思いついたからとか、そう言う事ではない。
 AIであるミイの記憶データは、物理的な欠損が無い限り、無くなる事はない。
 しかし、人の記憶は違う。
 歳をとれば、昨日の晩飯すら覚えていない。
 まして、千年前の事なんて、詳細に覚えている方が、おかしい。
 だが、記憶は残らなくても、強い意志は残る。
 それが、虐げられた者の哀しみや怒りといった感情だった。

「なるほど、あの変態の方を、どうにかすればいいんだな。」
 もうひとりのケイネシアと聞いて、ユアももうひとりのケイネシアの事を思い出す。
「変態?」
 マイはユアに聞き返す。
「あいつ、私の、その、む、胸を、その、」
 ユアは口ごもる。
「え、胸がどったの?」
 マイは聞き返すが、ユアは言葉が出ない。
「ユアお姉さまの胸を、もみもみしてましたわ。」
 ユアに代わって、メドーラが答える。
「えー、僕ももみもみした事ないのに?」
「ちょ、ちょっとマイ。あんたももみたいの?」
 ユアは両腕で胸を覆い隠す。
「だって以前、僕の胸もんだじゃん。」

「なんですって。」
 メドーラは怒りの感情がこみ上げるままに、ユアをにらむ。
「あ、あれは、友情のスキンシップってヤツじゃない。」
 それは、星間レース直後の休暇中のバカンスでの出来事だった。
 本作品には未収録だが、これがアニメ化した時の水着回に、そのシーンが出てくるだろう。
「僕もしたいなぁ、友情のスキンシップ。」
 マイは両手を前に突き出して、にぎにぎする。
「や、やめてよ、マイ。」
 ユアは身体をねじらせ、マイのにぎにぎから逃げる。

「今は、こんな事してる場合じゃないでしょ。
 あ、後でもませてあげるから!」
 今にも泣き出しそうなユア。
 それを見て、マイも正気に戻る。
「あ、うん。なんかごめん。」
 そんなふたりを見て、メドーラは思う。
 胸をもまれたのは、立体映像の偽者のユアだったような気がする。
 でも、マイお姉さまのお胸を、恐れ多くももんだみたいなので、黙っておいた。

「あれ、でも。」
 マイは、またもや、もうひとりのケイネシアの事を思い出す。
「確か、総攻撃の準備が出来たとかって、消えたんだよね。
 あの連絡したのが、あなたじゃなかったっけ?」
 マイは目の前のケイネシアに、視線を向ける。

「その準備をしてるのは、マザーコンピュータのミイだよ。
 私はただの、連絡係にすぎない。」
 ケイネシアは、自分の関与を否定する。
「そうですか、あなたをどうにかすればと思ったのですが、違いましたか。」
 メドーラは、鉄パイプに展開したソウルブレイドを、ケイネシアに向かって振りかぶっていた。
 倒れた状態では、頭目がけてぶん投げるしかない。
 メドーラはそのタイミングを図っている。
「わ、ダメだよメドーラ。」
 マイに注意され、メドーラは鉄パイプをそのまま下にする。

 ブルードラゴンをどうにかしたい現状。
 それには、マザーコンピュータミイも、どうにかする必要がありそうだった。
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