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異次元からの侵略者

第120話 甲冑兵器

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 激戦を極めた、北部戦線。
 その北部戦線の中心に位置する、衛星基地ソゴムの内部には、侵略者のいる次元空間に通じる次元の扉があった。
 そこから侵略者のいる次元空間に飛び込んだ、マイとユアとメドーラの三人。
 三人は、こちらの情報を得るため、第五作戦本部に潜入する!
 そして、三人はまだ知らない。
 ふたつの次元空間をふさぐため、衛星基地ソゴムごと、破壊されようとしてる事を。


 第五作戦本部に突入したマイは、思わず身構える。
 正面入り口の奥には、無数の甲冑兵器があったからだ。

 全長二メートルくらいの、甲冑型兵器。
 この甲冑は、着込むと言うべきか、乗り込むと言うべきか。
 マイには判断つかなかった。
 見た感じ、マイが今装備している強化アシストパーツのように、身体能力を格段に向上させる兵器だと思われる。
 そして、甲冑としての防御力も、当然備えている。

 数十台ある、この甲冑型兵器。
 おそらく全て無人で、誰も乗っていないと思われる。
 だが、一台くらい、あるかもしれない。
 人が乗っている甲冑型兵器が。

 マイが憶測で足止めくらってる所に、ユアとメドーラが追いついた。
 ふたりもマイと同様、甲冑兵器に驚く。
 しかしその驚きは、マイとは違い、この甲冑兵器を知るがゆえの驚きだった。

「これは、霊源甲冑。」
 ユアは、この甲冑兵器の名を口にする。
「れいげんかっちゅう?」
 マイは思わず復唱してしまう。

 霊源甲冑。
 ここでいつもなら、この霊源甲冑の説明が、サポートAIからの説明の体で入るのだが、今はサポートAIとはつながっていない。
 つまり、ユアが説明するしかない。

「特殊な霊力を持つ者のみが、操れる特別な甲冑よ。
 原理は私達の強化アシストパーツと同じなんだけど、身体能力を無理矢理引き出す強化アシストパーツは、短時間しか使えないわ。
 その弱点を、霊力の作用で補ったのが、この霊源甲冑よ。
 でも、乗れる霊力を持つ者が居なくなって、西暦6000年には、姿を消したはずよ。
 特殊な霊力に代わる動力源が、見つからなかったから。
 これがここに存在するって事は、やっぱり私達の次元空間とは、違うのね。」

 なっげー。
 説明文を台詞にすると、こうなるのか。
 これ、一気に喋るの?
 途中、表情がどうとか、マイがあいずちとかを挟むとか、そうならない?
 でもその場合、長ったらしくなるから、やめとこ。
 これを書いてるヤツの文才では、これが精一杯なんだよ。

「確かに。人が乗り込んでるのが混じってても、おかしくないわね。」
 ユアも、マイが動けないでいる理由が分かる。
 これが普通の甲冑兵器なら、手近の一台に乗り込んで、そのまま進めばいい。
 だが、並の人間には動かす事さえ出来ない。
 これは、特殊な霊力を持つ魂を召喚しても、動かす事は出来ない。
 特殊な霊力とは、精神と肉体に宿る。
 召喚者のアバター体では、その肉体を再現出来ないのだ。

「ならば、確かめればいいだけの事ですわ。」
「そんな事出来るの?めど、メドーラ?」
 メドーラの言葉に、マイとユアは、メドーラの方を振り返る。
 メドーラの表情は、険しかった。
 マイもユアも、一瞬、誰だか分からなかった。
 それほど、普段のメドーラから、かけ離れていた。

 そんなふたりの視線に気づくメドーラだったが、表情を戻す事が出来なかった。
 霊源甲冑に対して、それだけ辛い経験が、メドーラにはあったのだ。

 メドーラは、ソウルブレイドのクダを、左右の手に一本づつ持つ。
 右手のソウルブレイドは、ブーメランに展開する。
 そして左手のソウルブレイドは、手甲に展開する。

「マイお姉さま、ユアお姉さま、しばらくの間、耳をふさいで下さい。」
 メドーラの言葉に、マイもユアも、両耳に両手を当てる。

 それ見て、メドーラはブーメランで、左手の手甲を叩く。

 キイイイイーーーン。
 甲高い金属音が、鳴り響く。
 そしてメドーラは、ブーメランを投げる。

 ブーメランは、目前に立ち並ぶ霊源甲冑の群れの上を、弧を描いて戻ってくる。
 戻ってきたブーメランをつかむと、ブーメランを手甲に当てがう。
 これで、甲高い金属音が消えた。

「どうやら、全て無人のようですわ。」
 メドーラはブーメランと手甲を、元のソウルブレイドのクダに戻す。
「今ので、分かるの?」
 マイは耳元をまだ抑えながら、メドーラに尋ねる。
 マイもユアも、金属音をおさまっても、まだ少し気分が悪い。
「ええ、霊源甲冑の中で今の音波をあびたら、ただではすみませんですわ。」
 メドーラは怪しげに、ニタリと笑う。
 いつものメドーラとは程遠いが、ここで霊源甲冑を目の当たりにした時より、さっぱりしてみえる。

「ならば、急ぎましょう。」
 金属音のダメージが抜けきらないユアは、霊源甲冑の並べられた奥を、指差す。
 そこには、この部屋を出るための扉があった。
 立ち並ぶ霊源甲冑の脇を抜けて、先を急ぐべきだ。

「おふたりは、先に行ってて下さい。私は、こいつらをぶっ壊してから、参ります。」
 メドーラはソウルブレイドのクダを、大きなグローブに変えて、目の前の霊源甲冑をにらむ。
「ちょ、ちょっとメドーラ。私達にそんな時間的余裕は、ないはずよ。
 そりゃあ、後方の憂いを断つべきだけど、乗り手がいるとも思えないよ。」
 ユアは、先を急ぐ事を主張する。
 だがそれは、今のメドーラには、到底受け入れられない事だった。
 メドーラは険しい表情で、ユアにらむ。
「どうしちゃったのよ、メドーラ。私が意地でも連れて行こうか?」
 ユアもメドーラをにらみ返し、ソウルブレイドのクダを手にする。

「そうね、僕達はこんな所で立ち止まっていられないはず。」
 マイは、にらみあうふたりを無視して、この部屋の左側の壁まで歩く。
 マイはソウルブレイドのクダを展開し、トンファーにする。
「邪魔な鎧どもだけ、壊して進めばいいのよ!」
 マイは右手のトンファーで、この部屋の出口の扉を指し示す。

「ふふっ。」
 マイの言葉を聞いて、メドーラもほくそえむ。
「その通りですわね、マイお姉さま。」
 メドーラはマイとは反対側の、部屋の右側の壁へと歩く。
 メドーラは壁ぎわで立ち止まると、ユアの方を振り返る。

「分かったよ、私もつきあうよ!」
 ユアはソウルブレイドを展開し、剣にする。
「行くよ、ふたりとも!」
 ユアの合図で、三人は突っ込む。

 マイもメドーラも、強化アシストパーツのチカラを利用して、霊源甲冑を叩き壊して進む。
 そんなふたりを見て、ユアはため息をつく。
「ふたりとも、分かってないわね。
 霊源甲冑なんて、霊力増幅装置を壊せば、動かなくなるのに。」
 ユアは霊源甲冑の背中に装備されている、その霊力増幅装置に剣を突き刺してまわる。

 ユアは、いちいち振りむいて、霊源甲冑の背中に剣を突き刺すのも面倒くさく感じるが、派手にぶっ壊して進むマイとメドーラの手前、自分だけ壊さずに進むのも、しのびなかった。
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