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異次元からの侵略者
第116話 さて、どうしよう
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これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
衛星基地ソゴムの中心近くに起きた、次元の歪み。
北部戦線での戦闘開始までに、安全宙域まで脱出する事が出来ないマイとユアとメドーラの三人。
三人は、次元の歪みを切り裂き、別次元に飛び込んだ。
飛び込んだその先で、戦闘経験の乏しいマイに行動により、三人は足止めをくらう事になる。
そして、異次元からの侵略者が使う出入り口をふさぐため、衛星基地ソゴムが破壊される事を、マイ達はまだ知らない。
「これから、どうしよっか。」
人質になってしまったマイ。
マイを人質にとったケイを、逆に人質にしたマイ達三人。
マイ達三人の周りには、ケイの姿をした人物が、複数人集まっている。
その数は、すでに六人。
騒ぎを聞きつけ、野次馬が集まるように、ワラワラと人数を増やす。
遠くのざわめきを察するに、軽く五十人は越えそうだ。
その野次馬達は、どれもケイの姿をしている。
「降参、する?それとも、逃げる?」
周りを見渡し、ユアがゆっくりと口にする。
「私達の作戦は、失敗のようですね。」
メドーラも、ユアと同じ分析をする。
この人数を相手にしても、勝ち目はない。
なんとか虚を突ければ、逃げきれるかもしれない。
周りの野次馬に、敵意が無さそうなのは幸いだった。
お陰で作戦会議もスムーズに出来る。
言語も、どうやら違うらしい。
人質にとったケイに似た人物の話す言葉も、決まり文句というか、定型文にしか対応出来ない感じだった。
元々、こちらの次元空間にきたら、暴れ回るつもりだった。
総攻撃してくる戦力を、少しでも割くために。
だけど、こちらの次元空間が、普通に元居た次元空間と同様だったため、少し戸惑った。
その迷いが、致命的だった。
「作戦って、何よ?」
ユアとメドーラが深刻な顔をしている横で、マイが素朴な疑問をぶつけてくる。
「へ?」
これにはユアもメドーラも、言葉が出ない。
「マイ、あんたねえ。」
ユアはこめかみ辺りをひくひくさせる。
「そう言えば、言葉にはしませんでしたわね。」
メドーラはここに来た経緯を振り返る。
そう、今回初めて作戦という物を書いた。
今までそんなもん、これを書いてるヤツの頭にも、無かったのだ!
「でも、分かりそうなもんじゃない?
ここに来る時点で、やる事はひとつでしょ。」
言われなくても分かれよと、ユアは思う。
ごめん、書いてるヤツも、分からなかったよ。
「でも、ケイの姿をしてる人を攻撃するのはちょっと。」
マイもこれ以上ユアを怒らせないよう、恐る恐る発言する。
「あんたねえ。」
ユアも怒りを通り越し、少し呆れてしまう。
「ちょっと前まで、対峙してたでしょ、こいつと。忘れたの?」
ユアは人質のケイの頭に当てた拳銃を、ぐりぐりする。
「ひっ。」
人質のケイは恐怖のあまり、握りしめていた拳銃を落としてしまう。
「おっと。」
マイはケイが拳銃を持っていた右手の手首を握りしめていたが、一度手首を離し、その手で落ちる拳銃をつかむ。
武器を失ったケイは、震えだす。
このケイの恐怖の感情は、野次馬のケイ達にも伝染する。
いつの間にか十人をこえていた野次馬のケイ達は、おどおどと後退る。
「ねえ、この人、あの時のケイとは違うみたいよ?」
マイは手にした拳銃を、普通に人質のケイに返す。
「ひっ。」
人質のケイは、受け取らない。
頭に拳銃を突きつけられている今、差し出された拳銃を手にする事は、その時点で殺されるだろう。
何の敵意もなく、普通に接するマイ。
敵意むき出しで威嚇するユア。
そして、表情からは感情をうかがい知る事の出来ないメドーラ。
三者三様、三人居て各々違う事が、この場のケイ達の恐怖心を、さらにかきたてる。
マイは人質のケイの右手に、拳銃を握らせる。
「はい、あなたのでしょ、これ。」
「ひっ。」
だが人質のケイは、拳銃を握ろうとはしない!
五本の指をしっかり開き、手のひらに置かれた拳銃を握らない!
そう、頭に拳銃を突きつけられている今、この拳銃を手にする事は、死を意味する!
「もう、訳分からない意地は張らないの!」
マイは、ケイの開かれた五本の指を無理やり閉じて、拳銃を握らせる。
その瞬間、恐怖の感情が極限に達した人質のケイは、気絶した。
同時に、野次馬のケイ達も、われ先に逃げ出した。
「よっぽど眠かったのかな?」
気絶してよりかかってくるケイを支えながら、マイはつぶやく。
「はあ、そんなはずないでしょ。」
ユアは拳銃をソウルブレイドのクダに戻すと、右脚の太ももに装着する。
「どうやら、非戦闘員の一般人みたいですね。」
メドーラも円盾をソウルブレイドのクダに戻し、ユアと同じく、右脚の太ももに装着する。
「次元の扉を越えたこっちも衛星基地ソゴムと同じなら、一般人もいるか。」
ユアはメドーラの意見に同意する。
マイ達の次元空間に存在する衛星基地ソゴムは、地球の月の四分の一の大きさで、人口はおよそ二百万。
軍人の家族や関係者。そして、彼らの生活を支える多くの人で成り立っていた。
それは、一つの街、一つの国家と言っても間違いなかった。
「ここもソゴムと同じなら、軍事拠点があるはずですわ。
まずは、そこを目指しましょう。」
メドーラがこれからの指針を提案する。
「そうね、そこなら詳しい情報が手に入るかもね。」
ユアは右脚の太ももに装着されたソウルブレイドのクダに、手をそえる。
「ちょっと、物騒な事考えてるんじゃないよね。」
気絶したケイを公園のベンチに休ませて、マイは戻ってきた。
「あ?」
マイの発言にユアは、カチンとくる。
ここは敵地である。
それも、自分達の次元空間とは、別の次元空間である。
基本、出会ったヤツは殺すべき敵である。
それなのに、ケイの姿をしてるというだけで、殺そうとはしないマイ。
そもそもケイは、千年前にタイムスリップさせられ、既にこの世にはいない。
つまり、ケイの姿をしていても、ケイ本人ではない。
ユアはマイに対しての、イライラがつのる!
「友好的な人種なら、いいんですけどね。」
一触即発なユアとマイに、メドーラは水をさす。
「ソゴムと同じなら、第五作戦本部が近いです。」
メドーラはオフロードバイクのエンジンをふかす。
「そうね、急ぎましょう。」
ユアもオフロードバイクのエンジンをふかす。
そして、マイをにらむ。
「北部戦線の惨状を見て、あなたは何も思わないの?
マイ、あなたは甘すぎるわ。絶対命を落とすわよ。」
マイは何も、言い返せなかった。
衛星基地ソゴムの中心近くに起きた、次元の歪み。
北部戦線での戦闘開始までに、安全宙域まで脱出する事が出来ないマイとユアとメドーラの三人。
三人は、次元の歪みを切り裂き、別次元に飛び込んだ。
飛び込んだその先で、戦闘経験の乏しいマイに行動により、三人は足止めをくらう事になる。
そして、異次元からの侵略者が使う出入り口をふさぐため、衛星基地ソゴムが破壊される事を、マイ達はまだ知らない。
「これから、どうしよっか。」
人質になってしまったマイ。
マイを人質にとったケイを、逆に人質にしたマイ達三人。
マイ達三人の周りには、ケイの姿をした人物が、複数人集まっている。
その数は、すでに六人。
騒ぎを聞きつけ、野次馬が集まるように、ワラワラと人数を増やす。
遠くのざわめきを察するに、軽く五十人は越えそうだ。
その野次馬達は、どれもケイの姿をしている。
「降参、する?それとも、逃げる?」
周りを見渡し、ユアがゆっくりと口にする。
「私達の作戦は、失敗のようですね。」
メドーラも、ユアと同じ分析をする。
この人数を相手にしても、勝ち目はない。
なんとか虚を突ければ、逃げきれるかもしれない。
周りの野次馬に、敵意が無さそうなのは幸いだった。
お陰で作戦会議もスムーズに出来る。
言語も、どうやら違うらしい。
人質にとったケイに似た人物の話す言葉も、決まり文句というか、定型文にしか対応出来ない感じだった。
元々、こちらの次元空間にきたら、暴れ回るつもりだった。
総攻撃してくる戦力を、少しでも割くために。
だけど、こちらの次元空間が、普通に元居た次元空間と同様だったため、少し戸惑った。
その迷いが、致命的だった。
「作戦って、何よ?」
ユアとメドーラが深刻な顔をしている横で、マイが素朴な疑問をぶつけてくる。
「へ?」
これにはユアもメドーラも、言葉が出ない。
「マイ、あんたねえ。」
ユアはこめかみ辺りをひくひくさせる。
「そう言えば、言葉にはしませんでしたわね。」
メドーラはここに来た経緯を振り返る。
そう、今回初めて作戦という物を書いた。
今までそんなもん、これを書いてるヤツの頭にも、無かったのだ!
「でも、分かりそうなもんじゃない?
ここに来る時点で、やる事はひとつでしょ。」
言われなくても分かれよと、ユアは思う。
ごめん、書いてるヤツも、分からなかったよ。
「でも、ケイの姿をしてる人を攻撃するのはちょっと。」
マイもこれ以上ユアを怒らせないよう、恐る恐る発言する。
「あんたねえ。」
ユアも怒りを通り越し、少し呆れてしまう。
「ちょっと前まで、対峙してたでしょ、こいつと。忘れたの?」
ユアは人質のケイの頭に当てた拳銃を、ぐりぐりする。
「ひっ。」
人質のケイは恐怖のあまり、握りしめていた拳銃を落としてしまう。
「おっと。」
マイはケイが拳銃を持っていた右手の手首を握りしめていたが、一度手首を離し、その手で落ちる拳銃をつかむ。
武器を失ったケイは、震えだす。
このケイの恐怖の感情は、野次馬のケイ達にも伝染する。
いつの間にか十人をこえていた野次馬のケイ達は、おどおどと後退る。
「ねえ、この人、あの時のケイとは違うみたいよ?」
マイは手にした拳銃を、普通に人質のケイに返す。
「ひっ。」
人質のケイは、受け取らない。
頭に拳銃を突きつけられている今、差し出された拳銃を手にする事は、その時点で殺されるだろう。
何の敵意もなく、普通に接するマイ。
敵意むき出しで威嚇するユア。
そして、表情からは感情をうかがい知る事の出来ないメドーラ。
三者三様、三人居て各々違う事が、この場のケイ達の恐怖心を、さらにかきたてる。
マイは人質のケイの右手に、拳銃を握らせる。
「はい、あなたのでしょ、これ。」
「ひっ。」
だが人質のケイは、拳銃を握ろうとはしない!
五本の指をしっかり開き、手のひらに置かれた拳銃を握らない!
そう、頭に拳銃を突きつけられている今、この拳銃を手にする事は、死を意味する!
「もう、訳分からない意地は張らないの!」
マイは、ケイの開かれた五本の指を無理やり閉じて、拳銃を握らせる。
その瞬間、恐怖の感情が極限に達した人質のケイは、気絶した。
同時に、野次馬のケイ達も、われ先に逃げ出した。
「よっぽど眠かったのかな?」
気絶してよりかかってくるケイを支えながら、マイはつぶやく。
「はあ、そんなはずないでしょ。」
ユアは拳銃をソウルブレイドのクダに戻すと、右脚の太ももに装着する。
「どうやら、非戦闘員の一般人みたいですね。」
メドーラも円盾をソウルブレイドのクダに戻し、ユアと同じく、右脚の太ももに装着する。
「次元の扉を越えたこっちも衛星基地ソゴムと同じなら、一般人もいるか。」
ユアはメドーラの意見に同意する。
マイ達の次元空間に存在する衛星基地ソゴムは、地球の月の四分の一の大きさで、人口はおよそ二百万。
軍人の家族や関係者。そして、彼らの生活を支える多くの人で成り立っていた。
それは、一つの街、一つの国家と言っても間違いなかった。
「ここもソゴムと同じなら、軍事拠点があるはずですわ。
まずは、そこを目指しましょう。」
メドーラがこれからの指針を提案する。
「そうね、そこなら詳しい情報が手に入るかもね。」
ユアは右脚の太ももに装着されたソウルブレイドのクダに、手をそえる。
「ちょっと、物騒な事考えてるんじゃないよね。」
気絶したケイを公園のベンチに休ませて、マイは戻ってきた。
「あ?」
マイの発言にユアは、カチンとくる。
ここは敵地である。
それも、自分達の次元空間とは、別の次元空間である。
基本、出会ったヤツは殺すべき敵である。
それなのに、ケイの姿をしてるというだけで、殺そうとはしないマイ。
そもそもケイは、千年前にタイムスリップさせられ、既にこの世にはいない。
つまり、ケイの姿をしていても、ケイ本人ではない。
ユアはマイに対しての、イライラがつのる!
「友好的な人種なら、いいんですけどね。」
一触即発なユアとマイに、メドーラは水をさす。
「ソゴムと同じなら、第五作戦本部が近いです。」
メドーラはオフロードバイクのエンジンをふかす。
「そうね、急ぎましょう。」
ユアもオフロードバイクのエンジンをふかす。
そして、マイをにらむ。
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