未来世界に戦争する為に召喚されました

あさぼらけex

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異次元からの侵略者

第114話 絶たれる退路

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 北部戦線の異次元からの侵略者が、次の総攻撃をしかけるまで16時間をきった。
 この総攻撃から逃げられないマイとユアとメドーラは、衛星基地ソゴムの中心近くにある、次元の歪みから、異次元へと突入する。
 この異次元との出入り口は、惑星破壊兵器コアブレイカーの標的になっていた。
 衛星基地ソゴムごと、この出入り口を潰す作戦であった。


「コアブレイカーは、次の戦闘開始にあわせて使うつもりだった。」
 ジョーは声を絞り出す。
 北部戦線の戦闘行為は、四日間続き、その後三日間休戦状態になる。
 次の戦闘開始のサイクルにあわせ、コアブレイカーをぶち込む手はずだった。

 過去、この世に存在したコアブレイカーは、全て解体破壊されている。
 それを今、新しく作り上げる。
 この時代にはロストテクノロジーであるコアブレイカーの作製は、困難だった。
 それを次の戦闘開始に、どうにか間に合わせた。
 だが今度の総攻撃は、いつものサイクルより、六時間早い。
 コアブレイカーの使用が、六時間遅れるのだ。
 アイの記憶から読み取ったこの情報は、ジョーの円柱状のロボットを通じ、すでに中央司令本部には伝わっている。

「コアブレイカーなんて使ったら、マイ達はどうなるのです?」
 ジョーに問うアイの声が震える。
 ジョーは時間的に、コアブレイカーが総攻撃に間に合わない事を、気にしてるようにみえる。
 マイ達の事など、何とも思ってないようにみえる。

「なんですぐに逃さなかったんだよ。」
 アイの問いかけに対するジョーの答えは、これだった。
「それは。」
 アイの言葉がつまる。
 マイの戦闘機のワープ航法エンジンがオーバーヒートしていて、総攻撃開始の時間までに、逃げきれない。
 この事は、ジョーもアイの記憶を通じて知ってるはずだ。
 だからマイ達は、衛星基地ソゴムの奥の次元の歪みに、活路を求めた。

「すぐに逃げていれば。」
「逃げきれるわけないでしょ!」
 ジョーの愚痴とも取れる発言に、アイはきれる。
「逃げきれないから、マイ達は次元の歪みに行ったのですよ!」
 アイの言葉に、ジョーは返す言葉もない。

「マイ達を見殺しにするのですか。
 すぐにコアブレイカーの使用を中止して下さい!」
 黙りこむジョーに、アイはまくしたてる。
「それは、出来ない。」
 実際コアブレイカー使用に関する決定権は、ジョーにはない。

 長引く北部戦線の戦闘で、戦線維持も厳しくなっている。
 だから異次元からの侵略者達の、出入り口と思われる空間を、ふさぐ必要があった。
 コアブレイカーの使用を、次の戦闘周期に遅らせる事は、最早不可能だった。

「マイが死んだら、シリウス構想はどうなるのです。」
 アイも、コアブレイカーを使わざるを得ない現状を、少しは理解しているつもりだ。
 だからこそ、マイが死んでしまった後の事が不安になる。
 マイの魂にたどり着くまで、実に九人も戦死者を出している。
 そんな犠牲を出してまで進められたのが、シリウス構想である。

「マイにとっては、幸せなのかもしれない。
 シリウス構想に関わるよりは。」
「なんですって?」

 ジョーの何気ないひと言が、アイの逆鱗にふれる。
 確かに、シリウス構想の全容を知る前に死ねる方が、幸せかもしれない。
 だったらなぜ、九人も戦死者を出してまで続けるのか!
 普通なら戦死状態のマインの魂を、無理矢理アバター体に留めるのはなぜか!
 そして何より、マイを死なせたくない!
「ジョー、あなた本気で言ってるのですか?」
 怒りの感情を押し殺して問うアイの瞳は、冷たく光る。
「マイの事を思うなら。」
 ジョーはアイから視線を逸らす。

 ぱしん。
 そんなジョーを、アイは思わず平手打ち。
「あなたって人は。」
 アイは、そのまま司令室を後にしようとする。
「待て、これからどうするつもりだ。」
 そんなアイを、ジョーは呼び止める。

「マイ達の戦闘機を、自動操縦でマイ達に届けます。」
 アイは、マイが助かる可能性の高い選択肢を選ぶ。
 ならば最初から、戦闘機で次元の歪みを目指すべきだったかもしれない。
 しかし戦闘機の場合、衛星基地の壁やら何やらを、壊しながら進む事になる。
 戦闘機が進む通路が崩壊しないよう、注意しながら進まなくてはならない。
 つまり、何時間かかるか、予想がつかない。
 少なくとも、オフロードバイクで向かうよりも、その数倍の時間はかかる。

「そっか。マイ達を頼む。」
 ジョーは司令室を後にするアイに、そう声をかける。
 アイは、少し怒りがこみあがる。
 シリウス構想に関わる前に死んだ方がいいと言うヤツが、何を頼むのか!
 そもそもこんな時期に、なぜマイ達を衛星基地ソゴムに向かわせたのか!

 ジョーと面と向かってたら、また平手打ちをかます所だった。
 だが、マイを一刻も早く助けたい今、わざわざそんな事に時間をさいてはいられなかった。

「マイ、なんでもっと早くに、召喚されなかったんだよ。」
 アイが去った司令室に、ひとり残されたジョー。
 彼のつぶやきは、涙声だった。
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