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異次元からの侵略者

第104話 再会!神武七龍神

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 この時代に召喚されたマイは、北部戦線の衛星基地ソゴムで苦戦中のメドーラとユアの元へと、急いでいた。
 衛星基地ソゴムは7500万光年と遠く、三度の長距離ワープを必要とした。
 その二度目のワープ時に、異変がおきた。
 激しい次元震と、青い竜の出現。
 二度目の長距離ワープからワープアウトしたマイは、なんと7500億光年もかなたにワープアウトしていた!
 これは青い竜の仕業だと思うマイであったが、現状、帰還する事も出来なくなった。


「アイ、謝っておいて。」
 マイはアイに呼びかけるが、返事は返ってこない。
 いつしか、ふたりの通信も切れていた。
 マイはそれに気づかないふりをして、続ける。
「メドーラとユアに、助けに行けなくて、ごめんって。
 リムにも、せっかく助けてくれたのに、無駄になってごめんって。
 マインにも、もう会えなくて、ごめんって。」
 いつしかマイの瞳から涙がこぼれる。
「アイ、ごめん。約束守れなくて。」

 マイはコックピットの操縦席に深く腰掛け、大空を見上げる。
 満天の星空だが、当然マイの知る星座など、どこにもなかった。
 今のマイには、やる事がない。
 この近くに人が住める星が有るか、脅威となる存在が近くに有るか。
 これらを調べる術を、この戦闘機は持ち合わせていない。
 そう言う事は全て、サポートAIの仕事だった。
 サポートAIにやってもらうので、この戦闘機には必要ない機能だった。

「ケイも、こんな気分だったのかな。」
 パートナーとも連絡を断たれ、知る人は誰もいない。
 千年前に飛ばされたケイも、こんな気持ちだったのだろうか。
 マイはふと、そう思った。

「そんな訳なかろう。」
 突然マイの頭に、声が響く。
「え、誰?」
 マイは辺りを見渡すが、何もない宇宙空間が広がっている。
 だが、まばたきの瞬間、何かが見える。
 マイは思いきって、目を閉じる。
 するとまぶたの裏に、緑の竜が見える。
「久しいの、マイ。」
 マイはその声に、覚えがあった。
「グリーンドラゴン?ナツキなの?」
 まぶたの裏の緑の竜は、惑星ドルフレアで見たグリーンドラゴンとは、大分形状が違った。
 しかしこの声は、グリーンドラゴンが化身した、ナツキの声だった。
「おお、覚えてくれとったか。」
「忘れる訳ないじゃん。」
 マイは久しぶりの再会に、涙する。
 その涙に、グリーンドラゴンの姿がゆらぐ。
 マイが慌てて涙をぬぐうと、グリーンドラゴンはナツキに姿を変えた。
 その姿は、ドルフレアで見たナツキより、幼く見えた。

「それより、すまぬの、マイ。」
「なんでナツキが謝るの?」
 突然のナツキの謝罪に、マイもめんくらう。
「我が友、ブルードラゴンが、おまえさんを、こんな所に飛ばしてしまっての。
 あやつは、おまえさんには戦ってほしくないのじゃよ。」
「え、えと。」
 マイはナツキの弁明に、またもやめんくらう。
「ブルードラゴンって、ケイでしょ?なんでケイが、こんな事を。」
 ナツキは首を振る。
「今のブルードラゴンに、ケイの人格は存在せん。
 だがの、心の奥底にしまった復讐心が、大きくなってしまったのじゃ。」
「あのケイが?」
 ケイは既に存在しない。
 それはマイもそう思ってた事なので、今は受け入れられる。
 だが、ケイに復讐心とか、そう言う負の感情は、マイの思うケイのイメージからかけ離れていた。
「負の感情が全く無い人間なんて、どこにも居ない。
 おまえさんも、おやつのプリンをメドーラに食べられて、ちょっと怒ってるじゃろ?」
「そ、そんな事、」
 ナツキの指摘に、マイも言葉がつまる。

「本来、我ら神武七龍神は、人とは関わらない存在なのじゃ。
 じゃが、我が友ブルードラゴンは、人の感情を取り込んでしまった。
 人に祭り上げられた今のブルードラゴンは、以前のブルードラゴンではないのじゃ。」
「そっか、北部戦線の侵略者って、ブルードラゴンだったのか。」
 ナツキの説明に、マイはそう納得する。

「厳密に言えば、違うのじゃが、まあ、大差ないかの。」
 ナツキも、マイの言葉を完全には否定しない。
「我が友ブルードラゴンは、おまえさんには、戦闘に参加してほしくないようじゃ。
 全てが終わったら、迎えに来るつもりじゃろ。
 たくう、ちゃんと説明くらいせんかい。」
「ま、待ってよ。」
 ナツキはブルードラゴンの心情を代弁するが、これにはマイにも、反論があった。
「今、メドーラとユアが、僕の助けを待ってるんだよ。ふたりを見殺しにしろっての?
 酷いよ、ケイ。」
 マイの瞳から涙があふれ、ナツキの姿がかき消される。
「なんと、あのふたりが待ってるとな。」
 ナツキはしばし考える。
「我ら神武七龍神は、人とは交わらぬ存在。
 ならば、我が友ブルードラゴンの過ちを、我が正そう。」

 マイが涙をぬぐって目を開けると、目の前に衛星基地ソゴムが見えた。
「マイよ、我が友ブルードラゴンの事を、許して欲しい。
 我が友ブルードラゴンの哀しみ、おまえさんに託…」
 マイの脳裏に響くナツキの声も、次第に薄れていった。
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