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異次元からの侵略者

第99話 違和感ある復活

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話。
 この時代の、激しい戦闘が行われた激戦の地、北部戦線。
 そこは人類が宇宙に飛び出して、初めての異次元の敵との遭遇だった。
 人類が宇宙に進出する過程で、知り合った宇宙人も存在する。
 しかし、それはどれも、似たような文明レベルと文化を持っていた。
 それが違う、知的生命体とのコンタクトは、初めてだった。
 いや、公式に記録されてないだけで、すでにコンタクトはあったのかもしれない。
 だが、今回の異次元からの侵略者は、初めて知る種族とも言える。
 その手がかりとなる人物に、ユアとメドーラが遭遇する。
 だが、その謎の人物に、手玉に取られてしまう。
 謎の人物は、マイが投影したユアとメドーラの立体映像に細工し、ふたりの足止めに使う。
 体力の尽きる事のない立体映像との戦いに、メドーラは封印した過去の記憶を掘り起こしてしまい、今は気を失っている。
 ユアもそんなメドーラを連れて、逃げる事しか出来なかった。


 アイツウはメディカルルームへ向かう。
「メドーラ、あんな過去があったなんて。」
 アイツウは前回探った、メドーラの壮絶な記憶を振り返る。

 ここでメドーラの過去話を三回くらいに分けてやるのが、最近のトレンドだろう。
 だが、みんなの読みたい物ではなく、描きたい物を書くのが、この作品である。
 つまり、感動の過去話なんて、この作品ではしない。
 べ、別に、考えるのが面倒だとか、そーゆーんじゃ、ないんだからね。

 メディカルルームに向かうアイツウの足取りは、次第にかけ足になる。
 一秒でも早く、メドーラを救いたい。
 そんな思いしかなかった。
 アイツウは息をきらせて、メディカルルームの扉を開く。
 アイツウがメディカルルームに入ると、マイは目を覚まして、上半身を起きあがらせていた。

「よかった、目が覚めたのですね、マイ。」
 息をきらせたアイツウは、もつれる足取りでマイのベッドに近づく。
 元々サポートAIは、走るようには作られていない。
 メドーラを救いたい一心で、身体を早く移動させる動かし方を模索した。
 アイツウはマイのベッドまでたどり着くと、倒れ込むように両手をベッドについた。
「お願い、メドーラとユアを助けて!
 すぐ北部戦線に来て!」
 アイツウはアイに視線を向けると、現状を共有する。
 ついでに、この部屋にいるミサにも、伝える。
 ミサは他の部屋にいるナコにも、伝える。
「そんな。」
 伝えられたアイは絶句するが、その情報を即座にマイにダウンロードする。
「そんな。」
 マイも、アイと同じ感情をいだく。

「ちゃんとお片付けしなくちゃ、ダメじゃない。」
「ごめんなさい。」
 アイはマイをしかり、マイはアイに謝る。
「謝るのは、私にじゃないでしょ。」
「うん。」
 アイは、マイをせかす。
 マイはベッドから離れる。

「えと、」
 アイツウはふたりのやりとりを見て、少しめんくらう。
「すぐに動いて大丈夫なんですか?
 急いでほしい私が言うのも、なんですが。」
 そんなアイツウに、アイは笑顔を向ける。
「大丈夫大丈夫。ただ意識が戻らないだけで、身体はなんともなかったんだから。
 今はよく眠ったから、元気百倍よ!」
 そう言ってマイのお尻をたたく。
「うん、これは僕の責任だからね、メドーラとユアは、僕が助けてみせるよ。」
 マイは叩かれたお尻をかきながら、アイツウに応える。

 マイはメディカルルームの入り口付近の壁によりかかるミサと、目が合う。
「ミサも、元気出してよ。僕が戻って来れたんだから、マインもきっと、大丈夫だよ。」
「ああ、そうだな。」
 ミサはニヤリと笑うと目を閉じてうつむく。
 ミサのパートナーであるマインは、巨大なメスシリンダーみたいなカプセルに入れられたまま、まだ意識は戻らない。
「じゃあ、行ってくるね。」
 マイは扉を開けながら、アイに手を振る。
 アイもにこりと微笑んで、手を振り返す。

 バタン。
 扉が閉まると同時に、アイの表情がくもる。
 ミサのニヤけたツラも、ひきしまる。
「え、どうしたの、ふたりとも。」
 アイとミサの変化に、アイツウが尋ねるのだが、アイは涙をこらえ、言葉が出ない。
 そんなアイの代わりに、ミサが答える。
「マイの魂は、まだ不安定な状態なんだ。」
「え?」
「いつ魂が抜けても、おかしくない。
 逆に、今魂が戻ってる事自体が、奇跡なんだ。」
「ぐす、ぐす。」
 ミサの説明に、アイは涙ぐむ。
「今度脱出用ポッドを使う事態になれば、マイの魂は耐えられないだろう。」
「うわーん。」
 アイは、マイが寝ていたベッドに、泣き崩れた。

「そんな。」
 アイツウは絶句する。
「アイ、つらいだろうが、この事はちゃんと、マイに伝えるんだぞ。」
「分かってるわよ!」
 アイは泣きながら、ミサの忠告に応える。

 ミサはそんなアイを見て、視線をマインに向ける。
 マインは巨大な筒状のカプセルに、薄緑色の液体の中に入っている。
 両膝を抱えて丸くなった体勢で、全裸になって、口元には呼吸用のマスクが付けられている。

 そんなマインを見て、ミサは思う。
 今のマインと、マイ。
 どちらが幸せなのだろう?
 いつ意識が戻るか分からないマインと、いつ死ぬか分からないマイ。
 ミサには答えが出なかった。
 そして、こうも思う。
 シリウス構想に必要なのは、マインとマイのふたりだけ。
 つまり、このふたりが無事なら、他の者は、どうなってもかまわない。
 ミサは思わず顔をしかめる。

 そして、こう思った。
「ジョー、もしもおまえがこんな考え方をするのなら、私達は黙っちゃいないからな!」
 ミサの脳裏に、ジョーの姿と、それに対峙するサポートAI達、自分とアイとアイツウとナコの姿が浮かぶ。
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