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異次元からの侵略者

第92話 北部戦線異常あり?

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話。
 この時代に召喚されたマイは、激戦の北部戦線への参戦を前に、同じ召喚者であるユアの特訓につきあった。
 この特訓の場に、敵とおぼしき巨大な戦艦が姿を現す。
 苦戦をしいられたマイ達であったが、マイは謎の声の導きにより、巨大戦艦を撃破する。
 しかし、超巨大な人型機体の立体映像の投影という、かなりな無茶をしてしまい、マイは生死の狭間を彷徨う事になる。
 マイを宇宙ステーションに運び、マイの安否を気にかけるメドーラとユアに対し、次の出動任務が告げられる。


「マイお姉さまがあの様な状態なのに、人使い荒すぎますわ。」
 メドーラとユアは、北部戦線を目指す。

 ユウに任務を告げられ二時間後、ふたりは宇宙ステーションを出発した。
 メドーラの機体の修理に、それだけ時間を要したのだ。
 ふたりの疲労は、一時間の急速睡眠で、ばっちし回復した。

 メドーラは少し荒れている。
 機体修理中のジョーに、もう少しマイと一緒にいたいと申し出るのだが、ジョーは許可しなかった。
 それどころか、ジョーは機体修理の様子をじっくり見ていろと、メドーラがマイの元に行くのを、許さなかった。
 ジョーはメドーラがいかに無謀な操縦をしたのかを、よく見て理解してほしかった。
 だが今のメドーラは、それどころではなかった。
 ジョーもその事はよく分かっていたが、無謀な操縦の先にあるものを、知ってほしかった。
 今は理解出来なくても、いつかは分かる日がくるだろうと。

「まあまあ、メドーラ。まともに動けるのは私達だけだから、仕方ないよ。」
 ユアはメドーラをたしなめる。
 激戦を極めた北部戦線。
 今戦えるのは、ユア達のように、他の任務にあたっていた者達だけだった。

「ワープ準備オーケー。進路クリア。いつでもいけます。」
 サポートAIであるユウとアイツウが、同時にパートナーに通信をいれる。
 北部戦線とは、北の衛星基地、ソゴム周辺で起きた戦場だった。
 ソゴムは地球の月の四分の一くらいの大きさで、ここら一帯の中心基地であった。
 北部戦線の拡大にともない、ソゴムは放棄される。
 今は姉妹衛星基地であるゴソラが、ソゴムの代わりを担っている。
 ソゴムとゴソラとの距離は、0.5光年離れていた。

 メドーラとユアは、ソゴム周辺にワープアウトする。
 ソゴムは半壊、辺りには大小様々な機体の残骸が散らばっている。

 メドーラ達の機体は、破壊されても自己修復機能を持つ。
 機体を構成する原子レベルで帰巣本能を持ち、宇宙ステーションの修復装置へと帰っていく。
 ここで18時間くらいかけて修復される。
 こんな設定があったと思うのだが、何話に出てきた設定なのか、サルベージ出来なかった。
 間違ってたら、ごめん。

 そんな修復機能を持った機体は、多くはない。
 多くの機体は、この場で無残な姿をさらしている。
「まるで、船の墓場ね。」
 ユアはこの場の感想を口にする。
「ええ、これなら墓場泥棒もはかどるってものですわ。」
 メドーラもユアの発言に続く。

 実際、墓場泥棒は多かった。
 破壊された機体の回収ミッションや強奪ミッションも、メドーラ達の知らないところで行われていた。
 そんなミッションとは関係なく、一攫千金を夢見るヤカラも、少なくはなかった。
 しかし、戦闘期間が長引くにつれ、墓場泥棒はいなくなった。
 四日間の戦闘のあと、三日間の休息。
 この周期が判明した初期は、休息の一日目に、目ぼしい機体の回収も行われた。
 だが戦闘が長引くにつれ、その回収しに行く機体も、やられてしまった。
 ユアの特訓に割り込んできた巨大戦艦。
 これは数日前の戦闘で撃沈されたのだが、既に回収する考えは無くなっていた。
 つまり、今墓場泥棒が出来るのは、こちら側にはいない。
 侵略者達だけの行為と言える。断言は出来ないが。

「メドーラ、あの人、動いてない?」
 ユアは戦闘機の残骸の陰の人影の存在を、メドーラに告げる。
 この戦場跡に散らばるのは、機体の残骸だけではない。
 当然、機体を操るパイロットもいる。
 いや、居たと言うべきか。
 メドーラも、船外モニターを拡大する。
 その人影は、明らかになんらかの作業をしている。
 機体の修理をしているようにも見える。

「どうらやら、そのようですわね。」
 メドーラはその対象の人物の着る宇宙服を照合する。
 それは、衛星基地ソゴムの船外活動用の宇宙服だった。
 しかしソゴムは今、完全放棄されている。
 これは、ソゴムの関係者が、こっそりとやってる事だろうか。
 謎の侵略者に反撃するために。

 メドーラの照合した結果は、ユアにも共有される。
 ユアは戦闘機を人型に変形させると、該当の人物とコンタクトをとる。
 謎の人物は、近づくユアの人型機体に驚いて、作業の手を止める。
 ユアはこの人物とコンタクトをとるため、通信のチャンネルを回す。
 だが、どのチャンネルもつながらない。
 どうやらこの人物は、通信機のタグイを持ち合わせていないらしい。

 ユアは光通信を試みる。
 光を点滅させて、その点滅の長さで文字を表す。
 いわゆるモールス信号に近い。
 これの問題点は、言語が違えば伝わらない事だ。
 ユアは衛星基地ソゴムで使われてた言語で呼びかける。
 ここら辺の作業は、サポートAIのユウがやってくれる。
 ちなみにメドーラは今、辺りを警戒中だ。

「敵対の意思がないなら、両手を上にあげろ。」
 ユアが光通信でそう伝えると、謎の人物は両手をあげる。
 どうやら言語は伝わったらしい。
 だが、相手からのコミュニケーションがとれない。

 ユアは戦闘機の立体映像を投影し、コックピットを開く。
「敵対の意思がないなら、これに乗ってほしい。
 衛星基地ソゴムで、話しあおう。」
 ユアは光通信で、そう伝える。
 投影された機体に、自律操縦機能はない。
 立体映像の機体の操縦は、ユアの意思で行われる。

 その人物は、投影した戦闘機に乗り込む。
 ユアは人型機体を戦闘機に戻すと、衛星基地ソゴムを目指す。
 ユアの機体の前をメドーラの機体が飛び、進路の安全を確認する。

 立体映像の機体に乗った人物を、サポートAIのユウが解析するのだが、その人物の着込む宇宙服が、その解析を阻む。
 分かるのは、身長と体重のみで、バイタル面については、何一つ分からなかった。

 敵対の意思はないらしいが、油断は出来ない。
 ユアはそんな人物を連れ、メドーラとともに衛星基地ゴソラを目指す。
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