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異次元からの侵略者

第87話 イメージの投影

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話。
 この時代に召喚されたマイは、激戦を極めた北部戦線への参戦を命じられる。
 この北部戦線では、仲間の召喚者であるマインとリムも、再起不能な重症を負ってしまった。
 マイと一緒に参戦する事になったユアとメドーラ。
 ユアは戦闘機での戦闘は不得手であった。
 戦闘機での戦闘ではなく、肉弾戦を得意としていた。
 そのため、ユアは機体を人型に変形出来るよう、改造した。
 その人型機体の操縦訓練の仕上げとして、マイとの実戦訓練に挑む。
 人型機体を完璧に操るユアに感動したメドーラは、自身も人型機体を操って、ユアと修行を始めてしまった。


 カキーン、
 カキーン。

 何度も剣を打ちあうユアとメドーラの人型機体。
「だいぶサマになってきたよ、メドーラ。」
「いいえ、まだまだですわ、ユアお姉さま!」
 確かにメドーラの操縦は、どこかぎこちない。
 しかし、それは戦闘に於いてであって、普通に操縦する分には、申し分なかった。
 だけどメドーラは、戦闘のために操縦しているのだ。
 これで満足するはずもなかった。

「たくぅ、私がここまで操れるようになるまで、凄く苦労したのに。」
 ユアはこれまで、シミュレーターによる操縦訓練を繰り返してきた。
 その総仕上げとしての、マイとの実戦訓練だった。
「でも、実戦にまさる訓練は無いって事か。」
 ユアもマイとの実戦訓練に於いて、自身の精度が増してる事に気がついた。
「その通りですわ、ユアお姉さま!」
 メドーラも、すさまじい速度で上達している。

 メドーラとユアとの特訓の横で、ひとり取り残されるマイ。
 戦闘機の中から、ふたりの訓練を見てるしかない。
「いいなあ、僕も変形させたいよ。」
 マイはふたりの訓練を目の前にして、自分も参加出来ないのを歯痒く思う。
「何度も言わせないでください。あなたの機体には、拡張機能はないのです。」
 マイのパートナーであるサポートAIのアイも、同じ文言を繰り返す。
「だったら、僕が機体を乗り換えればいいんでしょ。」
 マイの機体は、アルファーワン。この機体がガンマシリーズなら、人型変形は可能になる。
 対するアイの答えも、変わらない。
「あなたの乗る機体は、シリウスアルファーワンなのです。
 この宿命を、受け入れてください。」

「宿命って言われても。」
 マイは戸惑う。
 マイはこの時代に、戦闘するために召喚された。
 ならば、少しでも有利になる条件で戦う事が、当然なのではないか。
 つまりこの場合、機体を乗り換える事が最善だと思われる。
 でもアイは、マイがアルファーワンに乗る事にこだわる。
 これこそシリウス構想の肝なのだが、今のマイは、その事を知らない。

「そう言えば、立体映像の投影って、伴機以外も出来るんだね。」
 マイの目の前で繰り広げられる、ユアとメドーラの特訓。
 ふたりの人型機体の持つ剣は、立体映像を投影させた物だ。
「はい。イメージの設計図さえセット出来れば、どんな物でも投影出来ます。
 ただし、伴機からの投影は、伴機と同じ機体のみです。」
 マイ達は、二機の伴機を伴って出陣する事が多い。
 でも今は、特訓のため、伴機は伴っていない。
「設計図かぁ、なんか難しそう。」
 マイは、ブースターやらミサイルやらを投影出来たらと思ったが、設計図を描く事に抵抗を感じた。
「設計図なら、マイのイメージに合わせて、私が作ります。」
「マジで?」
「マジです。」
 アイのその答えは、マイには以外だった。

「じゃあ、これ投影出来る?」
 マイはあるものをイメージする。
「これですか、出来なくはないですが。」
 マイのイメージしたものに、アイは少し戸惑う。
 何を思ってこんなものを投影したいのか、ちょっと理解出来なかった。
「じゃあ、早速、いくよ。」
 マイは立体映像を投影する。
 投影されたのは、等身大のメドーラだった。
「きゃー、凄い。本人そっくり!」
 マイは立体映像の出来に感激。
「あの、これに一体どんな意味が。」
 アイは少し、ドン引きぎみだ。
「続いて、カモン、ユア!」
 今度は、等身大のユアが投影される。

 宇宙空間に浮かぶ、メドーラとユア。
 普段の戦闘時なら、ゴツいヘルメットをかぶるのだが、この立体映像のふたりは、素顔のままだ。
 マイはふたりに、剣を持たせる。
 そして、今実際に戦っているふたりの人型機体の動きを、立体映像のふたりにトレースさせる。
 立体映像のふたりは、メドーラとユアの人型機体の動きを再現してみせる。

「凄い事を思いつきますね。」
 アイは、マイの立体映像の活用法に、感心する。
 これなら、色々活用出来そうだ。

 立体映像の動かし方は、伴機を投影した時と同じ感覚で出来た。
 人型の立体映像であれ、それは変わらない。
 マイはそのコツを、瞬時にとらえていた。
 アイはその事にも、関心した。

「だったら、これも出来るかな。」
 マイは新しいイメージを投影させる。
 それは人型機体だった。
 投影座標は、マイの戦闘機に重ねる。
 マイの戦闘機が、人型の胸から上を担当し、胸より下は、戦闘機の下から生えてくるイメージだ。
 両手は、両翼の下に生えてくる。

「やったあ、これで僕も人型を操れる!」
 マイは人型機体の完成に感激し、メドーラとユアの元へ向かう。
 だが、機体が動かない。
「あれ、この機体動かないよ、なんで?」
 マイはアイに問いかける。
「この形態だと、動力源の同調と、操作系統の統一が必要です。」
「じゃあ、やってよ。」
 アイの答えに、マイは即座に要求する。
 憧れの人型機体も、動かせなければ、意味がない。
「この調整が出来るのは、ジョーだけです。」
「え?」

 メカニックマンのジョー。
 一応メカニックマンの肩書きだが、実質マイ達の司令官だ。
 マイは惑星ドルフレアでのケイ捜索任務で、ケイの身柄確保が不可能となった後も戻ってこなかったので、ジョーにこっぴどく怒られた。
 だから、顔をあわせづらかった。

「私がジョーに頼んできます。」
 アイはそんなマイの心情を察し、ジョーとの交渉をかってでる。
 アイ達サポートAIは、戦闘中は宇宙ステーションの専用のカプセルに入っている。
 ジョーに頼みに行くって事は、そのカプセルから出る事になる。
 マイとの通信も、不可能になる。
「しばらくこれで遊んでてね。」
 アイはカプセルから出ると、ジョーを探しに行った。

 アイは宇宙空間にひとり残されてマイに、投影可能な立体映像のオブジェクトをインストールしていった。
 マイは球体オブジェクトを複数投影させると、それをランダムにマイの機体を追尾するようセットする。

 マイは、その球体オブジェクトを敵に見立てて、ちょっとした訓練を始める。
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