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異次元からの侵略者
第82話 傷だらけの召喚者
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これは西暦9980年のはるか未来のお話。
この時代に召喚されたマイが、行方不明の仲間のケイの捜索から帰還すると、宇宙ステーションで待っていたのは、傷ついたリムだった。
異次元から現れたと思われる敵に翻弄され、北部戦線は激戦をきわめた。
前回のお話しは、三日くらい放置してたら、うまく話しをつなげられなくなった。
ボツにしようにも、書き出し三行でその状況だから、ボツにしようがなかった。
そんな訳で、マイ達はメディカルルームに向かう。
右半身が麻痺して車椅子に座るリムより、マインは重症だという。
マイ達は、メディカルルームの扉の前に立っている。
この中に、マインはいる。
マイも、何度かこの部屋には来たことがある。
訓練や戦闘のあとのメディカルチェックのために、何度か利用した。
最初の頃の話しで、出てきた記憶がある。
だが、物語を進めてく上で、出てこなくてなった。
今初期の話しを読み返してみると、そんな死に設定が多い。
いつかは使うかも、って思っても、そのまま使わなかったパターンだ。
「マイお姉さま、どうなさいました?」
メディカルルームの扉の前で、何やら物思いにふけってるマイを、メドーラはいぶかしく思う。
「ちょっと昔を思い出しただけ。行くよ、メドーラ。」
「はい、マイお姉さま。」
マイは、メディカルルームの扉を開けた。
メディカルルームの奥が、ガラスの壁で区切られたエリアになっていた。
そのエリアに、マインはいた。
どでかいメスシリンダーみたいな筒状の物体に、薄緑色の液体が満たされている。
その中に、マインは全裸で膝をかかえた状態で浮いている。
口元には、呼吸用のマスクが付けられていた。
「何よこれ。」
マイはふらふらとガラスの壁に歩みよる。
「マイン、どうしちゃったのよ。」
マイの弱々しく伸ばされた左手が、ガラスの壁に触れる。
「酷いもんだろ。」
メディカルルームの入り口の壁に、ミサがよりかかっていた。
ミサは、マインのパートナーであるサポートAIだ。
「魂が身体から抜けそうなのを、無理やり抑えてるんだぜ、それ。」
ミサはマインの現状を説明する。
「それに、アバターの損傷度合いも酷いですね。リムの比ではないようです。」
マインの身体を見て、アイもマインの身体の現状を告げる。
「マインが、あのマインが。」
マインの現状にショックを受けるマイ。
「おまえが気にやむ事ないさ。」
ミサはそうマイに言葉をかけるが、マイの受けるショックはでかい。
「僕が、ケイの捜索にこだわったばっかりに。」
「何?」
マイは、マインと一緒に戦場にいなかった事を後悔する。
「僕がいれば、マインもこんな事にはならなかったのに。」
マイの目から涙があふれる。
「おい。」
マイの言葉に、ミサは反応する。
ミサの言葉に振り向くマイ。
「思い上がるなよ。おまえやメドーのひとりやふたり、増えたところで、戦局は変わらない。」
ミサは怒りの感情を抑えながら、なんとか言葉にする。
「だって、僕がいれば、マインは」
「思い上がるなっつってんだよ!」
ミサは素早くマイに近づくと、マイの口を右手でわしづかみ。
マイの発言をとめる。
「ああ、おまえとマインがいれば、擬似ブレイブが使えたよなあ。」
ミサはマイの口元をわしずかみしたまま、マイが言いたかった事を口にする。
擬似ブレイブ。
マイとマインの機体、シリウスアルファーシリーズの二機の機体が、この時空間と同時に存在する多次元空間に、同時に楔を打つ。
この行為により、多次元空間に亀裂が走り、その亀裂にはまった敵の機体が動けなくなる。
そこを追撃する戦法なのだが、今回の敵には通用しそうもなかったのだ。
「それが使えた所で、どうにもなんなかったんだよ。」
ミサの声は震えている。
それがマイへの怒りなのか、後悔からなのか、マイには分からない。
「ミサ、それはどういう事ですか?」
アイも、マイと同じ考えだった。マイがいれば、マインもこんな事にはならなかっただろうと。
それをミサに否定されたのだ。
これは尋ねずには、いられない。
「効かないんだよ。
メドー、多次元空間でのステルス干渉やってたおまえなら、分かるよな。あれの破り方と一緒だよ。」
「分かりません。」
いきなり話しを振られたメドーラは、即答する。
「それが分かってたなら、私は負けませんでした。
それより、マイお姉さまを離しなさい。」
メドーラの言葉にも、怒気がこもる。
「ははは。」
ミサはマイから手を離すと、その手を右目辺りに持っていく。
そして笑いだした。
「何がおかしいのですか。」
そんなミサを、イラっとした目でメドーラはにらむ。
「いや、悪かった。確かにそれが分かってたら、メドーはここにはいないよな。」
「そして、マイもマインも、ここにはいなかった。」
ミサの言葉に、アイが続く。
アイは、ミサがマイにした行為に、少し怒っていた。
そしてアイとミサはしばし睨み合う。
ふたりのサポートAIは、ゴンゴル三姉妹との戦闘を思い出していた。
この時、ゴンゴル三姉妹のステルス干渉を破らなければ、マイ達は負けていた。
「メドーラ、多次元空間を使った戦闘はね、より深い多次元空間を支配した方が勝つのよ。」
アイは、先ほどのメドーラの疑問に答える。
それは、ゴンゴル三姉妹のステルス干渉の破り方だ。
「言われてみれば、確かにそうですわ。そんな事にも気づかなかったなんて。」
「それが、マイがいても戦局は変わらなかった理由なのね。」
アイもそれを言葉にする事で、ミサの言いたい事を理解した。
「そうなんだよ。」
ミサの目に涙がにじむ。
「私もマイがいてくれたらと、シミュレートしてみたんだ。
そしたら、分かったよ。あいつらも、多次元空間を多彩に使いこなしてたよ。」
ミサの言葉に、マイ達も返す言葉がなかった。
「マインはな、マイがいなくて良かったと、言いやがったんだよ。」
ミサは震える声で、なんとか言葉をしぼりだす。
それを聞いて、マイの目にも涙がにじむ。
マイがそんな戦場にいたのなら、真っ先にやられていただろう。
マインはそれを危惧してたのだ。
「しばらくマインとふたりきりにしてくれないか。」
ミサはマインの入るカプセルとを隔てる、ガラスの壁に手をつく。
「頼む。」
ミサの声は震えている。
「行きましょう、ふたりとも。」
ミサを気づかい、アイがマイとメドーラにうながす。
マイとメドーラ、ふたりのパートナーであるアイとアイツウは、メディカルルームを後にした。
この時代に召喚されたマイが、行方不明の仲間のケイの捜索から帰還すると、宇宙ステーションで待っていたのは、傷ついたリムだった。
異次元から現れたと思われる敵に翻弄され、北部戦線は激戦をきわめた。
前回のお話しは、三日くらい放置してたら、うまく話しをつなげられなくなった。
ボツにしようにも、書き出し三行でその状況だから、ボツにしようがなかった。
そんな訳で、マイ達はメディカルルームに向かう。
右半身が麻痺して車椅子に座るリムより、マインは重症だという。
マイ達は、メディカルルームの扉の前に立っている。
この中に、マインはいる。
マイも、何度かこの部屋には来たことがある。
訓練や戦闘のあとのメディカルチェックのために、何度か利用した。
最初の頃の話しで、出てきた記憶がある。
だが、物語を進めてく上で、出てこなくてなった。
今初期の話しを読み返してみると、そんな死に設定が多い。
いつかは使うかも、って思っても、そのまま使わなかったパターンだ。
「マイお姉さま、どうなさいました?」
メディカルルームの扉の前で、何やら物思いにふけってるマイを、メドーラはいぶかしく思う。
「ちょっと昔を思い出しただけ。行くよ、メドーラ。」
「はい、マイお姉さま。」
マイは、メディカルルームの扉を開けた。
メディカルルームの奥が、ガラスの壁で区切られたエリアになっていた。
そのエリアに、マインはいた。
どでかいメスシリンダーみたいな筒状の物体に、薄緑色の液体が満たされている。
その中に、マインは全裸で膝をかかえた状態で浮いている。
口元には、呼吸用のマスクが付けられていた。
「何よこれ。」
マイはふらふらとガラスの壁に歩みよる。
「マイン、どうしちゃったのよ。」
マイの弱々しく伸ばされた左手が、ガラスの壁に触れる。
「酷いもんだろ。」
メディカルルームの入り口の壁に、ミサがよりかかっていた。
ミサは、マインのパートナーであるサポートAIだ。
「魂が身体から抜けそうなのを、無理やり抑えてるんだぜ、それ。」
ミサはマインの現状を説明する。
「それに、アバターの損傷度合いも酷いですね。リムの比ではないようです。」
マインの身体を見て、アイもマインの身体の現状を告げる。
「マインが、あのマインが。」
マインの現状にショックを受けるマイ。
「おまえが気にやむ事ないさ。」
ミサはそうマイに言葉をかけるが、マイの受けるショックはでかい。
「僕が、ケイの捜索にこだわったばっかりに。」
「何?」
マイは、マインと一緒に戦場にいなかった事を後悔する。
「僕がいれば、マインもこんな事にはならなかったのに。」
マイの目から涙があふれる。
「おい。」
マイの言葉に、ミサは反応する。
ミサの言葉に振り向くマイ。
「思い上がるなよ。おまえやメドーのひとりやふたり、増えたところで、戦局は変わらない。」
ミサは怒りの感情を抑えながら、なんとか言葉にする。
「だって、僕がいれば、マインは」
「思い上がるなっつってんだよ!」
ミサは素早くマイに近づくと、マイの口を右手でわしづかみ。
マイの発言をとめる。
「ああ、おまえとマインがいれば、擬似ブレイブが使えたよなあ。」
ミサはマイの口元をわしずかみしたまま、マイが言いたかった事を口にする。
擬似ブレイブ。
マイとマインの機体、シリウスアルファーシリーズの二機の機体が、この時空間と同時に存在する多次元空間に、同時に楔を打つ。
この行為により、多次元空間に亀裂が走り、その亀裂にはまった敵の機体が動けなくなる。
そこを追撃する戦法なのだが、今回の敵には通用しそうもなかったのだ。
「それが使えた所で、どうにもなんなかったんだよ。」
ミサの声は震えている。
それがマイへの怒りなのか、後悔からなのか、マイには分からない。
「ミサ、それはどういう事ですか?」
アイも、マイと同じ考えだった。マイがいれば、マインもこんな事にはならなかっただろうと。
それをミサに否定されたのだ。
これは尋ねずには、いられない。
「効かないんだよ。
メドー、多次元空間でのステルス干渉やってたおまえなら、分かるよな。あれの破り方と一緒だよ。」
「分かりません。」
いきなり話しを振られたメドーラは、即答する。
「それが分かってたなら、私は負けませんでした。
それより、マイお姉さまを離しなさい。」
メドーラの言葉にも、怒気がこもる。
「ははは。」
ミサはマイから手を離すと、その手を右目辺りに持っていく。
そして笑いだした。
「何がおかしいのですか。」
そんなミサを、イラっとした目でメドーラはにらむ。
「いや、悪かった。確かにそれが分かってたら、メドーはここにはいないよな。」
「そして、マイもマインも、ここにはいなかった。」
ミサの言葉に、アイが続く。
アイは、ミサがマイにした行為に、少し怒っていた。
そしてアイとミサはしばし睨み合う。
ふたりのサポートAIは、ゴンゴル三姉妹との戦闘を思い出していた。
この時、ゴンゴル三姉妹のステルス干渉を破らなければ、マイ達は負けていた。
「メドーラ、多次元空間を使った戦闘はね、より深い多次元空間を支配した方が勝つのよ。」
アイは、先ほどのメドーラの疑問に答える。
それは、ゴンゴル三姉妹のステルス干渉の破り方だ。
「言われてみれば、確かにそうですわ。そんな事にも気づかなかったなんて。」
「それが、マイがいても戦局は変わらなかった理由なのね。」
アイもそれを言葉にする事で、ミサの言いたい事を理解した。
「そうなんだよ。」
ミサの目に涙がにじむ。
「私もマイがいてくれたらと、シミュレートしてみたんだ。
そしたら、分かったよ。あいつらも、多次元空間を多彩に使いこなしてたよ。」
ミサの言葉に、マイ達も返す言葉がなかった。
「マインはな、マイがいなくて良かったと、言いやがったんだよ。」
ミサは震える声で、なんとか言葉をしぼりだす。
それを聞いて、マイの目にも涙がにじむ。
マイがそんな戦場にいたのなら、真っ先にやられていただろう。
マインはそれを危惧してたのだ。
「しばらくマインとふたりきりにしてくれないか。」
ミサはマインの入るカプセルとを隔てる、ガラスの壁に手をつく。
「頼む。」
ミサの声は震えている。
「行きましょう、ふたりとも。」
ミサを気づかい、アイがマイとメドーラにうながす。
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