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惑星ファンタジー迷走編

第66話 荒野のほこらへ

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話。
 惑星ドルフレアで行方不明になったケイは、なんと千年前にタイムスリップしていた。
 その時代で鉱物資源を封印したケイは、千年後のマイ達に、その封印の解除を託す。
 封印のほこらは三つあり、最初のひとつ目のほこらに向かう。
 先行したメドーラは、何やらほこらの罠みたいなものにかかってしまったらしい。
 マイとローラス、ミイに憑依したナツキの三人は、メドーラの元へと急行する。


「なんでメドーラを行かせたのよ、ナツキ!」
 マイはほこらの事情を知るナツキが、メドーラを止めなかった事を責める。
「ほほほ。あの者の好奇心は、止められんわい。」
 ナツキはのんびり歩きながら、マイの問いに答える。
 その答えは、はじめから止める気などない事を言っていた。

「つか、もっと急いでよ!」
 駆けだしたいマイに比べ、ナツキの動きはスローすぎた。
「仕方ないじゃろ。この身体、走るようには出来ておらん。」
「はい、私の身体は、走る事は想定されてません。」
 ナツキの言葉を、憑依されたミイが補足する。
「ところでマイ、浮遊スクーターを使わないのは、なぜです?」
 ミイは発言ついでに、聞いてみる。
「浮遊スクーター?なにそれ。」
 マイは、それを知らなかった。
「アイ、あなた教えてないのね。」
 マイの反応に、ミイは思わずつぶやいた。

 マイ達の持つマジカルポシェット。
 中が多次元空間になっているため、なんでも収容可能。
 中身は、惑星上での任務を想定した品々が入っている。
 ただし、その星の通貨などは入っていない。
 ここに浮遊スクーターもあるのだが、そんなもん存在自体知らないマイは、それがある事すら知らなかった。

 マイが取り出した浮遊スクーターに、ローラスとミイも乗る。
 いわゆる三人乗りだ。
「これ、走った方が早くない?」
 浮遊スクーターのあまりの遅さに、ローラスは思わず口に出す。
 浮遊スクーターは重量オーバーのため、浮かぶのがやっとで、推進に使う反重力エネルギーを充分確保出来なかった。
「これでも、この身体が歩くより、早かろう。」
 ナツキが言う通り、ミイの身体が歩くよりは、早かった。
「やっぱり、馬とかいた方がよさそうね。」
 移動速度の遅い現状に、ローラスがぼそりともらす。

 二時間あまり荒野を進むと、その先は渓谷のようになっていた。
 地面が二十メートルくらい、隆起している。
 その隆起は壁状に隆起していて、上空から見ると、無数の地割れが縦横無尽に走ったような地形をしていた。
 それだけで天然の迷路だった。

 マイ達の足がすくむ。
 この迷路に飛び込む勇気がなかった。
「ほほほ、風のマナを使ってみい。」
 ここでナツキがアドバイス。
 ソウルブレイドで風の剣を作れというのだが、マイは一度も風の剣を作った事がない。
 そんな事も言ってられる状況ではないので、ナツキのサポートを借りて、マイは風の剣を作ってみる。

 マイは呼吸を整えると、大気中のイデと会話する。
 イデからこの場所のマナを借りる事を許してもらう。
 マイは大気中の風のマナを体内に取り入れると、自分の体内のマナと錬成させる。
 そしてソウルブレイドに気合いを込める。

 風の剣が出来た。

 風はマイの呼吸で体内に入り、ソウルブレイドから抜けていく。
 マイの身体は風の通り道になっているような、そんな感覚だ。
 剣の刀身は無色で、ただ風が吹き出ているに過ぎない。
 これが、剣と呼べるのだろうか?
 ナツキが言うには、使いこなせば斬りたい物だけが斬れる剣になるらしい。
 そして、この場所のマナを取り込む事により、この迷路のような渓谷の全貌が、はっきりと分かる。
 封印のほこらの場所、そこに居るメドーラの姿。

 マイは走りだす。
 だが、一歩走った時点で、歩みが止まる。
 風の剣の維持も出来なくなった。

 ナツキは言う。
 風の剣を維持しながらの激しい運動は、不可能だと。
 ならば、これでどう戦えと言うのか?

 風の剣が無くなった事で、迷路の全貌は分からなくなった。
 だが、マイの記憶には残ってる。つか、パートナーのサポートAIのアイが、はっきりと記録した。
 マイの体力の回復をまって、一行はほこらへと向かう。
 マイの記憶はあいまいで、何度か道を間違えそうになるが、アイの記録は完璧だった。

 ほこらにたどり着くと、かたわらの岩に、メドーラが座っている。
「メドーラ!」
 マイは目を閉じて座っているメドーラを抱きしめる。
「ま、マイお姉さま?」
 目を開けるメドーラだが、メドーラの顔はマイの胸の谷間に埋まってた。
「く、苦しいですわ。マイお姉さま。」
「ばか。心配させないでよ。」
 涙声になるマイは、メドーラを抱きしめる腕に、さらに力を込める。
「マイお姉さま、ご、ごめんなさい。」
 メドーラも涙声になる。
 再会したふたりは、しばらく泣いた。

「なんでひとりで来たのよ。」
 気持ちが落ち着いたマイは、メドーラに問いかける。
「ごめんなさい。ほこらが気になったから、つい。」
 メドーラはうつむき加減でボソっとした声で答える。
「謝るのは、僕の方だよね。僕がしっかりしていれば、メドーラと一緒に来れたのにね、」
 マイはエキシビションライブで疲れ果ててしまった事を悔やむ。
「違うわ、マイお姉さま。先走った私がいけないのですわ。」
 そんなメドーラの言葉に、マイは首をふる。
「メドーラは、僕のために、ほこらの事を早く知りたかったんだよね。」
 マイの言葉に、メドーラはうなずく。
 その瞳から、涙がこぼれる。

「メドーラは、どうやってこの場所が分かったの?」
 マイは、二番目に気になってた事を聞く。
「そうじゃ、お主はおケイの予言にはいなかった。いわば招かれざる客のはずじゃぞい。」
 マイの問いに、ナツキも続く。
 メドーラは、座っている岩に手のひらを当てる。
「私はただ、土のマナを感じ取っただけ。」
「そうか、そのような方法もあるのじゃの。」
 ナツキは、メドーラがたどり着けた理由が分かった。
 でもマイは分からない。メドーラは説明を続ける。
「ここだけマナの性質が違うから、すぐに分かったわ。
 でも、帰り道が分からなかったの。
 ここに居れば、マイお姉さま達が見つけてくれると思ったから。」

 メドーラの言葉に、マイはメドーラを抱きしめる。
「ばか。」
 マイは、そのひとことだけしか言えなかった。
「はい。ばかです。」
 メドーラも、そう返すのがやっとだった。
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