63 / 215
惑星ファンタジー迷走編
第63話 荒野のライブ会場
しおりを挟む
これは西暦9980年のはるか未来のお話。
惑星ドルフレアで行方不明になったケイは、なんと千年前にタイムスリップしていた!
ケイは千年後のマイ達にこの星の鉱物資源の封印を託す。
その封印をグリーンドラゴンが護っていたのだが、この星の人々には、退治する対象でしかなかった。
マイ達はグリーンドラゴンと話しあい、ケイの真実を知る。
グリーンドラゴンも少女に化身し、ケイのパートナーであったミイに憑依する。
こうして森のドラゴン問題は解決する。
この報告をどうするのか思い悩んでいたが、たまたまそこに来たギルド最強の冒険者、ドルクに丸投げして、マイ達は先を急ぐ。
マイとユアの戦闘機が、惑星ドルフレアの空を飛ぶ。
マイ達のサポートAIは、この星のある座標を示す。
マイ達が前回、ドルクと別れて街へ帰った後、ユアのパートナーであるサポートAIのユウが、ある事を告げた。
ユアのライブコンサートまで、もう時間がない事を。
ユアの機体には、ライブ会場への転送システムを搭載させていた。
これでユアは瞬時にライブ会場に駆けつけられる。
だがユアは、一曲目のエキシビションライブの相手に、マイを選んだ。
マイの機体にそんな転送システムは取り付けてないし、今はまだ、ケイ捜索任務の継続中だ。
ライブの一曲目は、この星で行うしかない。
エキシビションライブとは、ソウルブレイドのエキシビションマッチをしながら、歌うスタイルのライブ曲だ。
これがユアのライブコンサートの最大の見どころでもあった。
行うふたりの立ち回りに、段取りがあるわけではない。
普通にユアが歌いながら、ソウルブレイドの剣をふるう。
ユアくらいの達人になれば、曲の時間ぴったりに勝負を決める事も可能だった。
マイもそれなりの実力者であったが、ユアはさらにその上を行っていた。
ユアとマイは、座標の示す地点に着いた。
地平線を見渡せる周囲には、何もなかった。広大な荒野が広がっていた。
ふたりがその地に降り立つと、ふたりの戦闘機は多次元空間の格納庫へと飛び去った。
「無理言って、ごめんね。」
ユアは一応マイに謝るが、そんな気はあまりなかった。
マイはコクコクと無言でうなずいた後、ハッとして今度は無言で首をふる。
マイは「そんな事ないよ」と言いたかったのだが、言葉が出なくて、反応に困った。
「そんな緊張しなくても、大丈夫よ。」
ユアはマイの両手を握る。そして目を閉じると、握った手を自分の胸にあてる。
マイもつられて目を閉じる。
ちなみにふたりの服装は、この星でのお着替えスタイルではなく、戦闘用のボディスーツだ。
「今私達は、宇宙中の人達から注目されているわ。」
ユアはマイを落ち着かせるため、小声でささやく。
ふたりの脳内に、宇宙中のパブリックビューイング会場の様子が浮かぶ。
会場にはファン達が集まり、ライブの開始を今かと待ち望んでいる。
そんな会場が、全宇宙で億を超える。
この会場は、マイ達のブルレア連邦だけではなく、グリムアにもレドリアにもあった。
「マイはただ、ソウルブレイドのエキシビションマッチをするだけ。
エキシビションライブなんて、普通のエキシビションマッチと変わらないから。」
「僕、エキシビションマッチなんて、やった事ないよ。」
「あら、そうだったの。」
ユアにとって、マイのその応えは意外だった。
ユアの任務のほとんどはソウルブレイド戦であり、エキシビションマッチの比率も低くはなかった。
そりゃあ、自分は特殊かと、この時はじめて気がついた。
「ならば、リムとの試合を思い出して。
あの時、観客の私達を意識していた?」
ユアは言葉を変える。
「してなかったわ。」
マイも、リムとの試合を思い出す。
「今度も、それと同じ。マイは私と試合するだけ。
今回は、それを数兆人の人が観てるだけだから。」
「えー、規模がでかいよ。」
マイは、ユアが安心させたいのか、さらに緊張させたいのか、分からなくなる。
「これだけは、忘れてほしくないの。
観客の目は気にしなくてもいいけど、私達の試合は多くの人に見られているの。
無様な試合は、出来ないって事よ。」
「そうね、分かったよ。ユア。」
試合に集中すれば、観客の目など気にならなくなるだろう。
だけど、その試合は多くの人が観ている。
クオリティの低い試合など出来ない。
マイも全力を出しきる気迫が必要だ。
リムとの試合を思い出したマイは、ひとつ気になる事も思い出す。
「ねえ、今度の試合は、居合抜きってだめだよね。」
マイがリムとの試合でみせたスタイル。
刀を鞘に収め、相手が射程範囲に入ってからの抜刀術。
ショー的に、見栄えがいいとも思えない。
「そうね、あれでも私は盛り上げられるけど、違う方がいいわね。」
ユアは対居合抜きでの盛り上げ方を考える。
それは自分が必要以上に動き回る事だが、マイの動きは、シロウトには分かりづらい。
エキシビションライブにおいて、相手を盛り上げる演出が必要になるが、相手も盛り上げるための演出は必要。
ユアひとりでの演出には、限界がある。
だから変えた方がいいのだが。
「でも、あれ以外だと、マイは実力出せるの?」
ユアはその懸念を口にする。
「大丈夫。
あれは、ちょっとやってみたかったから、やってみただけ。
僕も、ソウルブレイド戦は何度か体験したから。」
マイのその言葉に、ユアも安心する。
「そうそう。」
ここで、ユアにひとつの懸念材料が出てくる。
「ケイの八極陣だけど、あれは演舞だから、そのまま使っても実戦では意味ないからね。
実戦では、動きの参考にする程度よ。」
「分かったよ、ユア。」
マイはユアの忠告を受け入れた。
そして、ライブコンサートが始まった。
惑星ドルフレアで行方不明になったケイは、なんと千年前にタイムスリップしていた!
ケイは千年後のマイ達にこの星の鉱物資源の封印を託す。
その封印をグリーンドラゴンが護っていたのだが、この星の人々には、退治する対象でしかなかった。
マイ達はグリーンドラゴンと話しあい、ケイの真実を知る。
グリーンドラゴンも少女に化身し、ケイのパートナーであったミイに憑依する。
こうして森のドラゴン問題は解決する。
この報告をどうするのか思い悩んでいたが、たまたまそこに来たギルド最強の冒険者、ドルクに丸投げして、マイ達は先を急ぐ。
マイとユアの戦闘機が、惑星ドルフレアの空を飛ぶ。
マイ達のサポートAIは、この星のある座標を示す。
マイ達が前回、ドルクと別れて街へ帰った後、ユアのパートナーであるサポートAIのユウが、ある事を告げた。
ユアのライブコンサートまで、もう時間がない事を。
ユアの機体には、ライブ会場への転送システムを搭載させていた。
これでユアは瞬時にライブ会場に駆けつけられる。
だがユアは、一曲目のエキシビションライブの相手に、マイを選んだ。
マイの機体にそんな転送システムは取り付けてないし、今はまだ、ケイ捜索任務の継続中だ。
ライブの一曲目は、この星で行うしかない。
エキシビションライブとは、ソウルブレイドのエキシビションマッチをしながら、歌うスタイルのライブ曲だ。
これがユアのライブコンサートの最大の見どころでもあった。
行うふたりの立ち回りに、段取りがあるわけではない。
普通にユアが歌いながら、ソウルブレイドの剣をふるう。
ユアくらいの達人になれば、曲の時間ぴったりに勝負を決める事も可能だった。
マイもそれなりの実力者であったが、ユアはさらにその上を行っていた。
ユアとマイは、座標の示す地点に着いた。
地平線を見渡せる周囲には、何もなかった。広大な荒野が広がっていた。
ふたりがその地に降り立つと、ふたりの戦闘機は多次元空間の格納庫へと飛び去った。
「無理言って、ごめんね。」
ユアは一応マイに謝るが、そんな気はあまりなかった。
マイはコクコクと無言でうなずいた後、ハッとして今度は無言で首をふる。
マイは「そんな事ないよ」と言いたかったのだが、言葉が出なくて、反応に困った。
「そんな緊張しなくても、大丈夫よ。」
ユアはマイの両手を握る。そして目を閉じると、握った手を自分の胸にあてる。
マイもつられて目を閉じる。
ちなみにふたりの服装は、この星でのお着替えスタイルではなく、戦闘用のボディスーツだ。
「今私達は、宇宙中の人達から注目されているわ。」
ユアはマイを落ち着かせるため、小声でささやく。
ふたりの脳内に、宇宙中のパブリックビューイング会場の様子が浮かぶ。
会場にはファン達が集まり、ライブの開始を今かと待ち望んでいる。
そんな会場が、全宇宙で億を超える。
この会場は、マイ達のブルレア連邦だけではなく、グリムアにもレドリアにもあった。
「マイはただ、ソウルブレイドのエキシビションマッチをするだけ。
エキシビションライブなんて、普通のエキシビションマッチと変わらないから。」
「僕、エキシビションマッチなんて、やった事ないよ。」
「あら、そうだったの。」
ユアにとって、マイのその応えは意外だった。
ユアの任務のほとんどはソウルブレイド戦であり、エキシビションマッチの比率も低くはなかった。
そりゃあ、自分は特殊かと、この時はじめて気がついた。
「ならば、リムとの試合を思い出して。
あの時、観客の私達を意識していた?」
ユアは言葉を変える。
「してなかったわ。」
マイも、リムとの試合を思い出す。
「今度も、それと同じ。マイは私と試合するだけ。
今回は、それを数兆人の人が観てるだけだから。」
「えー、規模がでかいよ。」
マイは、ユアが安心させたいのか、さらに緊張させたいのか、分からなくなる。
「これだけは、忘れてほしくないの。
観客の目は気にしなくてもいいけど、私達の試合は多くの人に見られているの。
無様な試合は、出来ないって事よ。」
「そうね、分かったよ。ユア。」
試合に集中すれば、観客の目など気にならなくなるだろう。
だけど、その試合は多くの人が観ている。
クオリティの低い試合など出来ない。
マイも全力を出しきる気迫が必要だ。
リムとの試合を思い出したマイは、ひとつ気になる事も思い出す。
「ねえ、今度の試合は、居合抜きってだめだよね。」
マイがリムとの試合でみせたスタイル。
刀を鞘に収め、相手が射程範囲に入ってからの抜刀術。
ショー的に、見栄えがいいとも思えない。
「そうね、あれでも私は盛り上げられるけど、違う方がいいわね。」
ユアは対居合抜きでの盛り上げ方を考える。
それは自分が必要以上に動き回る事だが、マイの動きは、シロウトには分かりづらい。
エキシビションライブにおいて、相手を盛り上げる演出が必要になるが、相手も盛り上げるための演出は必要。
ユアひとりでの演出には、限界がある。
だから変えた方がいいのだが。
「でも、あれ以外だと、マイは実力出せるの?」
ユアはその懸念を口にする。
「大丈夫。
あれは、ちょっとやってみたかったから、やってみただけ。
僕も、ソウルブレイド戦は何度か体験したから。」
マイのその言葉に、ユアも安心する。
「そうそう。」
ここで、ユアにひとつの懸念材料が出てくる。
「ケイの八極陣だけど、あれは演舞だから、そのまま使っても実戦では意味ないからね。
実戦では、動きの参考にする程度よ。」
「分かったよ、ユア。」
マイはユアの忠告を受け入れた。
そして、ライブコンサートが始まった。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
TS調教施設 ~敵国に捕らえられ女体化ナノマシンで快楽調教されました~
エルトリア
SF
世界有数の大国ロタール連邦の軍人アルフ・エーベルバッハ。彼は敵国アウライ帝国との戦争で数え切れぬ武勲をあげ、僅か四年で少佐にまで昇進し、救国の英雄となる道を歩んでいた。
しかし、所属している基地が突如大規模な攻撃を受け、捕虜になったことにより、アルフの人生は一変する。
「さっさと殺すことだな」
そう鋭く静かに言い放った彼に待ち受けていたものは死よりも残酷で屈辱的な扱いだった。
「こ、これは。私の身体なのか…!?」
ナノマシンによる肉体改造によりアルフの身体は年端もいかない少女へと変容してしまう。
怒りに震えるアルフ。調教師と呼ばれる男はそれを見ながら言い放つ。
「お前は食事ではなく精液でしか栄養を摂取出来ない身体になったんだよ」
こうしてアルフは089という囚人番号を与えられ、雌奴隷として調教される第二の人生を歩み始めた。
※個人制作でコミカライズ版を配信しました。作品下部バナーでご検索ください!
異世界転移した先で女の子と入れ替わった!?
灰色のネズミ
ファンタジー
現代に生きる少年は勇者として異世界に召喚されたが、誰も予想できなかった奇跡によって異世界の女の子と入れ替わってしまった。勇者として賛美される元少女……戻りたい少年は元の自分に近づくために、頑張る話。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる