上 下
62 / 215
惑星ファンタジー迷走編

第62話 報告は頼んだぉ

しおりを挟む
 これは西暦9980年のはるか未来のお話。
 行方不明になったケイは、千年前にタイムスリップしていた!
 それを知って森から出てきたマイ達を待ち受けていたのは、冒険者のドルクだった。
 ドルクは禍々しい剣の影響からか、凶暴さを増していた。
 その剣も折れ、ローラスの水系マナによって浄化されたドルクは、さわやかな冒険者風に、キャラデザ自体変わってしまった。
 そして、メイド姿のマイに、惚れてしまうのだった。


「あの、あなたのお名前を、お聞かせください。」
 ドルクはマイの名前を聞いてくる。
「それなら、この冒険者の腕輪を使えばよろしいのでは?」
 マイは自分の冒険者の腕輪を、ドルクに向ける。
「だ、駄目ですよ。腕輪で覗くだなんて、失礼ですよ。」
「きゃっ。」
 ドルクは両手でマイの腕輪をはめた左手を握ると、そのままマイの手を降ろす。
「あの、手を離してくれませんか。」
 顔をあからめるマイを見て、ドルクも顔をあからめる。
「す、すいません!」
 ドルクは慌てて手を離す。
「僕の方こそ、ごめんなさい。僕の名前は、マイアミン・スケード・メドローア。よろしくね。」
「ま、マイさんとおっしゃるんですか。素敵な名前ですね。」
「あ、ありがと。」
 ドルクの言葉に、マイも悪い気はしなかった。
「私は、ドルク・マイケラー。」
 ドルクはマイの前でひざまずいて、手を差し伸べる。
「マイさん、私と交際してください!」

 マイは差し伸べられた手を、思わず握ってしまう。
 そしてドルクの身体を引き起こす。
「交際だなんて、そんな。
 僕は任務でこの地に立ち寄っただけで、すぐ旅立たねばなりません。」
「そ、そうですか。」
 マイに手を握られ喜んだのも束の間、ドルクの顔色も曇る。
「なら、私もあなたの旅に、同行させて下さい!」
「そ、それは。」
 マイはドルクがぐいぐいくるので、たじろいでしまう。

「駄目に決まってますわ。」
 マイとドルクの間に、メドーラが割り込んだ。
「いつまで握ってるのですか。とっとと離しなさい!」
 メドーラはマイの手を握るドルクの手を、乱暴に引き離す。

「なんですか、あなたは。」
 ドルクはそう言って、メドーラに冒険者の腕輪を向ける。
「メドーラ・ミツエーモ・トクナーガさんですか。
 ちょっと美人だからって、私とマイさんとの邪魔をしないでください。」
「あら、冒険者の腕輪で覗くのは、失礼ではありません事?」
 それは、少し前にドルクが言ってた言葉だ。
「何言ってるんです。冒険者同士の挨拶みたいなもんでしょ。」
 ドルクは、こんな事も知らないのかって言いたげに、メドーラを小バカにした口調で言ってくる。
 それに対して、メドーラもカチンとくる。

「あのー、僕も冒険者なんですがー。」
 険悪な雰囲気なふたりの間に、マイも入ってみる。
「いえ、マイさんは私の人生の伴侶となるお方です。
 ただの冒険者とは違います!」
「ドルクさん、僕は人生の伴侶になる気なんて、ありませんよ。」
 マイは真剣な表情で、ドルクに告げる。

「そ、そんな。」
 ここにきて、ドルクはやっと、マイにその気はないのだと気づく。
 かと言って、このまま引きさがりたくはない。
「マイさん!」
「は、はい!」
「マイさんが私の事を、なんとも思っていなくても、構いません。
 ただ、私に出来る事があったら、なんでも言って下さい。
 マイさんのお力になれれば、それで私は満足です!」

 なんでもやってくれるならと、マイはどうしたもんかと思ってた事柄を、ドルクに押し付ける。
「それなら、ギルドへの報告を、お願い出来るかしら。」
「報告、ですか?」
 なんでもやると言ったドルクに対しての、マイの提言。
 それはドルクにとって、以外すぎた。
「僕達、もうあのギルドには、行く気ないし。」
 マイ達は以前のギルドでのやりとりで、二度と行きたくないと思ってた。
 それに、先を急ぐ理由も出来た。
 だから、ギルドには寄りたくないのだが、報告義務をどうするか。
 それを決めかねていた。

「ギルドの連中も、根はいい奴なんですが。」
 ドルクはギルドの冒険者達を擁護する。
 だが、マイ達とは色々やりあってしまったから、あまり会いたくなかった。
「受付のお姉さんにも、受け悪かったし、僕達、先を急ぐ理由が出来ちゃったんだよね。」
「あの気立てのいいと評判の、お姉さんですか?」
 ドルクはマイの言葉が、にわかには信じられない。
 だが、マイさんが言うからには、何かあるのだろう。

「うん、ちょっとやりあっちゃったからね。
 だから、伝えてほしい。南の森のドラゴンは、もういないって。」
「なんと、退治したんですか?凄いです、マイさん。」
 マイの言葉に、ドルクは少し興奮する。
「いや、退治なんてしてないよ。
 普通に話しあって、解決してきたから。」
「す、凄いです、マイさん。ドラゴンと話しあうだなんて、普通思いつきませんよ。
 それなのに、話しあいで解決してしまうなんて、凄すぎます!」
 ドルクは興奮する。
 マイはギルドでの冒険者達と受付嬢との反応から、ドルクも同じ反応をするのかと思った。

「ドルクさんは、信じてくれるんですね。」
「当たり前じゃないですか!」
 マイは、ドルクの言葉が、素直に嬉しかった。
「ギルドでは、ドラゴンは退治してこいってうるさかったからね。
 だから逆に、ギルドを退治するぞって、言っちゃったのよ。」
 マイはギルドでの顛末を、ドルクに話す。
「そんな事があったのですか。まあ、無理もないですよ。」
 マイの話しを聞いたドルクだが、ギルドの冒険者達にも理解を示す。
「マイさん達みたいに、高レベルではないですからね。
 ドラゴンはただ、脅威の存在ですよ。
 恐怖の対象でしかないのだから、話しあうだなんて、思いもしませんよ。」

 マイ達も、ドルクの言葉に納得する。
 そしてドルクも、理解した。
「なるほど、これはマイさん達が話しあいで解決したと言っても、伝わりませんね。
 下手したら、ギルドの冒険者達を全員、退治する事にもなりかねませんね。ははは。」
 ドルクはその様子を想像すると、思わず笑ってしまう。
「笑い事じゃないですよ。」
 マイにも、その想像はたやすかった。
 特にメドーラなんかは、本当にギルドを全滅させかねない。

「ならば、この私がしっかりと報告しましょう。
 ギルド最強のこの私が丁寧に説明すれば、納得するでしょう。
 って、今は最強ではありませんね。元最強ですね。」
 ドルクはそう提言する。
 マイもそこまで考えて、ドルクに頼んだわけでもなかった。
 ただ報告がめんどくさかっただけだった。
 書いてるうちにこうなったのだが、ドルクはマイの思慮深さに、ますます惚れるのであった。

 ドルクは一応確認のために、森の奥へと向かった。
 マイ達は、馬車で街へと戻る。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

性転換タイムマシーン

廣瀬純一
SF
バグで性転換してしまうタイムマシーンの話

TS調教施設 ~敵国に捕らえられ女体化ナノマシンで快楽調教されました~

エルトリア
SF
世界有数の大国ロタール連邦の軍人アルフ・エーベルバッハ。彼は敵国アウライ帝国との戦争で数え切れぬ武勲をあげ、僅か四年で少佐にまで昇進し、救国の英雄となる道を歩んでいた。 しかし、所属している基地が突如大規模な攻撃を受け、捕虜になったことにより、アルフの人生は一変する。 「さっさと殺すことだな」 そう鋭く静かに言い放った彼に待ち受けていたものは死よりも残酷で屈辱的な扱いだった。 「こ、これは。私の身体なのか…!?」 ナノマシンによる肉体改造によりアルフの身体は年端もいかない少女へと変容してしまう。 怒りに震えるアルフ。調教師と呼ばれる男はそれを見ながら言い放つ。 「お前は食事ではなく精液でしか栄養を摂取出来ない身体になったんだよ」 こうしてアルフは089という囚人番号を与えられ、雌奴隷として調教される第二の人生を歩み始めた。 ※個人制作でコミカライズ版を配信しました。作品下部バナーでご検索ください!

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

異世界転移した先で女の子と入れ替わった!?

灰色のネズミ
ファンタジー
現代に生きる少年は勇者として異世界に召喚されたが、誰も予想できなかった奇跡によって異世界の女の子と入れ替わってしまった。勇者として賛美される元少女……戻りたい少年は元の自分に近づくために、頑張る話。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ずっと女の子になりたかった 男の娘の私

ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。 ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。 そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

処理中です...