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惑星ファンタジー迷走編

第43話 諸国漫遊の御一行

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話。
 行方不明のケイを探しにきたマイ達三人は、この星の集合意思であるイデの導きにより、この星の超能力、マナに目覚めた。
 盗賊に襲われた現地人を助けたマイ達だが、盗賊の置き土産の召喚獣の竜に苦戦する。
 その竜は、人型に変形したメドーラの戦闘機によって、撃退された。


 メドーラが人型戦闘機を降りると、戦闘機は元の飛行タイプに戻り、格納庫代わりの多次元空間へと飛び去った。
「すっごーい、メドー。」
 マイが目を輝かせる。
「僕にも出来るんでしょ?」
 マイは額にまいた鉢巻のチップを通じ、サポートAIのアイに話しかける。
「いいえ、あなたの機体には実装されていません。」
「えー、そんなー。」
 アイの答えに、マイはがっくり落ち込む。
「あれはメドーラが機体作成の際、どうしてもと頼み込んだ機能です。
 まさかこうして役に立つとは、思いませんでした。」
「じゃあ、僕の機体にも実装してよ。」
「それは出来ません。お忘れですか?」
 アイにそう言われても、マイにはなんの事だか分からない。
「あなたの機体は、試作品。これ以上の機能拡張は不可能なのです。」
 マイは、以前そんな事を言われたのを思い出す。
「じゃあ、ユアの機体なら、拡張可能って事?」
「理論上は可能なのですが、作り替えた方が早いかもしれません。」
「じゃあ、僕の機体も作り替えようよ。」
「それは出来ません。あなたの乗る機体は、アルファーワンです。変更は出来ません。」
「えー、ずっるーい。」

「あの、あちらの方は大丈夫なのでしょうか。」
 ローラスは身近にいたユアに声をかける。
 マイとアイとの会話は、鉢巻をしめた召喚者にしか聞こえない。
 はたから見ると、独り言を言ってる危ないヤツでしかない。
「あー、気にしないで。それより、怪我はない?」
 ユアはローラスの全身をまじまじと見つめる。
 高貴なドレスに身を包み、優雅な気品に満ちるローラスに、怪我は見当たらない。
「怪我はないようだね、じゃあ、私達はこれで。マイ、メドー、行くよ。」
 ユアはマイ達に声をかけて、この場を後にする。
「お、お待ち下さい!」
 そんなユア達を、ローラスが止める。
「まだ助けてもらったお礼もしていません。」
「でも、私達はただの通りすがりで、先を急いでまして。」
 ユアはそう言葉にするも、無下にお礼を断るのも気が引ける。
「あら、ケイお姉さまを探すのに、ちょうどいいかもしれませんわ、ユアお姉さま。」
 ユアが早く立ち去ろうとしてるのに対し、メドーラはローラス達から情報収集するつもりだ。
 メドーラは、自己紹介を始める。
「私は、エティコの縮緬問屋の三女、メドーラ・ミツエーモ・トクナーガ。」
「まあ、エティコって言ったら、北の辺境ではございませんか。」
「これ、お嬢さま、」
 思わず口に出てしまったローラスを、老紳士がたしなめる。
「す、すみません。」
 すぐに謝るローラスに、メドーラは気にしてませんわと笑顔で答える。
 メドーラは、マイに手を向ける。
「こちらが、マイアミン・スケード・メドローア。私のメイド長でございます。」
 マイは両手をお腹の下に重ね、軽くお辞儀する。
 メドーラは今度は、ユアに手を向ける。
「こちらの騎士様は、ユアシルク・カークス・メドローア。我が家の専属騎士隊の隊長ですわ。」
 ユアはちょっとあせったが、気持ち分、頭を下げる。
「私達は、この近くで連絡を絶ったケイネシア・ヤーシツ・メドローアを探しにまいりました。」
「まあ、そんな事情がおありでしたの。私にも何かお手伝い出来れば。」
 ローラスはちょっと考えこむ。
「お嬢さま。」
 そんなローラスに、老紳士が小声で声をかける。
 そう、こちらの自己紹介がまだだった。
「す、すみません、自己紹介が遅れました。私は、」
 ローラスはそう言って老紳士に視線を向ける。
 老紳士はうなずく。
 ローラスはメドーラの方に向き直ると、自己紹介を続ける。
「私は、ローラス・ウル・ロトレンス。ここローレンスの貴族の娘です。」
 ローラスは老紳士に手を向ける。
「こちらの爺やが、私のお世話役兼執事のセバス・チャンリン・シャオドール。武芸、馬術、考古学に秀でておりますわ。」
「セバスです。以後お見知り置き下さい。」
 セバスと呼ばれた老紳士は、右手を胸に当て、頭を下げた。
「ここではなんですから、私の屋敷に来ませんか?」
 ローラスの申し出に、ユアとマイはちょっと困惑気味だが、メドーラは乗り気だ。
「はい、この街の情勢とかをお聞かせ下されば、光栄ですわ。
 先程の盗賊の件などは、特に。」
 メドーラは笑顔だが、その眼は怪しく光る。
 ユアは思った。流石は元ゴンゴル三姉妹のひとり。頭がきれるわね。
「そ、そうですね、その件は屋敷についてからで。」
 そう言うローラスの表情は少し影る。
「ささ、お嬢さま。急ぎましょう。」
 ローラスを助けるように、セバスは声をかける。
「私も、こちらの御三方には、興味がございます。後でじっくり、お話ししたいですな。」
 セバスの眼も、怪しく光る。

 それを見て、マイとユアは思う。
 なにこのふたり。なんか怖いんですけど。
 ローラスは思う。
 あちゃー、爺やの悪い癖が出ちゃったなー。
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