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宇宙召喚編

第38話 三女の変様

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話。
 巨大宇宙ステーションに攻めてきたゴンゴル三姉妹のひとり、ステーノは、マイとリムとマインの活躍により、撃退された。
 そんなステーノを、お姉さまと慕うメドー。
 彼女に望郷の念はあるのだろうか?
 いや、それはないだろう。
 メドーはジョーにぞっこんラブ。
 ジョーがこっ酷くメドーを振らない限り、メドーはジョーのそばに居続けるだろう。
 そしてジョーがメドーを振った時、マイの怒りが爆発する!


 ステーノの襲撃から、早三ヶ月が過ぎた。
 マイも戦場に駆り出されるのは、二桁を越えた。
 戦闘機による戦闘がほとんどだったが、ソウルブレイドによる剣撃戦、光線銃による銃撃戦、未開の惑星の資源調査などもあった。
 マイの部屋も、報酬で物があふれてきた。
 マイは主に、この時代のラノベを希望した。
 元の時代に戻った時、これらを書いて、ひと山当てる腹づもりだ。
 しかしこの召喚は、夢のようなもの。
 夢から醒めた時、その内容を覚えているだろうか?
 確かに、アニメ化したら面白そうな夢は、よくみるだろう。
 タイトルロゴや主題歌も、ばっちりくっきり出てくる夢も、よくみるだろう。
 しかしそんな夢も、永らく覚えている事は出来ない。
 話しはとぶが、マイの部屋にも、ボディクリーナーが設置された。
 これには申請から設置まで、長くかかった。
 元々マイの時代に無かった事が、ひびいた。
 だが他の召喚者達も、これは虐待だと騒いでくれたので、マイはシャワー生活からおさらば出来た。
 部屋を改築する際、この部屋からトイレが消えた。
 アバターである召喚者達は、食料を全てエネルギーに変換出来るので、排泄する事はないのだ。
 つか、美少女はうんちなんてしない。
 これが時代を経ても色あせない、この世の真理だった。
 そう、美少女はうんちしない!

「そういや最近、メドー来ないわね。」
 部屋で休暇をくつろぐマイは、何気なくアイに声かける。
 メドーの部屋が出来るまで、メドーはマイの部屋で暮らしていた。
 部屋が出来た後も、マイの部屋に入り浸った。
「どうしたのです?寂しいのですか?」
「んー、居なくなると、やっぱり寂しいわね。」
「以前はあんなに嫌がっていたのに、変われば変わるものですね。」
「ほんとだねー、僕もびっくりだよ。」
 コンコン。
 マイとアイの会話中、部屋のドアがノックされる。
 誰だろう?ノックするなんて珍しい。
 つか、誰もノックなどしない。
 普通にずかずか入ってくる。
 ジョーなんかは、マイがボディクリーナーを使用してる頃合いを見計らって、入ってきた。
 おかげでマイが使用中は、アイが部屋の外を見張るようになった。
 この時代に携帯電話の類いがあるのかは知らないが、マイ達はチームメンバーとしか面識がない。
 だから連絡をとるには、サポートAIを通して行うのが効率的だった。
 コンコン。
 ノックの間隔が短くなり、音量も大きくなる。
「早く出た方がよろしいのでは?」
「あ、そっか。」
 ノックなど普段は無い行動なので、マイはアイに言われるまで、対応の仕方が分からなかった。

「待たせてごめんなさーい。」
 マイは取り繕った笑顔で扉を開ける。
 扉の外では、強くノックをしようと、大きく振りかぶっていた。
 ノックの主は、顔を赤らめて、振りかぶった手を下げて、両手をお腹の下で重ね合わせる。
「あのー、どちら様ですか?」
 マイはその人物に、心当たりはなかった。
 背丈はマイより少し小柄。
 目鼻立ちの整った、凄い美人さん。
 長い黒髪は、まっすぐ伸びて、かなり美しい。
 額に巻いた鉢巻から、マイと同じ召喚者だと分かるくらい。
「私ですわ、マイお姉さま。」
 その声は、どこかで聞いたような気もするが、はっきりとは思い出せない。
 マイが頭の上にはてなマークを浮かべていると、悲しい表情で続ける。
「マイお姉さま、私の事など、お忘れになられたのですか?」
「ご、ごめんなさい。初めてお会いしたと思いますが。」
 マイには、ほんとに心当たりがない。
「そんな、あんまりですわ、マイお姉さま。」
 と言われても、マイには分からない。
「メドー?」
 マイの後ろから、アイが声をかける。
 見知らぬ美人さんの表情が輝く。
「はい!メドーです。おひさしぶりです。」
「ちょっと、違うでしょ。メドーって、もっと、こう、」
 メドーと呼ばれた召喚者は、マイの知ってるメドーとは違った。
 つか、メドーは幼い美少女だろ。
 こんな美人さんは、メドーではない。メドーではないのだが、言われてみれば、どこか面影がある。
「声紋は一致したわ。間違いなくメドーよ。」
 アイのその一言が、マイに確信を持たせた。
「メドー、今までどこ行ってたのよ。心配させないでよ。」
「マイお姉さま、私の事心配してくださってらっしゃれてたんですね。」
 メドーはマイに抱きつく。
 以前のメドーとは、身体の大きさも違う。
 マイは少しよろけてしまう。
「ご、ごめんなさい、マイお姉さま。私ったら、つい以前のノリではしゃいでしまいましたわ。」
 メドーは慌ててマイから離れる。
「それより説明してよ。しばらく見ないと思ったら、何があったの?」
「そ、それはですね、これからお兄さまからご説明賜れます。第三作戦室にご足労いただけませんか?」
 マイはメドーの言葉を聞いてて、頭が痛くなる。
「ちょっとアイ、これって翻訳機能がイカれてんの?」
 マイは頭の中でアイに呼びかける。
「さあ、どうなんでしょう?そこは私には分かりません。」
 アイはそう答えるが、マイにはお前の理解力に問題があるんだよ、と言われてるような気がしてならない。
「はあ、まいったね、こりゃ。で、お兄さまって誰なの?ジョーの事?」
 マイの言葉を聞いて、メドーの顔が赤くなる。
「そ、そんな、はしたないですわ。お兄さまのお名前を口にするなんて、きゃー。」
 メドーは両手を両頬にあてる。
 うん、ジョーだな。
 メドーをこんな性格にしたヤツは。
 そう思うとマイは、ジョーに文句のひとつやふたつ、いやここのつくらいは言いたくなる。

「じゃ、行こっか。」
 マイは以前のノリでメドーと手を繋ごうとする。
「マイお姉さま、どちらへでございましょうか?」
 メドーは、マイの趣旨が理解出来ない。
「どちらって、第三作戦室でしょ?」
 マイに言われて、メドーも慌てて理解する。
「す、すみません、マイお姉さま。私、他のお姉さま方もお誘いいたしまなければなりませんですの。マイお姉さまとご一緒出来ませんですの。すみません。」
 メドーは何度も頭を下げる。
「あー、分かったから頭を上げて。」
 分かったと言いつつも、メドーが何言ってるのかよく分からないマイ。
 とりあえずひとりで第三作戦室に向かう。といっても後ろからアイがついてくるのだが。
 メドーと一緒に他のお姉さま方とやらを、お誘いに行きたいとも思ったが、今は一刻も早く、ジョーに文句が言いたかった。
「じゃ、先に行ってるね。」
「は、はい。また後で、マイお姉さま。」
「あ、そうだメドー。」
「はい、なんでございましょう?」
「部屋入る時はノックしなくていいからねー。」
 マイはそうアドバイスするも、メドーは理解出来ない。
「それは、なぜでございましょう?」
「ここではノックするヤツなんて、いないからー。」
「分かりました、マイお姉さま。」
 メドーは、次のお姉さまの部屋へと向かう。
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