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宇宙召喚編

第37話 長女撃退!

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話。
 ゴンゴル三姉妹のひとり、ステーノは、マイ達がいる巨大宇宙ステーションに攻めてきた。
 これは、ゴンゴル三姉妹のひとり、メドーが殺された事が理由だった。
 しかし、その理由はただの口実で、仇打ちの気持ちなどなかった。
 その事が、マイの逆鱗に触れる。
 思わず駆け出すマイ。
 マイを死なせないと、後を追うリム。
 ひとり残されたマインも、自分の気持ちを整理して、マイ達の下へ駆けつける。


 リムが宇宙ステーションを飛び出した時、既にマイとステーノとの決戦は始まっていた。
 リムの予想通り、マイは苦戦していた。

 この宇宙ステーションに攻めてきて、防衛網にかかっていたステーノ。
 マイの戦闘機、シリウスアルファーワンが飛び出して来たのを見ると、防衛網を無効化した。
 ゴンゴル三姉妹のステルス干渉は、こんな防衛網など、問題としていなかった。
 マイはトライフォース用に、質量を持ったフォログラフ投影で伴機を投影する。
 だが、ステーノのステルス干渉は、マイのフォログラフの機体を消し去る。
 三機でのトライフォース展開が出来ないマイ。
 そしてトライフォース展開が出来ないのは、ステーノも同じである。
 ゴンゴル三姉妹のステーノは、本来三姉妹でトライフォースを形成する。
 ステーノの機体、ゴンゴルワンには、フォログラフ投影機能は搭載されていない。
 一機同士の戦いになるのだが、これは普通にステーノが有利だった。
 なぜなら、ゴンゴル三姉妹が揃って戦場に出る事は稀だった。
 単独任務が主だったのである。

「やっぱ一機じゃなんも出来ねーなあ!」
 マイを攻撃しながら叫ぶステーノ。
 ふたりの間に通信回線は開いてないので、ステーノの言葉はマイには伝わらない。
「おらおらあ、もう一機はどうしたあ!おじけづいたか!」
 丁度その時、ステーノのレーダーは飛び出してきた機影をとらえる。
「遅いぞ、アルファーツー!って、こいつはアルファーツーじゃない。シリウスベータエックスだと?」
「待たせたわね、マイ。」
「リム?リムなの?なんで来たのよ!」
 マイは仲間が駆けつけてくれた事は嬉しかったが、それよりも仲間が傷つく事の方が嫌だった。
「助けに来たのに、そんな事言わない!」
 リムもマイの気持ちを察する。だが、来るのを否定されるような言われ方は、少し納得いかなかった。

 シリウスベータエックス。
 シリウス構想のベータシリーズは、この時代の人間にも使えるよう模索されたシリーズである。
 生きた人間の魂をアバターに移す。その魂を元の身体に戻す事は、出来なかった。
 構想開始当時、魂の抜けた身体の保管方法がなかったのである。
 アバターを戦闘服にして着込む事で、転送システムに対応可能だったが、転送出来る状況は限られていた。
 瞬時の対応が不可能だったのである。
 転送準備に1秒はかかり、脱出用システムとしての運用は、厳しかった。
 リムは十年前、事故で寝たきりの植物状態になってしまった。
 この時代の医療でも、彼女の回復は不可能だった。
 そんな彼女を救ったのが、アバターへの魂召喚だった。
 リムのために作られたベータシリーズ最後の機体、シリウスベータエックス。
 ベータエックスは、アルファーシリーズとガンマシリーズの長所を併せ持つ。

 リムはサポートAIのナコとアイを介して、戦闘データをマイに送る。
「行くわよ、マイ!ちゃんとついて来なさい!」
「分かった!」
 ひとりでは現状打破は厳しい状況。
 マイは新しく提案されたリムの案に、素直に従った。
 いつもだったら、抵抗あったかもしれない。でも今は、そんな事言ってられない!
 リムはレーザー光線を乱射しながら、ステーノに突進。
 五十セントの距離まで詰めると(一セントは、戦闘機一機分の長さ)、そこから急上昇。
 同時にマイは、煙幕弾を放つ。そしてリムを追うように急上昇。
 ステーノの上方五百セントの距離まで上昇したら、リムは右旋回して急降下。マイは左旋回して急降下。
 そこからレーザー光線を乱れ撃つ。
 ステーノは前方へと逃げるが、マイ達も追尾しながらレーザー光線の乱れ撃ち。
 ステーノの機体と交差した直後、マイ達は機体を急反転。またもレーザー光線を乱れ撃つ。
「やるじゃねーか。これなら、メドーが堕とされたのも納得いくな。」
 マイ達の攻撃は、ステーノにことごとくかわされた。
「やっぱり同時攻撃はかわされるわね。次、波状攻撃でいくわよ!」
 今度はリムは急降下。そしてマイが急上昇。五百セントの距離からの反転攻撃は変わりないが、今度は時間差をつけての攻撃になる。
 ステーノの逃げ道を予測しながらの攻撃だ。
「けっ、その攻撃はくわねーよ。」
 ステーノは前方に逃れると、弧を描いて急加速。複数の多次元空間を渡り歩き、マイ達のレーダーから消えた。
「マイ、他次元レーダーと時空間多重レーダーよ!」
 リムは戦闘経験の浅いマイに指示を出す。
「分かった!」
 マイはアイのサポートもあって、レーダーを使いこなす。
 このふたつのレーダーにより、多次元空間にいるステーノの予想現在値が、おおまかに分かる。
 ふたりはその位置を攻撃するのだが、予想現在値は、あくまで大まか。ステーノは、その予測をはるかに超える!
 マイは全身の毛が逆立つのを感じる。レーダーはあてにならない。
 ならばここだ!
 マイはリムの後方へ機銃掃射!
 それが偶然、ステーノの放ったミサイルを迎撃する!
「マイ、分かったの?」
 助けられたリムは、マイの察しの良さに驚く。が、今度はリムにも分かる。マイの機体に向けた視線に、ミサイルが見える。
「あぶない!」
 リムは叫ぶが、マイの回避は間に合わない!

 ズガーン!
 マイの機体が爆発する。
 いや、爆発はマイの機体の僅か前方で起きる。
「あぶなかったわね。」
 爆発したのは、マインが投影したフォログラフの機体だった。
 この戦場に、マインも駆けつけた。
「くそ、見落としてたぜ!」
 ステーノはすぐさまステルス干渉。マインのフォログラフ投影を無効化する。
「マイン、来てくれたのね!」
「あら、私が来た時より、嬉しそうね。」
 喜びはずむマイの声に、リムも嬉しさにはずむ声でつっこむ。
「だって、来てくれるとは思わなかったから。」
「遅れてごめんね。私がマイを見捨てるわけないでしょ。」
「マイン、」
 マインの声は、最近の冷たい感じの声じゃない。マイの知ってるマインの声だった。その嬉しさに、言葉がつまる。
「マイ、泣いてる暇はないわよ。」
 そんなマイに、リムがつっこむ。
「な、泣いてないわよ!」
「そうなの?でも、これで三人そろったわ。」
 リムは話題をきりかえる。
「ええ、三人よ。分かるよね、マイ。この意味が。」
 マインはマイに尋ねる。
「分かるわよ、それくらい。」
 そして三人は、同時に叫ぶ。
「トライフォーメーション!」

 トライフォーメーション。
 三機からなる波状攻撃。
 人が一度に認識出来るのは、三個までと言われている。
 つまり、四機なら認識しようとしない。
 しかし、三機なら認識しようとしてしまう。
 高速戦闘時において、三機目を認識した時、最初の一機目を覚えているだろうか?
 その認識をずらすのは、思いのほか、容易いものである。

 乱戦の中、マインの放った特殊ペイント弾がステーノに命中。
 これで特殊スコープでの判別が可能になった。
「ふたりとも、擬似ブレイブよ!」
 リムがマイとマインに指示を出す。
 擬似ブレイブとは、以前ステーノを撃退した戦法だ。
 しかしそれは、ふたりの息があってないと出来ない戦法だ。
 今のふたりには、おそらく不可能な戦法だ。
「そのために、私がいるのよ。」
 不安がるふたりに、リムはそう言う。
「分かった、行こう!」
「うん!」
 マインの言葉に、マイは力強くうなづく。
 マイとマインは円を描く軌道でステーノを取り囲む。
 ステーノも気づく。
 この二機の直線内にいたらまずい!
 逃れようとするステーノを、リムが攻撃。
 直線内からは逃さない!

 リムが多次元空間にサポートアンカーを打つ事により、擬似ブレイブの可能時間が増す。
 千文の一秒の誤差も許されなかったが、その誤差が一秒まで許される。
 とは言っても、誤差は少ない方がいい。二分の一秒を超えると、効果はほとんどなくなる。
 サポートアンカーを打つリムの位置は、マイとマインの機体から等間隔の位置でなければならない。
 等間隔なら、どこでもよかった。
 しかし、一番効果を発揮するのは、マイとマインとの間も等間隔の位置だった。つまり、三機の機体が正三角形の頂点になる位置だった。

 三人は、ほぼ同時に多次元空間にアンカーを打った。
 ステーノの機体が多次元空間の亀裂にはまり、動きを止める。
 マイ達三機からの同時攻撃で、ステーノの機体は爆発する。
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