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宇宙召喚編

第33話 三女の行く末

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話
 ゴンゴル三姉妹と対峙した、マイとマイン。
 ふたりは擬似ブレイブを駆使してゴンゴル三姉妹のうち、ステーノとエアレーを討ち取った。
 そして今、残るひとり、メドーも討ち取ろうとしていた。


 メドーの機体は前方をマイの機体に食い込まれ、後方にマインの機体が食い込んでいる。
「チェックメイトね。」
 この時代でも通用するのか分からないが、マイは言ってみた。
「私の負けね、早く殺しなさい。」
「あら素直。」
 マイはメドーの応答に、少し驚く。
「このまま道連れに自爆でもするのかって思ってたのに。」
「嫌よ、そんなの。早く殺しなさい。」
「分かった。一撃でエンジンを貫いてやる。」
 マインはレーザーの出力調整に入る。三機の機体は密着状態なので、下手すれば誘爆の危険があった。
「戻ったら、他のふたりにも伝えて。何度来ても、結果は同じだと。」
 マインはそう最後の言葉をかける。だが、
「やだ、会いたくない、あんなお姉さま達には、もう会いたくない!」
 メドーは突然とり乱す。
「殺してよ、ここでちゃんと殺してよ!」
「いや、脱出用システムが作動するから、無理でしょ。」
 メドーの言葉に、マイはそう応える。しかし、メドーもゆずらない。
「あんた達、ステルス干渉も無効化したんでしょ?
 脱出用システムくらい、無効化出来るでしょ!」
「そんな無茶苦茶な。そんな事出来るの?アイ。」
 マイも、アイに問い合わせてみる。
「それに対する答えは、持ち合わせていません。」
「え、どゆ事?」
 マイは、アイの言ってる意味が分からない。
「可能だけど、倫理的にやっちゃダメって事でしょ。」
 マインが補足説明をしてくれた。

「早く殺してよ。うわーん。」
 メドーは泣きだした。
「どうしよっか、これ。」
 マイも、最早戦う気は失せている。
「放っておくのが、一番でしょうね。」
 マインもレーザーの出力調整をやめる。
「殺してよ、ねえ、なんで殺してくれないの、うわーん。」
 メドーは相変わらず泣きじゃくる。
「帰りましょう、マイ。」
 マインは機体を後方へ動かす。だが、メドーの機体に食い込んだままだ。
「ねえ、放っておいたら、どうなるのかな?」
 マイは、機体を引き抜こうと悪戦苦闘するマインに、聞いてみる。
「そんなの、レドリアのお迎えさんが、回収しに来るだけでしょ。」
「いやー!帰りたくない!お姉さま達に会いたくない!」
 マインの応えに、メドーは叫びだす。
「ああ、もう、うるっさいわね。あんたの事なんか、こっちには関係ないの!」
 マインも思わず叫び返す。
「ぐすん、ぐすん、殺して下さい。今ここで、殺して下さい。」
 メドーは音量こそ小さくなるが、言ってる内容は変わらない。
 マイは、少しかわいそうに感じる。
「ねえマイン、連れて帰っちゃだめかな。」
「ダメでしょ!」
 マインは即座に返す。
「また難癖つけてくるだけでしょ。」
「でも、なんかかわいそうじゃん。」
「それは関係ないでしょ。これはメドー達の問題よ。私達には関係ないわ。」
 マイとマインの議論は、平行線のままだ。

「お願いします。殺してくれないなら、助けて下さい。」
 メドーは、おしころした声を、なんとかしぼりだす。
「やっぱりかわいそうだよ、なんとかならない?アイ。」
 マイは今度はアイに、聞いてみる。
「はあ、仕方ないですね。ちょっとジョーと相談してきます。通信、切りますよ。」
 戦闘中のサポートAIは、基地内の専用のカプセル内から通信している。
 このカプセルから出るには、その通信状態を切らなければならない。
「いや、それなら私が聞いてこよう。」
 横からマインのサポートAIのミサが声かける。
「お前達は、なるべく繋がっているべきだ。この前の件もあるからな。」
 ミサはアイの代わりに通信を切り、ジョーに相談しに行った。
 この時代に召喚されて、まだ日の浅いマイにとって、サポートAIのアイとの通信切断は、自殺行為に等しい。
 先日も危うく、召喚が無効化させるとこだった。

 ミサとジョーとの相談中、戦場のマインとマイは、特にやる事がない。
 マインは機体のハッチを開けて、宇宙空間に出る。
 マインの機体がメドーの機体に食い込んでいるため、これをどうにかする必要がある。
 マインはソウルブレイドを取り出すと、メドーの機体に打ちつける。
 ソウルブレイドと言えど、機体がばっさり切断出来る訳ではない。
 どちらかと言うと、斧で木を伐るイメージだ。
 つまり、何度も打ちつける。その衝撃は、メドーの機体に響く。
 気落ちした今のメドーには、少し耐えがたいものだった。
 両耳をふさいで、うつむいてちじこまって震えるメドー。
 ふと、コックピットのハッチを誰かがノックしている事に気づく。
 メドーが顔を上げると、マイと目があった。
 と言ってもふたりとも、宇宙戦闘用のごっついヘルメットを装着してるため、お互いの顔は分からない。
 コックピットのハッチをノックしていたマイは、メドーが気づいてくれると、今度は『ここを開けて』とジェスチャーを送る。
 メドーはそれに気づいて、ハッチを開ける。
 マイは、右手をメドーに伸ばす。
 メドーはマイの右手をつかむ。
 メドーの右手は、マイの右手よりも小さかった。
 マイは掴んだメドーの右手を、思いっきり引っ張る。
 メドーの身体が機体から引きずり出され、反動でメドーとマイの身体は宇宙空間に浮く。
 そして、後方にあったマイの機体のコックピットに、すっぽり収まる。
 メドーの身体は、マイよりひと回り小さかった。
 マイの膝の上に座るには、収まりが良かった。
 マイはハッチを閉める。
 まだ震えが止まらないメドーの身体を、そっと抱きしめて、優しく声をかける。
「もう大丈夫だからね。」
「ほんとに、大丈夫なの?」
 メドーの不安は、まだ拭いきれない。
「大丈夫だって。僕がついてるから。」
「そんな安請け合い、しないで下さい。」
 そんなマイを、アイがたしなめる。
「まだどうなるか、決まっていません。無責任な発言は控えて下さい。」
「ひどいよ、アイ。アイには人の心がないの?」
「あなた、私がAIだって分かってて言ってるでしょ。」
「ばれた?でも、僕は絶対メドーを守るからね。」
 マイはメドーを抱きしめる腕に力を入れる。

「あの、誰と話してるんですか?独り言じゃないみたいだけど。」
「え?」
 サポートAIからの会話は、パートナーの脳内に直接語りかける。
 チーム戦の時は、複数のサポートAIとの会話も同様に、脳内で可能になる。
 だから、チーム外の人間には聞こえない。
「パートナーのサポートAIとだけど。」
 そう応えるマイには、疑問が浮かぶ。なぜ、こんな事を聞いてくるのか?
「パートナーって、どこにいるの?」
 メドーのその言葉にマイは確信する。
「あなたには、パートナーのサポートAIはいないのね。」
「サポート、なにそれ。」
「サポートAIってのはね、僕をサポートしてくれるAIの事だよ。」
 マイはそのまんま説明する。アイは、その事は言うなと注意する。
「そっか、そのサポートがあったから、私は負けたのね。」
「うん、アイがいてくれなかったら、危なかったよ。」

 そんな会話を続けていたら、マインから通信が入る。
「ジョーからの結果が出たわ。連れてこいだって。」
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