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宇宙召喚編
第20話 期待の超新星
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これは西暦9980年のはるか未来のお話。
来たる星間レースの参加メンバーが発表された。
それは、速さを競うよりも戦闘撃破に特化したメンバー構成だった。
そんな相手との対戦経験を持っていたマイン。
マイは、その驚きの戦闘結果に戦慄する。
「こりゃあ、まともに相手にしたら、たまったもんじゃないわね。」
ケイの言葉に、ただうなずくマイとユア。
「まあ、捕まったりはしないけどね。」
リムの言葉に、ケイとユアは何か気づく。
「なんで?ユアとケイがいなくなったら、僕嫌だよ。」
マイは気づかない。が、ユアとケイはマイにつっこむ。
「なんで私達だけ居なくなる事前提なのかな?」
「これだけ注目されたレースよ。ここで拿捕なんて出来ないわ。」
マインがそう言うと、マイも少しは安心する。
「でも、厄介な相手である事は、変わりないわよ。どうしたもんかねー。」
リムはそう言って考えこむ。
「そうよ、相手にしなければいいじゃない。これはレースなんだから。」
リムはそうひらめく。
「それだ。マイちゃん、私達は逃げて逃げて、逃げまくるわよ。」
「それでそのまま優勝だー」
落ち込み気味なマイを、ケイとユアがはげます。
「そうよね、私達の優勝だー。」
マイもその気になって叫ぶ。
「いや、その事なんだが。」
ここでジョーが水をさす。
「この勝負、相手はどちらも本気だ。絶対勝っちゃだめだぞ。」
その意味は、マイには分からなかった。
そうだろうなと言う表情をしているのは、マインだけだった。
「これまでの恒星系調査の出費比率を教えてやる。」
ジョーはそんなマイ達に説明する。
「グリムアの出費比率は48%、レドリアが47%だ。」
「え、じゃあうちの出費比率って。」
ユアは、その出費比率のあまりの低さに驚く。
「あちゃー、よくこれでレースに参加しようなんて思ったわね。」
ケイも、もっともな事を言う。
が、マイはそれがどうしたの、という思いでさらなる説明を待つ。
ジョーは、マイの察しの悪さにあきれ、逆に尋ねてみる。
「あー、マイ。これでうちが勝っちゃったら、どうなるかな?」
「少ない出費で恒星系の開発権得られてラッキー!」
「あほかー!」
マイの脳天気な答えに、思わずつっこむジョー。
「あほってなによ。」
マイもすぐに言い返す。
マイらしいやと、マインはクスリと笑う。
「あなた、面白いって言うか、バカよね。」
リムは笑いをこらえ、なんとか口にする。
「なんでよー。」
マイにはその意図が分からない。
「はあ、いいか、マイ。よく聞けよ。」
ここでジョーが説明する。
「どっちの陣営も、恒星系開発に、本気なんだ。これでうちが開発権を取ってみろ。新たな問題の火種にしかならんだろ。」
それでもマイは、納得出来ない。
「でも、うちだって出費してるよね?開発権勝ち取る権利はあるよね?」
「うちは蚊帳の外だろ。本来これは、レドリアとグリムアの争いだ!」
「じゃあ、なんで参加するの?勝つ気ないんなら、始めから出なければいいじゃない!」
そう叫ぶマイは、涙目だ。
このまま話してても、平行線のままだろう。そこで、ジョーはおれた。
「分かった。頑張って優勝してこい、期待の超新星!」
「はい!」
どうせ、ゴンゴル三姉妹には勝てないだろう。ジョーはそう思っている。
「任せて下さい!必ずゴンゴル三姉妹に勝ってみせます!」
「何?」
マイの言葉に、みんな一様に驚く。
「マイ、何か思いついたのか?」
優勝の現実味を帯びたその言葉に、ジョーは恐る恐る尋ねてみる。
「いえ、きっとやってくれます。ユアとケイが!」
とびっきりの笑顔でそう答えるマイ。
「その間に、期待の超新星マイがゴールして優勝です。」
マイがそう続けると、皆はあきれた笑みをうかべる。
しかし、マインだけはたまらず大笑い。
「あはははは、」
初めて見るマインのその姿に、皆は驚く。
マインはなんとか笑いをおさえて、マイに聞いてみる。
「マイ、超新星の意味知ってるの?」
「え?大型新人とか、そういう意味でしょ?」
「あはは、やっぱり知らないんだ。超新星ってね、星が最期に大爆発する事よ。あははは。」
そのまま笑いころげるマイン。何がそんなにツボったのか?
「えー、ひっどーい!」
マイはジョーにつめよる。
「僕なんて、爆発しちゃえって事ですか?大爆発を期待してるんですか?」
マイの瞳から、涙があふれてくる。
「あ、いや、期待してるだけだよ?超新星のマイに。」
「何よそれ。やっぱり爆発しちゃえって事?僕の事愛してるような事言ってたのに。」
「ば、バカ、今それ言うな!」
「バカって、やっぱり僕の爆発を期待してるんだ。うわーん。」
マイは床に崩れ、泣きだした。
それを見て、マインの笑いがぴたりと止まる。
そしてマイに抱きつく。
「ごめんね、マイ、ちょっと笑いすぎた。ごめんね。」
そのまま、ジョーを睨む。
「酷いよ、ジョー!あんな名前、付けなくてもいいじゃない、なんで付けたのよ!」
「あ、いや、そう言われても。」
ジョーはめんくらう。
そんなふたりを見ているふたりのサポートAIの、アイとミサ。
ふたりは顔を見合わせる。
私には無理だと、ミサは首をふる。
私は嫌ですよと、アイも首をふる。
おまえが適任なんだよと、ミサはアイの肩に手を置き、アイを見つめる。
マジですかと、アイはミサを見つめ返す。
その視線に耐えられず、ミサは視線をそらす。
アイはため息をついて、ミサの手をはらう。
マイとマインに歩み寄るアイ。
「あのー、よろしいですか、ふたりとも。」
アイの呼びかけに、マイとマインはアイの方を振り返る。
泣き疲れたマイの瞳。
怒りの色に少し涙の混じったマインの瞳。
やっぱきついですよと、アイはミサに視線を送る。
頑張れ、おまえなら出来ると、ミサは視線を返す。
意を決して、アイは言う。
「申し上げにくいのですが、超新星爆発って表現、この時代では使ってないんですよ。」
それを聞いて、マインの顔が赤くなる。
マイは意味が分からない顔をしている。
「星の最期を表す表現は、おふたりの時代のすぐ後で、別の表現に変わりました。
だからこの時代、超新星って表現は、大型新人ってくらいでしかありません。」
「バカ、私、すっごく恥ずかしいじゃない!」
アイの説明に、マインはそう言ってマイの身体に顔をうずめる。
それを見て、ミサは思う。
うん、私には無理だった。耐えられねー、あの状況ー。
マイは恥ずかしさに震えるマインの頭を撫でて、優しく声をかける。
「ありがと、マイン。私のために怒ってくれて。
私はもう大丈夫だから、マインも、ね。」
マイの言葉に、マインも小さくうなずく。
そしてふたりは立ち上がると、マイはジョーに頭を下げた。
「勘違いして、ごめんなさい。」
それを見て、マインもジョーに頭を下げる。
「か、勘違いして、ご、ごめんなさい。」
「ま、まあ、俺も悪かったよ。説明うまく出来なくてさ。
でも、期待してるのは確かだぜ。」
「はい、期待の超新星マイに、ご期待下さい。」
「なんか、期待ばっかだな。やっぱ変えるべきかもな。」
ジョーは自分で名付けたのだが、期待を表す単語の多さに、他の表現なかったのかと、ちょっと後悔。
「いえ、期待の超新星、今はこれでいいです。」
そんなマイを見て、ケイが叫ぶ。
「ようし、期待の超新星、爆発だぁ!」
「ちょ、ちょっと。」
ユアはこれはさすがにまずいんじゃと思ったが、
「超新星、爆発だぁ!」
マイもそう叫ぶ。
「みんな爆発だぁ、ゴンゴル三姉妹なんて、爆発だぁ!」
つられてリムもそう叫ぶ。
「爆発だぁ!」
今度はみんな一緒に叫ぶ。
いや、マイだけは叫ばず、何か考えこむ。
「やだ、今度は私が地雷踏んじゃった?」
そんなマイを見て、リムはぼそりと呟く。
「あ、そう言う意味じゃなくて。」
マイは重くなりかけた場の空気をはらうように、話しはじめる。
「ゴンゴル三姉妹は、そんなに脅威じゃないと思うんだ。問題なのは」
「えー?どうやって戦うってのよ?」
マイの発言をさえぎって、ケイが叫ぶ。
「レーダー使わないで戦うの?そんなの目をつぶって戦うようなもんよ?」
ケイの発言には、皆がうなずく。
現状、そんな不可能な打開案しかないから、悩んでいる。
「あ、いや、目をつぶっても、動く事は出来るじゃん。」
マイの言葉に、皆は驚く。つかあきれる。
「流石はカミカゼ日本人のマイ。言う事が違うな。」
マインの言葉に、マイはあわてて否定する。
「いやいや、目をつぶって戦うなんて、無理だと思うよ。
そりゃあソウルブレイド戦ならなんとかなりそうだけど、戦闘機だったら、無理でしょ。」
「え?ソウルブレイド戦で目をつぶるの?」
ケイはどん引く。
「まあ、他の感覚頼ればいいんだし、いけるんじゃね?」
ユアは少し考えて、なんかいけそうな気がした。
「馬鹿ね。ゴンゴル三姉妹戦をソウルブレイド戦で例えるなら、他の感覚もなしで戦うって事よ。」
「じゃあ、やっぱ無理かぁ。」
リムの指摘で、ユアも考えを改める。
「そ、そうじゃなくて!」
マイは、自分がなんかイタイ子扱いされ始めてるので、思わず叫ぶ。
「僕が言いたいのは、ダントッパの方が脅威じゃないかって事!」
「ダントッパ?なんで?」
ケイは、マイが何言ってるのかわからない。
「威戒王を倒した伝説の激突王だっけ?伝説だけあって、何かあるかもしれない。」
ユアは少し考えて、そんな気がしてきた。
「伝説と言っても、よそには伝わらない程の伝説よ?たいした事ないんじゃない?」
「そうだよね、なんかしょぼそう。」
リムの指摘で、ユアも考えを改める。
「でも、六色のブレイブ。これがトライフォースの陣形が六種類って事なら、確かに厄介ね。」
マインは、マイが思っている答えに辿り着く。
「そう、六色のブレイブ。」
そう言いながら、マイは右手の手のひらを縦に開いて、上下にゆっくりと振り動かす。
「もし、それにゴンゴル三姉妹のような能力があったら。」
と言って、右手の手のひらの動きを止める。
「そこへ、激突王!」
パシーん!
マインは、宙で止まったマイの手のひらを軽く殴る。
「あ」
皆にも、マイの言いたい事が伝わる。
確かに六色のブレイブは難解だ。
絶対勝ちにいくこの場面。少なくともゴンゴル三姉妹と同列に見るべきかもしれない。
だけど、そうは言っても。
「情報が少ないんだよなぁ。」
ジョーの言うこの言葉につきる。
「まあ、その時になれば分かるさ、今考えても仕方ない。
しっかり調整して、レースに備えよう!」
ジョーのその言葉が締めの言葉となり、解散となった。
「今日はマインの色んな表情が見れて、楽しかったね。」
リムはいたずらっぽく笑う。
「ちょ、」
マインは恥ずかしさがこみあげてくる。
「それ、私も思った。」
ケイも呼応する。
「なんか、楽しかったね。」
ユアも同様の感想を述べる。
「わ、忘れなさーい。」
マインは思わず叫ぶ。
「マイン、なんかごめん。」
マインのそんな行動の一翼を担った感のあるマイは、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「もう、マイまで。謝らなくていいから!」
星間レース開始まで、あと75時間をきった。
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「こりゃあ、まともに相手にしたら、たまったもんじゃないわね。」
ケイの言葉に、ただうなずくマイとユア。
「まあ、捕まったりはしないけどね。」
リムの言葉に、ケイとユアは何か気づく。
「なんで?ユアとケイがいなくなったら、僕嫌だよ。」
マイは気づかない。が、ユアとケイはマイにつっこむ。
「なんで私達だけ居なくなる事前提なのかな?」
「これだけ注目されたレースよ。ここで拿捕なんて出来ないわ。」
マインがそう言うと、マイも少しは安心する。
「でも、厄介な相手である事は、変わりないわよ。どうしたもんかねー。」
リムはそう言って考えこむ。
「そうよ、相手にしなければいいじゃない。これはレースなんだから。」
リムはそうひらめく。
「それだ。マイちゃん、私達は逃げて逃げて、逃げまくるわよ。」
「それでそのまま優勝だー」
落ち込み気味なマイを、ケイとユアがはげます。
「そうよね、私達の優勝だー。」
マイもその気になって叫ぶ。
「いや、その事なんだが。」
ここでジョーが水をさす。
「この勝負、相手はどちらも本気だ。絶対勝っちゃだめだぞ。」
その意味は、マイには分からなかった。
そうだろうなと言う表情をしているのは、マインだけだった。
「これまでの恒星系調査の出費比率を教えてやる。」
ジョーはそんなマイ達に説明する。
「グリムアの出費比率は48%、レドリアが47%だ。」
「え、じゃあうちの出費比率って。」
ユアは、その出費比率のあまりの低さに驚く。
「あちゃー、よくこれでレースに参加しようなんて思ったわね。」
ケイも、もっともな事を言う。
が、マイはそれがどうしたの、という思いでさらなる説明を待つ。
ジョーは、マイの察しの悪さにあきれ、逆に尋ねてみる。
「あー、マイ。これでうちが勝っちゃったら、どうなるかな?」
「少ない出費で恒星系の開発権得られてラッキー!」
「あほかー!」
マイの脳天気な答えに、思わずつっこむジョー。
「あほってなによ。」
マイもすぐに言い返す。
マイらしいやと、マインはクスリと笑う。
「あなた、面白いって言うか、バカよね。」
リムは笑いをこらえ、なんとか口にする。
「なんでよー。」
マイにはその意図が分からない。
「はあ、いいか、マイ。よく聞けよ。」
ここでジョーが説明する。
「どっちの陣営も、恒星系開発に、本気なんだ。これでうちが開発権を取ってみろ。新たな問題の火種にしかならんだろ。」
それでもマイは、納得出来ない。
「でも、うちだって出費してるよね?開発権勝ち取る権利はあるよね?」
「うちは蚊帳の外だろ。本来これは、レドリアとグリムアの争いだ!」
「じゃあ、なんで参加するの?勝つ気ないんなら、始めから出なければいいじゃない!」
そう叫ぶマイは、涙目だ。
このまま話してても、平行線のままだろう。そこで、ジョーはおれた。
「分かった。頑張って優勝してこい、期待の超新星!」
「はい!」
どうせ、ゴンゴル三姉妹には勝てないだろう。ジョーはそう思っている。
「任せて下さい!必ずゴンゴル三姉妹に勝ってみせます!」
「何?」
マイの言葉に、みんな一様に驚く。
「マイ、何か思いついたのか?」
優勝の現実味を帯びたその言葉に、ジョーは恐る恐る尋ねてみる。
「いえ、きっとやってくれます。ユアとケイが!」
とびっきりの笑顔でそう答えるマイ。
「その間に、期待の超新星マイがゴールして優勝です。」
マイがそう続けると、皆はあきれた笑みをうかべる。
しかし、マインだけはたまらず大笑い。
「あはははは、」
初めて見るマインのその姿に、皆は驚く。
マインはなんとか笑いをおさえて、マイに聞いてみる。
「マイ、超新星の意味知ってるの?」
「え?大型新人とか、そういう意味でしょ?」
「あはは、やっぱり知らないんだ。超新星ってね、星が最期に大爆発する事よ。あははは。」
そのまま笑いころげるマイン。何がそんなにツボったのか?
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マイはジョーにつめよる。
「僕なんて、爆発しちゃえって事ですか?大爆発を期待してるんですか?」
マイの瞳から、涙があふれてくる。
「あ、いや、期待してるだけだよ?超新星のマイに。」
「何よそれ。やっぱり爆発しちゃえって事?僕の事愛してるような事言ってたのに。」
「ば、バカ、今それ言うな!」
「バカって、やっぱり僕の爆発を期待してるんだ。うわーん。」
マイは床に崩れ、泣きだした。
それを見て、マインの笑いがぴたりと止まる。
そしてマイに抱きつく。
「ごめんね、マイ、ちょっと笑いすぎた。ごめんね。」
そのまま、ジョーを睨む。
「酷いよ、ジョー!あんな名前、付けなくてもいいじゃない、なんで付けたのよ!」
「あ、いや、そう言われても。」
ジョーはめんくらう。
そんなふたりを見ているふたりのサポートAIの、アイとミサ。
ふたりは顔を見合わせる。
私には無理だと、ミサは首をふる。
私は嫌ですよと、アイも首をふる。
おまえが適任なんだよと、ミサはアイの肩に手を置き、アイを見つめる。
マジですかと、アイはミサを見つめ返す。
その視線に耐えられず、ミサは視線をそらす。
アイはため息をついて、ミサの手をはらう。
マイとマインに歩み寄るアイ。
「あのー、よろしいですか、ふたりとも。」
アイの呼びかけに、マイとマインはアイの方を振り返る。
泣き疲れたマイの瞳。
怒りの色に少し涙の混じったマインの瞳。
やっぱきついですよと、アイはミサに視線を送る。
頑張れ、おまえなら出来ると、ミサは視線を返す。
意を決して、アイは言う。
「申し上げにくいのですが、超新星爆発って表現、この時代では使ってないんですよ。」
それを聞いて、マインの顔が赤くなる。
マイは意味が分からない顔をしている。
「星の最期を表す表現は、おふたりの時代のすぐ後で、別の表現に変わりました。
だからこの時代、超新星って表現は、大型新人ってくらいでしかありません。」
「バカ、私、すっごく恥ずかしいじゃない!」
アイの説明に、マインはそう言ってマイの身体に顔をうずめる。
それを見て、ミサは思う。
うん、私には無理だった。耐えられねー、あの状況ー。
マイは恥ずかしさに震えるマインの頭を撫でて、優しく声をかける。
「ありがと、マイン。私のために怒ってくれて。
私はもう大丈夫だから、マインも、ね。」
マイの言葉に、マインも小さくうなずく。
そしてふたりは立ち上がると、マイはジョーに頭を下げた。
「勘違いして、ごめんなさい。」
それを見て、マインもジョーに頭を下げる。
「か、勘違いして、ご、ごめんなさい。」
「ま、まあ、俺も悪かったよ。説明うまく出来なくてさ。
でも、期待してるのは確かだぜ。」
「はい、期待の超新星マイに、ご期待下さい。」
「なんか、期待ばっかだな。やっぱ変えるべきかもな。」
ジョーは自分で名付けたのだが、期待を表す単語の多さに、他の表現なかったのかと、ちょっと後悔。
「いえ、期待の超新星、今はこれでいいです。」
そんなマイを見て、ケイが叫ぶ。
「ようし、期待の超新星、爆発だぁ!」
「ちょ、ちょっと。」
ユアはこれはさすがにまずいんじゃと思ったが、
「超新星、爆発だぁ!」
マイもそう叫ぶ。
「みんな爆発だぁ、ゴンゴル三姉妹なんて、爆発だぁ!」
つられてリムもそう叫ぶ。
「爆発だぁ!」
今度はみんな一緒に叫ぶ。
いや、マイだけは叫ばず、何か考えこむ。
「やだ、今度は私が地雷踏んじゃった?」
そんなマイを見て、リムはぼそりと呟く。
「あ、そう言う意味じゃなくて。」
マイは重くなりかけた場の空気をはらうように、話しはじめる。
「ゴンゴル三姉妹は、そんなに脅威じゃないと思うんだ。問題なのは」
「えー?どうやって戦うってのよ?」
マイの発言をさえぎって、ケイが叫ぶ。
「レーダー使わないで戦うの?そんなの目をつぶって戦うようなもんよ?」
ケイの発言には、皆がうなずく。
現状、そんな不可能な打開案しかないから、悩んでいる。
「あ、いや、目をつぶっても、動く事は出来るじゃん。」
マイの言葉に、皆は驚く。つかあきれる。
「流石はカミカゼ日本人のマイ。言う事が違うな。」
マインの言葉に、マイはあわてて否定する。
「いやいや、目をつぶって戦うなんて、無理だと思うよ。
そりゃあソウルブレイド戦ならなんとかなりそうだけど、戦闘機だったら、無理でしょ。」
「え?ソウルブレイド戦で目をつぶるの?」
ケイはどん引く。
「まあ、他の感覚頼ればいいんだし、いけるんじゃね?」
ユアは少し考えて、なんかいけそうな気がした。
「馬鹿ね。ゴンゴル三姉妹戦をソウルブレイド戦で例えるなら、他の感覚もなしで戦うって事よ。」
「じゃあ、やっぱ無理かぁ。」
リムの指摘で、ユアも考えを改める。
「そ、そうじゃなくて!」
マイは、自分がなんかイタイ子扱いされ始めてるので、思わず叫ぶ。
「僕が言いたいのは、ダントッパの方が脅威じゃないかって事!」
「ダントッパ?なんで?」
ケイは、マイが何言ってるのかわからない。
「威戒王を倒した伝説の激突王だっけ?伝説だけあって、何かあるかもしれない。」
ユアは少し考えて、そんな気がしてきた。
「伝説と言っても、よそには伝わらない程の伝説よ?たいした事ないんじゃない?」
「そうだよね、なんかしょぼそう。」
リムの指摘で、ユアも考えを改める。
「でも、六色のブレイブ。これがトライフォースの陣形が六種類って事なら、確かに厄介ね。」
マインは、マイが思っている答えに辿り着く。
「そう、六色のブレイブ。」
そう言いながら、マイは右手の手のひらを縦に開いて、上下にゆっくりと振り動かす。
「もし、それにゴンゴル三姉妹のような能力があったら。」
と言って、右手の手のひらの動きを止める。
「そこへ、激突王!」
パシーん!
マインは、宙で止まったマイの手のひらを軽く殴る。
「あ」
皆にも、マイの言いたい事が伝わる。
確かに六色のブレイブは難解だ。
絶対勝ちにいくこの場面。少なくともゴンゴル三姉妹と同列に見るべきかもしれない。
だけど、そうは言っても。
「情報が少ないんだよなぁ。」
ジョーの言うこの言葉につきる。
「まあ、その時になれば分かるさ、今考えても仕方ない。
しっかり調整して、レースに備えよう!」
ジョーのその言葉が締めの言葉となり、解散となった。
「今日はマインの色んな表情が見れて、楽しかったね。」
リムはいたずらっぽく笑う。
「ちょ、」
マインは恥ずかしさがこみあげてくる。
「それ、私も思った。」
ケイも呼応する。
「なんか、楽しかったね。」
ユアも同様の感想を述べる。
「わ、忘れなさーい。」
マインは思わず叫ぶ。
「マイン、なんかごめん。」
マインのそんな行動の一翼を担った感のあるマイは、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「もう、マイまで。謝らなくていいから!」
星間レース開始まで、あと75時間をきった。
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ファンタジー
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異世界パルメディアは、大魔法文明時代。
だが、その時代は崩壊寸前だった。
なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。
マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。
追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。
ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。
世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。
無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。
化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。
そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。
当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。
ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。
【なろう440万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ
海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。
衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。
絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。
ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。
大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。
はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?
小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。
カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。
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