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宇宙召喚編

第10話 決着

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 ここは西暦9980年のはるか未来の、とある宇宙空間の実戦訓練場。
 この物語において、書いてみたいシーンが、今やっと書けた。
 ここにたどり着くまで、10話も要してしまった。
 そう、戦闘シーンが書きたかったのだ。


 試合は、明らかにマイの優勢だった。
 三機の機体を大きく動かし、三機をひと固まりで動かすユアを翻弄する。

「なぜ?なぜかわされる?」
 ユアは、現状何が起きてるのか分からなかった。
 初めてトライフォースを経験する相手に、自分が翻弄されている。
 ユアの戦術は、三機で相手の一機を狙う。
 一機づつ潰していけば、確実に勝てる。
 そのための陣形が、サークルエックスだ。そのはずだ。
 訓練では速攻からのサークルエックスで、ほぼ瞬殺している。
 こんなに長引く事はなかった。
「ユウ!何が起きてるの?答えて!」
 ユアはたまらずサポートAIのユウに助けを乞う。
「目の前で起きてる事が全てです。」
「分からないよ、なんなの!」
 ユウの答えに、ユアは叫ぶ。
「相手の陣形をよくご覧なさい。目の前で起きてる事が全てです。」
「陣形…」
 ユアは時空間レーダーに目を移す。
 マイの三機は、実によく動く。
「きれい…」
 いつしか、三機を頂点とした三角形に目を奪われる。
 その三角形が、生き物の様に形を変えて動いている。

 それは、ユアの陣形とは明らかに違う。
 マイの三機は、でたらめに動いているようにも、統率がとれて動いているようにも見える。
 生きている三角形の陣形。
 それが率直な感想だった。
「ユウ、あれがトライフォースなのね。」
 ユアは確認を兼ねて、サポートAIのユウに問いかける。
「そうです。あれはトライフォースの基本陣形です。」
「じゃあ、最初に教えなさいよ。」
「最初のレクチャーで、ユアが導き出したのが、サークルエックスです。
 あれもトライフォースの陣形のひとつです。
 実際ユアは、サークルエックスで好成績を修めてます。」
 ユウのそのフォローは、今のユアには受け入れがたかった。

「でも、本物のトライフォースには敵わないじゃない。」
 ユアはサークルエックスの陣形を解き、伴機の二機を飛ばして、三角形を作る事を心がける。
 三機を同時に、三角形を意識して動かすのは、意外と簡単だった。
 どちらかと言うと、角度と速度の調整が必要なサークルエックスの方が難しいくらいだった。
 戦場に浮かぶいびつな三角形をみていると、ふと、アイに対してポンコツと言ってしまった事を思い出す。
「どっちがポンコツなのか、分からないわね。」
「いいえ、アイは確かにポンコツです。すでに4人も戦死させてるのは、事実です。」
 ユウはゆずらない。
「ねえ、やっぱりふたりは仲悪いの?」
 アイを悪く言うユウに、ユアは聞いてみる。
「AIの私達に、そのような感情はありません。ただ、相性が悪いだけです。」
「それを、仲が悪いって言うんだよ。」

 マイも、ユアの動きが変わった事に気づく。
 そこで、無駄に大きく動かしてたのを、小さな動きに変える。
 それでもユアの機体を包囲するのを心がけて。
 ユアは、マイの機体のみに狙いをしぼり、マイの機体が中心にくる三角形の包囲陣を形作る。
 マイも三機からの集中砲火をかいくぐりながら、伴機二機を駆使してユアの機体を取り囲む。

 こうなったら、相手の包囲陣の完成を妨害して、こちらが早く包囲陣を完成させる事が、勝敗を決める。

 相手の一機を攻撃。
 その攻撃している機体を、背後から攻撃する。
 最初に攻撃されてた機体が反撃に転じると、その背後に機体が現れ、攻撃してくる。

 戦闘は泥沼化してくるが、ふたつの三角形の陣形は健在だ。
 この陣形を崩された方が、負ける。

 マイの攻撃を、ユアは大きく動いてかわす。
 マイはこれを勝機とみた。
 伴機の一機から、フォログラフの機体を投影。
 もう一機の伴機も接近させる。
 フォログラフの機体の周りを、二機の伴機が斜めに周回する。
 正面から見たら、伴機の軌道がエックスに見える。
 ユアは一瞬、マイの機体が増えた事に驚くが、突っ込んでくる三機の機体を見て、その驚きは消える。
 あれは、サークルエックス!
 その対処法なら、ユアは百も承知。
 ユアは二機の伴機を円を描くように周回させる。
 その円は次第にせまくなり、マイのサークルエックスの陣形へと突撃する。

 サークルエックスの破り方なら、周囲を周回する伴機にこちらの伴機をぶつけて破壊すればいい。
 その爆破を至近距離で受けた中心の自機は、その爆破に巻き込まれて誘爆するか、あるいは身動きとれなくなる。
 そこを、撃ち抜く!

 マイの機体三機が爆発する。
 と同時に、ユアの機体も撃ち抜かれて爆発した。

 マイの爆発した三機の機体は、伴機二機とフォログラフの一機。
 マイの自機はフォログラフ投影後、ユアの機体の死角になる位置にあった小惑星の影に隠れた。
 そして、三機のサークルエックスの陣形に気を取られるユアの隙をついて、ユアの背後に素早く旋回したのだった。

 こうしてユアとマイとの決戦は、マイの勝利で幕を閉じた。
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