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第30話 混色の四重封印

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 緑の龍脈のパワースポット鳳凰谷で、幼児退行して眠りにつくユウト。
 ユウトを救うべく混色の四重封印をする前に、誰もがフィーナに問いかける。
 ユウトの事を好きなんだろと。
 自分の気持ちに気づかないフィーナだが、皆にユウトの救出を懇願する。


「そうですね、ここでしのごの言ってても、ラチがあきません。」
 マドカに回復魔法をかけ終えたミクは、フィーナ達の元へと近づく。
 マドカは猫の様に伸びをして、立ち上がる。

「それにレスフィーナさんの涙を見たら、ユウト様怒りますよ。」
 フィーナは今、ユウトを助けてと涙を流している。
 ユウトに対する気持ちが分からないフィーナだが、なぜか涙がこぼれる。
 この意味にフィーナだけが、気づいていない。

「そうね、早く始めましょう、混色の四重封印を。」
 恋愛話しに脱線させてたコマチも、ミクの言葉にうなずく。
「ま、私はそのために駆り出された訳だし。」
 と言ってアスカは頭をかく。

 四人は自然と、ユウトを取り囲む様に定位置につく。
 ユウトの周りを時計回りに、フィーナ、コマチ、アスカ、ミクの順で取り囲む。

 アスカはおもむろに、帯剣していた退魔の剣を、マドカに投げ渡す。
「今のマドカでも、これくらいは出来るだろ。」

 四重封印で弱められた、魔素の淀みを祓う。
 青の龍脈で、アスカとフィーナが二重封印〔フェアリーデュエット)した時に、ユウトがやった行為。
 今は手の空いてるマドカの役目になる。

「腕輪無しの私にやらせるのか。
 相変わらず冗談きるいぜ。」
 マドカはニヤけながら、剣を鞘から抜く。
 それを見てアスカも、ほくそ笑む。

「で、四重封印〔フェアリーカルテット)と言っても、どのスタイルでいくんだ?」
 と、アスカが疑問を口にする。
 封印の儀式の踊りは、幾種類も存在する。

「混色の四重封印と言っても、基本はミクとコマチさんの、二重封印〔フェアリーデュエット)よ。」
 とフィーナが答える。
「それじゃあ、私とフィーナのいる意味ないじゃん。」
 とアスカが返す。

 フィーナは首を振る。
「よく見て、アスカちゃん。」
 フィーナの代わりに、コマチが声をかける。
「ルビーが色々してくれた、赤の魔素が見えない?」
「あ、あれか。」
 言われて、アスカも初めて気づく。
 緑の龍脈のパワースポットに、赤の魔素が僅かに混ざってる事に。

「あれを抑えるのが、私とアスカの役目よ。」
「なるほどなぁ、確かに緑の封印術だけじゃあ、無理だな。」
 アスカもここに来て、なぜ混色の四重封印なのかを理解する。

「で、結局、どのスタイルでいくんだ?」
 何だかんだ言っても、最初にアスカが提示した疑問の答えは、まだ出ていない。
「そうですね、純粋宝珠でいこうかと思います。」
 とミクが答える。

 浄化の腕輪を受け取ったばかりのミクは、これが初めての封印の儀式だった。
 妖精変化すら、やった事がない。
 だけど浄化の腕輪の導きで、今やるべき事が分かった。
 これは、元の持ち主である姉のマドカの思念が、浄化の腕輪を通じてミクにも届いた事を意味している。

「純粋宝珠。
 確かにユウトが淀んだ魔素まみれの今、それが一番かもね。」
 フィーナは龍脈で眠るユウトを見ながら、つぶやく。

「ええ、ユウト様の負担をこれ以上増やさないためにも、すぐに始めましょう。」
 ミクは腕輪をはめた左手をたてる。
 他の三人も同様に、腕輪をはめた左手を立てる。

 今まで色々イザコザはあったが、不思議と四人の心はひとつになる。
 これと言った合図もなく、ミクが腕輪の宝珠をトントン叩く。


 ちゃあらぁ、ちゃらららちゃーらー。

 他の三人も、同じ様に腕輪の宝珠を叩く。


 ふぅーわぁ、ちゃあらあ、ちゃらららちゃーらー。


 四人は後方宙返りをしながら、妖精変化して妖精体になる。


 わっつ!
 ちゃらうーんらぁちゃーららー。ちゃらららちゃーんちゃー。

 妖精体となった四人の身体から、音楽が鳴り響く。
 その曲に合わせて、四人は踊る。

 龍脈のパワースポットに沈むユウトを中心に、ふたつの魔法陣が浮かび上がる。
 ひとつは緑の魔法事。
 そしてもうひとつは、青の魔法陣。

 緑の姉妹は優雅に舞う。
 青の姉妹はテンポを早める。

 それに伴い、青の魔法陣は急速に収束していく。
「ぐぎゃああ!」
 青の魔法陣が収束すると、赤の魔素が弾き出される。
 その赤の魔素は、おぼろげながらルビーの姿をしている。

 ルビーの姿をした魔素は、すぐさまミクを襲う。
 この場の四人の中では、一番魔法力が弱いからだ。

「させねーよ。」
 ザシュっ。

 マドカが退魔の剣で、赤の魔素を斬り裂く。
 ルビーの姿をした魔素は、四散する。
 滅しきれてはいない。

 マドカの振るう退魔の剣は、アスカの物。
 青の魔素をはらんではいるが、使い手が緑の王女であるマドカのため、その効果は充分に発揮されなかった。

 四散した赤の魔素は、一番大きな塊に集まり、再びルビーの姿を形作る。
 その場所は、フィーナの近くだった。
 ルビーの姿をした魔素は、そのままフィーナを襲う。

 マドカは妹のミクを守ろうと、ミクの近くの魔素を斬り続けていた。
 赤の魔素が青の王女であるフィーナを襲うとは、完全な想定外だった。


「ぐぎゃああ!」
 そんなルビーの姿をした魔素が、青の魔素に包まれる。
 いつの間にかユウトが上体を起こし、左手をルビーに伸ばしている。
 ユウトの左手には、退魔の腕輪がはめられている。
 その退魔の腕輪の宝珠から、青の魔素が放たれていた。

 まるでフィーナを守るみたいに。
 ユウトの腕輪の宝珠が、輝きを増す。
 ルビーの姿をした赤の魔素は、そのまま消滅してしまった。



次回予告
 世界には歴史があり、脈々と受け継がれた文化がある。
 これを破る時、軋轢が生じる。
 旧世代の文化も、時代の変化に対応しなければならない。
 そんな時人は、停滞を好む。
 時代の変化には、常に犠牲がつきまとう。
 そう、緑の聖地に踏み込んだ他国の王女も例外ではない!
 ちょっと緑の王妃さん、何勝手に盛り上がってるのかしら。
 あら、青の王妃さん、お久しぶりですわね、おほほ。
 あなたを助けようとしたフィーナちゃん達に何かあったら、承知しませんから。ギロっ。
 おほほ、それはどうかしら。それは、緑の魔素が決める事。
 どうなるかは、龍脈を流れる魔素次第。
 あらあら、緑の王妃さんには、龍脈の魔素を鎮めるチカラは無いのね。
 な、なんですって、失礼な。
 次回、異世界を救ってくれと、妖精さんに頼まれました、ふたつの二重封印。
 お楽しみに。

※今回で四重封印終わらせるつもりでしたが、終わりませんでした。
 この調子だと、次回もどうなるか分かりません。
 この予告と異なる可能性もありますが、ご了承下さい。
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