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荒野を行く
第220話 勇者旅立つ
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魔王を倒した事を、王様に報告する俺。
そこに待っていたのは、自由意志を失っていない人々の歓声。
そして今後の俺の、身の危機だった。
王様がこの国を治めろって言うが、それは丁重に断った。
俺は早々に旅立つ事にした。
「待ってくださいませ!」
そこへなんと、ローザが駆けつける!
俺は思わず見とれてしまう。
女子三日会わずんば刮目して見よ、と言うのは、この事か。
10歳そこらのくせに、普通にかわいすぎる。
「勇者様の旅に、ローザもお供しとうございます。」
な、なにぃ!
ローザの言葉に、この場にいるみんなが驚く。
王様は怒りを隠しきれない。
周りの観客も、ざわめく。
そして俺は、心臓を冷たい手で鷲掴みされた感覚だ。
ローザは俺を勇者様と呼び、自分の事をローザと言う。
これは、自由意志を失った時の反応。
ローザだけ、魔王の支配から逃れられなかったのか。
俺が助けたかったローザだけ、助けられなかったのか!
それが怖くて、ローザの盗聴器で確認出来なかった。
「このローザも、連れて行って下さいますね?」
ローザはあのすまし顔のまま、俺に聞いてくる。
こんなの、答えはひとつだ。
「いいえ。」
俺は呆然と、そう答える。
「そんな、ひどい。このローザも、連れて行って下さいますね?」
ローザは再び聞いてくる。
「いいえ。」
俺の答えは変わらない。
「そんな、ひどい。このローザも、連れて行って下さいますね?」
ローザは再び聞いてくる。
俺が答える前に、ローザは俺に近づいてくる。
「狡兎死して走狗煮らる。」
ローザはそうつぶやく。
「え?」
俺はハッとする。
ローザの表情は、失われていない!
「いいからはいって答えろよ。この国に留まったら、ユウタは殺される。」
そうつぶやくローザの表情は、俺の知るローザだ。
「それにおまえは、ドラゴンさんの仇。一生逃がさない。」
ローザの言葉に、嬉しさの感情が心の底から湧き上がる。
「はい。」
俺は感情の高まりを抑え、そう答える。
そしてローザは自然の流れで、俺にお姫様抱っこさせる。
「きゃー、勇者様素敵ぃー。」
「くう、俺たちのローザ姫がー。」
「この場ではまずい。先回りするぞ。」
観客達が盛り上がる。
「そうか。勇者ユウタとローザ姫の、新たな旅立ちじゃー。」
王様もそう宣言する。
そう、宣言するしかなかった。
「行って。」
お姫様抱っこさせたローザが、つぶやく。
「え、祝賀会とか、どーすんの。」
俺も小声で聞いてみる。
「そんなのに付き合ってたら、ユウタは殺されるわよ。」
「分かった。」
俺は城の出口に向かい、歩き出す。
ローザは観客に笑顔で手を振る。
そして兵士達が楽器を奏でる。
ぱっぱらぱぱぱ、ぱぱぱぱぱぱ、ぱぱぱ、ぱらら、ぱぱぱぱららーらん。
ぱっぱぱっぱ、ぱっぱらっぱー、ぱららぱっぱぱぱあららららん。
俺とローザは、オオミヤ城を後にした。
そこに待っていたのは、自由意志を失っていない人々の歓声。
そして今後の俺の、身の危機だった。
王様がこの国を治めろって言うが、それは丁重に断った。
俺は早々に旅立つ事にした。
「待ってくださいませ!」
そこへなんと、ローザが駆けつける!
俺は思わず見とれてしまう。
女子三日会わずんば刮目して見よ、と言うのは、この事か。
10歳そこらのくせに、普通にかわいすぎる。
「勇者様の旅に、ローザもお供しとうございます。」
な、なにぃ!
ローザの言葉に、この場にいるみんなが驚く。
王様は怒りを隠しきれない。
周りの観客も、ざわめく。
そして俺は、心臓を冷たい手で鷲掴みされた感覚だ。
ローザは俺を勇者様と呼び、自分の事をローザと言う。
これは、自由意志を失った時の反応。
ローザだけ、魔王の支配から逃れられなかったのか。
俺が助けたかったローザだけ、助けられなかったのか!
それが怖くて、ローザの盗聴器で確認出来なかった。
「このローザも、連れて行って下さいますね?」
ローザはあのすまし顔のまま、俺に聞いてくる。
こんなの、答えはひとつだ。
「いいえ。」
俺は呆然と、そう答える。
「そんな、ひどい。このローザも、連れて行って下さいますね?」
ローザは再び聞いてくる。
「いいえ。」
俺の答えは変わらない。
「そんな、ひどい。このローザも、連れて行って下さいますね?」
ローザは再び聞いてくる。
俺が答える前に、ローザは俺に近づいてくる。
「狡兎死して走狗煮らる。」
ローザはそうつぶやく。
「え?」
俺はハッとする。
ローザの表情は、失われていない!
「いいからはいって答えろよ。この国に留まったら、ユウタは殺される。」
そうつぶやくローザの表情は、俺の知るローザだ。
「それにおまえは、ドラゴンさんの仇。一生逃がさない。」
ローザの言葉に、嬉しさの感情が心の底から湧き上がる。
「はい。」
俺は感情の高まりを抑え、そう答える。
そしてローザは自然の流れで、俺にお姫様抱っこさせる。
「きゃー、勇者様素敵ぃー。」
「くう、俺たちのローザ姫がー。」
「この場ではまずい。先回りするぞ。」
観客達が盛り上がる。
「そうか。勇者ユウタとローザ姫の、新たな旅立ちじゃー。」
王様もそう宣言する。
そう、宣言するしかなかった。
「行って。」
お姫様抱っこさせたローザが、つぶやく。
「え、祝賀会とか、どーすんの。」
俺も小声で聞いてみる。
「そんなのに付き合ってたら、ユウタは殺されるわよ。」
「分かった。」
俺は城の出口に向かい、歩き出す。
ローザは観客に笑顔で手を振る。
そして兵士達が楽器を奏でる。
ぱっぱらぱぱぱ、ぱぱぱぱぱぱ、ぱぱぱ、ぱらら、ぱぱぱぱららーらん。
ぱっぱぱっぱ、ぱっぱらっぱー、ぱららぱっぱぱぱあららららん。
俺とローザは、オオミヤ城を後にした。
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