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荒野を行く

第210話 勇者幻の金水晶の力をかりる!

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 魔王の城の地下宮殿に居た魔王を自称するおっさんは、実は魔王だった!
 竜王と言う真の姿を現した魔王は、俺の三倍ほどの背丈がある。俺はその体格差に苦戦する!


「はあ!」
 俺は竜王の吐く炎の攻撃から抜け出し、ウラワの剣で攻撃する!

 ズガ!

 竜王の右脚に斬撃を叩き込む。
 が、竜王はニヤりとほくそ笑むと、右脚で俺を、踏みつける!

「ぐは、」
 散乱した瓦礫に叩きつけられる俺は、回復呪文を唱えるか、悩む。

 まだ数撃は、竜王の攻撃に耐えられる。
 しかし俺のマジックパワーは、そう何度も回復呪文を唱えられない。
 そう、このままだと勝ち目が無いのは確かなのだ。

「あきらめるな、サーイターマルドの勇者よ。」

 俺の脳裏に、誰かの声が響く。
 ふと、瓦礫の下から、何かが光るのに気づく。
 それは、幻の金水晶だった。

「サーイターマルドの勇者よ。我が弟の愚行を、正してくれ。」
「いいのかよ。あんたの弟だろ。」
 金水晶の声に、俺は反論する。

「我らは、サーイターマルドを守護するのが、本来の使命。それをあやつにも思い出させてやってくれ。」
「それに、ローザを傷つけるヤツは、許せない。」
「え?ドラゴンさん?」
 金水晶からの声に、あのドラゴンさんの声が混じる。

「そうだユウタよ。我の代わりに、ローザを守ってくれ。」
「あ、あんたの代わりは、ごめんだぜ。俺は俺の意志で、ローザを守る。」

 俺は無意識に、幻の金水晶に右手を触れる。
 俺が瓦礫に叩きつけられ、金水晶に触れるまで、まばたきする間もなかった。

 幻の金水晶は突然、激しい輝きを放つ!
 その光りは、傷ついた俺を癒してくれる。
 俺のヒットポイントとマジックパワーが、全回復する。
 と同時に、竜王が悲鳴をあげる。

「ぐぎゃああ!
 な、なぜだ。なぜ兄者達が、俺の邪魔をする!」
 竜王は俺の背後に、ふたりの兄の姿が見えるようだった。

「末弟よ。まだ分からないのか。母なるゴッドドラゴンから受け継いだ、我らが使命を。」
「無駄だよ兄者。影の騎士の呪縛は、兄者の光りをもってしても、浄化出来なかった。」
「そうか。ならばやはり、こやつは滅ぼさなければならないのか。」
「済まぬ兄者。兄者が我らを救ってくれたのに、我は弟を守る事が出来なかった。」
「気にやむな、弟よ。これは心の弱かった、あやつのせい。そして母なるゴッドドラゴンの意志を伝えきれなかった、我のせい。」

「ごちゃごちゃうるせーぞ、てめーら!」
 竜王の怒号とともに、幻の金水晶の光りが消える。
 金水晶は輝きを失い、濁った色になる。

「はあはあ、要らぬ邪魔をしやがって。兄なんて物はな、弟の踏み台になるために存在するんだよ!」
 と言う竜王の背丈は、半分ほどに縮んでいた。

 まだ俺より高いが、まともに戦える高さになった!
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