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荒野を行く

第203話 勇者幻の金水晶を見る

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 魔王の城の地下七階、ここは荘厳なルギア神殿の名残りを見せていた。
 元は見事だった地下庭園も、手入れする者がいなければ、荒れ放題だった。


 離宮の奥へと進む俺に、容赦なく魔物達が襲ってくる。
 今の俺には、一撃で倒せるこいつら。
 本当にうざったい。

 歩けばヒットポイントが回復するウラワの鎧の効果で、俺のヒットポイントが全快する。
 と同時に、離宮の最奥にたどり着く。

 ここには玉座があって、ひとりのおっさんが座ってた。
 こいつが魔王かとも思ったが、そんなはずないだろう。

 魔王は別名竜王とも呼ばれている。
 少なくともルギア様は、竜王と呼んでんいた。

 竜王と呼ばれるからには、どこかドラゴンっぽい所があるはず。
 だけど目の前にいるのは、ただのおっさんだ。

 黒っぽいフードを被り、そこから見えるご尊顔は、普通にオタクっぽい。
 ゆったりとしたローブを着ているが、ぽっこりしたお腹は隠しきれていない。

 だけどこの場にいるおっさんが、ただのおっさんである訳がない。
「影武者か。」
 俺はボソりとつぶやく。

 玉座に座ったおっさんは、閉じてた目を開けて、俺を見る。

「よくぞここまでたどり着いたな、勇者ユウタよ。」
 おっさんは俺に話しかけてきた。

「なあ、魔王はどこにいる。俺は魔王を倒しに来た。」
 俺はウラワの剣に手をかけながら、問いただす。
 もしかしたら、この玉座の後ろにも、地下へと続く階段があるかもしれない。
 その奥にこそ、真の魔王がいるはず。ここで時間を浪費する訳にもいかない!

「おいおい、おまえの目の前にいるだろう。私が魔王だ。」
「いや、おまえ影武者だろ。ちゃんと答えろよ。魔王はどこだ。」

 別に影武者を殺してもいいが、普通の魔物と違い、話しの通じるヤツを殺すのは、どこか抵抗がある。

「ふふふ、影武者なら、こんな物は持っていないだろ。」
 ほくそ笑むおっさんの背後に、何かが浮かぶ。

 くすんだ黄金色した、いびつな卵?
 なんだこれ?

「ふ、知らんのか。これが幻の金水晶だ。」

 え、何?
 幻の金水晶?
 なんだそれ。

 確か、月のプリンセスが持ってるのは、銀水晶だろ。金水晶ってなんだよ。

「ふふふ、ははは、ふわーっはっはぁ!」
「何がおかしい!」

 おっさんはなぜか急に笑いだす。

「いやおまえ、物語のあらすじも知らんのか。」
 おっさんは笑いをこらえてる。なんかムカつく。
 つか、あらすじか。そんなの読み飛ばすわ。
 とは言え、このおっさんムカつくから、確認してみるか。

 ふむふむ。
 なるほど。
 いやちょっと待て。

 闇の魔王って、15年前に俺の故郷であるムサシの街を襲ったんだろ?
 で、その頃ローザ姫を連れ去ったのか?
 じゃあ、俺が見たローザは、赤ちゃんの時にさらわれたのか?
 どう見てもあいつ、10歳くらいなんだが。

 計算が合わないぞ。どう言う事だ、これは!
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