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荒野を行く

第191話 勇者苦戦する

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 虹の橋を使いついに俺は、魔王の島へと足を踏み入れた。
 そこで俺を待っていたのは、魔王軍六魔将のひとりスズキくんの息子、スズキークジュニアだった。


 うーん、やけに早い再会だったな。
 まあ彼も魔王に恨みがある者。ともに共闘して魔王を倒すのも、悪くない。

「まあな。」
 前回のなかなかやるな、というスズキークジュニアの台詞に対して、俺はそう答えた。

 対してスズキークJr.ジュニアは、俺の前に不敵に立ち塞がる。
 俺の通り道を、完全にふさぐ。

「おい、邪魔だよ。」
 スズキークJr.ジュニアは俺と同じく、魔王に敵対する者。のはず。
 そいつがなんで、俺の邪魔をするのだろう。

「お前、何か勘違いしてねーか?」
 スズキークJr.ジュニアはニヤけながらも、凄みをきかす。
 俺はそれで、全てを悟る。

「そうか、お前も魔王軍の一員なんだな。」
 俺は炎の剣の柄に手をそえる。

「いーや、俺は魔王軍の一員じゃねーよ。」
 スズキークJr.ジュニアの語気にも、怒気が混じる。
「俺は、あんな魔王なんて認めてねぇ!そして勇者ユウタ、お前はオヤジのかたきだ!」
 スズキークJr.ジュニアは、全身を覆う黄色い布きれを、脱ぎ捨てる。
 デブだと思ったその体格は、意外にもヒョロガリだった。

「筋肥大!」
 スズキークJr.ジュニアのそのひと声で、マッチョな姿に体格を変える!

「力こそ、パワー!」
 スズキークJr.ジュニアは一気に距離をつめ、渾身の右ストレートを放つ!
「ぐ、」
 俺は水鏡の盾でガードするが、ガードの上から体力を削られ、後方に吹っ飛ぶ!

 魔法職だと思ってたスズキークJr.ジュニアだが、意表を突いたパワーファイターだった。

「それでかわしきったつもりか!」
 スズキークJr.ジュニアは素早く両手を動かして、印を結ぶ。
「くらえ、ピカラリア!」
 なんとスズキークJr.ジュニアは上級電撃呪文ピカラリアを唱える!

 どごーん。
「ぐは、」
 俺はかなりのダメージを受ける!

「ピカラリアだと?」
 俺の知る限り、ここサーイターマルドでその呪文を使えるヤツは、存在しないはず。
 俺も使えるぴかぴーかが、サーイターマルドでの最強の雷撃呪文だ。まあぴかぴーか自体、中級雷撃呪文なのだが。

「驚いたか、勇者ユウタ。」
 スズキークJr.ジュニアはニヤけながら、近づいてくる。

 確かに、驚いている。
 こいつの父、スズキくんもぴかぴーかが最強呪文だった。
 スズキくん相手なら、軽く倒せると思ってた。

「く、こなくそ!」
 無防備に近づくスズキークJr.ジュニアに、俺は炎の剣を振り下ろす!
 だがスズキークJr.ジュニアはジャンプして俺の一撃をかわす。
 そしてそのまま前方宙返りで、俺の背後に回る。
 着地する前に、丸めた体勢から両脚を伸ばして、俺の背中に蹴りを入れる!

「回転龍尾脚!」
「ぐは、」
 今度は前方へと吹っ飛ばされる!

 な、なんだこいつ。
 オヤジ以上に魔法職を極め、その上体術まで極めてやがる!
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