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伝説の次元空間編
第177話 勇者帰還する
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過去のサーイターマルドを模した次元世界に来た俺は、ユミコから照光子の杖を受け取った。
この次元世界を消すためのボタンを、俺とユミコのふたりで押した。
俺は眩しい光りに包まれる。
「ユミコ。」
俺はユミコの名をつぶやく。
光りが収まると、俺は元の次元世界で、ごついマッサージチェアーに座ってた。
付属のヘルメットを外すと、俺の膝の上には照光子の杖と水鏡の盾があった。
俺は戻ってきたんだ。サーイターマルドに。
「ユミコ。」
俺は隣りの手術台に横たわるユミコに、視線を向ける。
「ユミコ?」
そこに居るユミコを見て、俺は愕然とする。
ユミコの姿は、人形と言うかマネキンと言うか、人間と感じさせる事はなかった。
「ユミコ、まだ寿命が尽きる時間じゃないだろ。」
俺の目からは、涙が流れる。
手術台に横たわるユミコは、透明なカプセル状の覆いに覆われている。
この覆いの取り除き方が分からない俺は、過去を模した次元世界から持ち帰った、照光子の杖と水鏡の盾をユミコの覆いの上に置く。
「ユミコ、過去のユミコから、もらってきたんだよ。」
俺はユミコに話しかけながら、宝箱にしまった装備品を取り出す。
「過去のユミコも、綺麗だったよ。」
俺は淡々とタカスナの鎧を装備する。
「俺の方がタカスナよりイケメンだと思うけど、ユミコはタカスナの方が好きなんだろ?」
俺は炎の剣を装備する。
「うん、勇者としてのウツワは、タカスナの方が上だと思う。
アレって、共に旅してきた仲間達と、色々な困難を乗り越えてきたからだろうね。ひとり旅だった俺には、到底及ばないよ。」
俺は騎神のいななき、聖なる霧吹き、勇者の証を手にする。
「ユミコ。ユミコはあのタカスナと、いっぱい旅をしてきたんだね。」
俺はやくそう8と魔法の鍵6を取り出す。
「俺も、いっぱい旅をしたかったよ。」
俺は宝箱に残った630円を、握りしめる。
「ううう、」
そしてそのまま嗚咽する。
「ユミコ。この旅が終わったら、一緒に暮らしたかった。ううう。」
俺の目から、次々と涙が出てくる。
今手にしてる630円をしまったら、俺はここを出て行く。
もっとユミコのそばに居たいのに!
俺はのっそりと立ち上がる。時間をかけて。
「それじゃあ、行ってくるね。」
俺はユミコの覆いの上に置いた水鏡の盾を装備する。
そして照光子の杖を手にする。
俺は最後にもう一度、ユミコの顔を見る。
クールビューティーだった面影もない、人形の様なユミコ。
って、あれ?
そんなユミコが、涙を流してるぞ。
「もうユウタのバカ。変な事言ってないで、とっとと行きなさいよ。」
涙に震えるユミコの声。
それを発しているのは、目の前の人形ではなかった。
この次元世界を消すためのボタンを、俺とユミコのふたりで押した。
俺は眩しい光りに包まれる。
「ユミコ。」
俺はユミコの名をつぶやく。
光りが収まると、俺は元の次元世界で、ごついマッサージチェアーに座ってた。
付属のヘルメットを外すと、俺の膝の上には照光子の杖と水鏡の盾があった。
俺は戻ってきたんだ。サーイターマルドに。
「ユミコ。」
俺は隣りの手術台に横たわるユミコに、視線を向ける。
「ユミコ?」
そこに居るユミコを見て、俺は愕然とする。
ユミコの姿は、人形と言うかマネキンと言うか、人間と感じさせる事はなかった。
「ユミコ、まだ寿命が尽きる時間じゃないだろ。」
俺の目からは、涙が流れる。
手術台に横たわるユミコは、透明なカプセル状の覆いに覆われている。
この覆いの取り除き方が分からない俺は、過去を模した次元世界から持ち帰った、照光子の杖と水鏡の盾をユミコの覆いの上に置く。
「ユミコ、過去のユミコから、もらってきたんだよ。」
俺はユミコに話しかけながら、宝箱にしまった装備品を取り出す。
「過去のユミコも、綺麗だったよ。」
俺は淡々とタカスナの鎧を装備する。
「俺の方がタカスナよりイケメンだと思うけど、ユミコはタカスナの方が好きなんだろ?」
俺は炎の剣を装備する。
「うん、勇者としてのウツワは、タカスナの方が上だと思う。
アレって、共に旅してきた仲間達と、色々な困難を乗り越えてきたからだろうね。ひとり旅だった俺には、到底及ばないよ。」
俺は騎神のいななき、聖なる霧吹き、勇者の証を手にする。
「ユミコ。ユミコはあのタカスナと、いっぱい旅をしてきたんだね。」
俺はやくそう8と魔法の鍵6を取り出す。
「俺も、いっぱい旅をしたかったよ。」
俺は宝箱に残った630円を、握りしめる。
「ううう、」
そしてそのまま嗚咽する。
「ユミコ。この旅が終わったら、一緒に暮らしたかった。ううう。」
俺の目から、次々と涙が出てくる。
今手にしてる630円をしまったら、俺はここを出て行く。
もっとユミコのそばに居たいのに!
俺はのっそりと立ち上がる。時間をかけて。
「それじゃあ、行ってくるね。」
俺はユミコの覆いの上に置いた水鏡の盾を装備する。
そして照光子の杖を手にする。
俺は最後にもう一度、ユミコの顔を見る。
クールビューティーだった面影もない、人形の様なユミコ。
って、あれ?
そんなユミコが、涙を流してるぞ。
「もうユウタのバカ。変な事言ってないで、とっとと行きなさいよ。」
涙に震えるユミコの声。
それを発しているのは、目の前の人形ではなかった。
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