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伝説の次元空間編

第166話 勇者壁ドンされる

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 過去のサーイターマルドを模した次元世界に来た俺は、タカスナ公認のもと、ユミコとふたりきりでデートさせられてしまう!
 いいのかタカスナ。俺は身をひくつもりだったのに。


「さあ、着いたわ。」
 俺とユミコは、ある街の入り口に転移する。
 この街は、俺の知らない街だった。
 今まで薄暗い森のそばだったのに、ここは普通に明るかった。
 ここは、サーイターマルドではないのか?

 目の前に広がる草原の草花。
 突き抜ける青い空。
 俺の身を包む爽やかな風。

 どれも俺には体験した事のない物だった。
 だけど、どこか懐かしい感じがする。
 勇者ウラワは、別の世界から来たと言う伝説だが、ここがタカスナ達の世界だろうか。

「何してるの。とっとと行くわよ。」
 ユミコはとっとと街に入る。
「あ、待ってよユミコ。」
 俺はユミコの後を追って街に入る。
 そして驚く。

 なんだこの街は。
 俺が見てきたどの街よりも、活気がある。
 立ち並ぶ家々や舗装された道。それに手入れされた花壇。
 道を行く人々の服装も洗練されていて、野良猫にも気品を感じる。
 そして何より、街の奥に見えるお城。

 どう見ても、サーイターマルドより文化水準は進んでいる。

 街の様子に驚く俺を無視して、ユミコはとっとと歩く。
「待ってよユミコ。」
 俺が呼びかけても、ユミコは気にもとめない。
 俺は走って、ユミコに追いつく。
「ま、待ってってば、ユミコ。」
「あんたに、その名で呼ばれたくないわ。」
 ユミコはプルプル震えてる。

 うーん、折角ふたりっきりになれたのに。
 タカスナも居ないし、思いっきりイチャつけるのに。
 あ、まだ会って間もないからかな。

「分かったよ、クマガイさん。」
 俺は言い直す。
 ユミコはハッとして、道から外れて建物の影に入る。

「ど、どうしたの、クマガイさん。」
 俺はユミコを追いかけて、物影に入る。

 ダン!

 俺は建物の壁際に追いやられ、ユミコは俺の背後の壁を叩く。
 そして壁から、手を離さない。
 いや、近いです。ユミコさん。
 俺のドキドキが止まらない。

「おまえ、何者だ。なぜ私の名を知っている。」
「あ、」
 やっべー。この時代では、誰もクマガイユミコとは呼んでなかったな。
 うーん、どうごまかそうか。
 てか、近いです。ユミコさん。

「おまえ、魔王軍のスパイだな。」
「え、」
 えと、何言ってんだ?
 つか、ユミコの生暖かい吐息が、俺の顔面に吹きかけられる。
 近くで見るユミコは、美しすぎる。
 ユミコの唇に、俺の唇が引き寄せられる。

「動くな!」
 パシん!

 ユミコはいきなり俺の頬をはたく!
 俺は呆然と、ユミコを見つめる。
 そんな俺に、いきなりボディブロー!
 ぐは。
 身をかがめる俺の左頬に、右回し蹴り!
 がはー。

 俺は弧を描いて吹っ飛び、仰向けに地面に背中から叩きつけられる。
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