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ローザ姫との密会編

第137話 勇者カスカベに戻る

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 虹の橋をゲットするのに必要なアイテム、聖なる霧吹きはローザが持っているらしい。
 なんでローザがそんなもん持ってるのか知らないが、俺とユミコに話しがあるから、二時間後、オオミヤ城の裏で待ち合わせになった。


「おいローザ。」
 俺は通信の切れたローザの盗聴器に呼びかける。
 が、ローザの返答はない。

「たくぅ、ここからオオミヤ城まで、どんくらいかかると思ってんだよ。」
 普通に半日以上はかかる距離だ。勇者としてレベルを上げた俺でも、どんなに急いでも、四時間はかかる。
 これを二時間なんて、無理難題もいいとこだ。

「あ、帰還呪文使えば、すぐか。」
 これを二時間後に使えって事か。

「駄目よ、ユウタ。帰還呪文は使えないわよ。」
 ユミコが俺のナイスアイデアを否定する。
「おいおい、それじゃあ間に合わないじゃん。」
「大丈夫よ、転移呪文を使うから。」
「ん?」

 俺の頭がこんがらがる。
 帰還呪文は駄目で、転移呪文を使う?
 俺は帰還呪文しか使えんぞ。

「はあ。」
 頭がパニックしてる俺を見て、ユミコが思っくそため息をつく。
「帰還呪文なんて使ったら、ユウタがオオミヤ城に来た事が、みんなにバレちゃうでしょ。」
「えと、」
 ユミコの発言に、俺は言葉がつまる。
 帰還呪文ってそう言うものだし、それは転移呪文でも同じだろ?

「ローザはね、ユウタと会うところを、誰にも見られたくないのよ。」
「なるほど。帰還呪文を使ったら、バレバレって事か。
 でも、なんで誰にも見られたくないのかな?」
 俺にはどうしても、そこんとこが分からない。

「女の子には、女の子の事情があるのよ。」
「女の子ぉ?」

 俺は思わず吹き出しそうになる。
 まあガキんちょのローザも、女の子には違いない。
 化粧なんかして色気づいてきた事だし、そんなお年頃なんだろう。
 アラサーなユミコにも、そんな経験があるのだろう。

「でも、転移呪文でも、バレるのは同じじゃない?」
 帰還呪文を使わない事を了承した俺だが、帰還呪文を転移呪文に置き換える意味は、分からんかった。

「帰還呪文は、オオミヤ城にしか行けない。
 転移呪文なら、行った事のある所に行ける。」
「あ、そっか。」
 ユミコが帰還呪文と転移呪文の違いを教えてくれた。

 つまり、転移呪文でカスカベの街に行って、そこからオオミヤ城に行けばいいんだな。

「やっと分かってくれたようね。じゃ、行くわよ。トラベル!」
 ユミコは転移呪文を唱えた。
 俺とユミコは、カスカベの街に転移した。

「ふう、ここからオオミ」
 ユミコが俺の口元を鷲掴みして、俺のセリフを遮る。

「し。お城の密偵に気づかれるでしょ。」

 そっか。
 これから行うローザとの密会。
 それは、誰にも見られては、いけないんだ。
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