上 下
128 / 221
章なしで行きたいんだが~オオミヤからチチブへ

第128話 勇者寄付金足りない

しおりを挟む
 チチブの商店街の奥で、俺はルギアのお守りを購入する。
 売ってくれたシスターは、何か訳ありのようだった。


 俺に『ルギアのお守り』を売ってくれたシスターは、何度も俺に頭を下げてる。
 俺も片手を上げて、シスターに答える。したらシスターは頭を下げて、俺は片手を上げてを繰り返す。
 それは、俺が角を曲がるまで繰り返された。

「で、これって何に使うんかな?」
 シスターが見えなくなった所で、俺はユミコに聞いてみる。
「さあ?ルギアの加護があるんでしょ?」
 つまり、ユミコにも分からないらしい。

「ルギア様の加護、か。」
 よく分からんが、これが無駄金にならない事を祈ろう。

 チチブの街中は、相変わらず異様な雰囲気だ。
 ムサシから逃げてきた人たちと、元からチチブにいる人たちとで、混乱が起きようとしている。

「ルギア様。どうか俺が魔王を倒すまで、この街が平和でありますよーに。」
 俺はルギアのお守りを握りしめ、祈ってみた。
 これくらいのご利益は、あってほしいぞ。

 俺とユミコは、まっすぐルギア神殿に向かう。
 あまり寄り道したくない気分だった。

 ルギア神殿に着くと、ルギアのお守りがほのかに輝く。
 そして魔法の鍵のかかった扉が、ひとりでに開く。
「あら、ご利益あったみたいね。」
 それを見て、ユミコがつぶやく。
 つまり、ルギア神殿に入れるために使う、魔法の鍵の代金が浮くのか。

 まさか、これだけのために、有り金全部巻き上げられたんじゃないよな。

 ルギア神殿に入ってみても、宝箱なんてあるのかな?
 少なくとも、以前来た時は、見つけられなかった。

 俺は神殿の巫女さんに聞いてみる。
「ここは偉大なる精霊神、ルギアを祀った神殿です。」
「かつて勇者ウラワは、太陽の光を大気中の水蒸気でプリズム反射させ、虹の橋を作ったそうです。」
「虹の橋を作るのに最適な場所。それが神帝のほこらと言われてます。」
 うん、前にも聞いたよ、それ。

 とりあえず、ルギア様の像がある本殿にでも、行ってみるか。
「げ。」
 本殿の扉の前には、あの巫女さんがいた。
 中に入りたいなら、16000円寄付しろって言ってたあの巫女さん。
 まあ、以前は無視して入ったから、今回も同じでいいだろ。
 と思ったら、ルギアのお守りがほのかに輝く。
 いや、俺はこの輝きに気づかなかったんだけど。

「あ、あなた様はもしや、」
 無視して素通りしようとしたら、いきなり話しかけられ、俺はキョドる。
「き、寄付する金なんて無いからな。」
 今の所持金は33円。16000円には程遠い。
 それで本殿に入ろうとしてるのだから、我ながらいい度胸してるよな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界複利! 【1000万PV突破感謝致します】 ~日利1%で始める追放生活~

蒼き流星ボトムズ
ファンタジー
クラス転移で異世界に飛ばされた遠市厘(といち りん)が入手したスキルは【複利(日利1%)】だった。 中世レベルの文明度しかない異世界ナーロッパ人からはこのスキルの価値が理解されず、また県内屈指の低偏差値校からの転移であることも幸いして級友にもスキルの正体がバレずに済んでしまう。 役立たずとして追放された厘は、この最強スキルを駆使して異世界無双を開始する。

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

断罪

宮下里緒
ファンタジー
三丸町、のどかでなんの変哲もない少し寂れた街。 それ以外の特徴なんてこれといってないはずだった。 街の一角にある時実養護施設、身寄りのない子供たちを預かるその施設の院長が死んだ。 それを皮切りにしたかのように次々と起きる凶悪な事件。 呪われたように街に惨劇が降り注ぐ。 そして少年少女は真実にたどり着く。 『罪には罰を』 誰かがそう言った。

シャンフロSS

らい
ファンタジー
シャングリラ・フロンティアという漫画、 なろう小説のファンSSを書くためだけのも のです

異世界転生でチートを授かった俺、最弱劣等職なのに実は最強だけど目立ちたくないのでまったりスローライフをめざす ~奴隷を買って魔法学(以下略)

朝食ダンゴ
ファンタジー
不慮の事故(死神の手違い)で命を落としてしまった日本人・御厨 蓮(みくりや れん)は、間違えて死んでしまったお詫びにチートスキルを与えられ、ロートス・アルバレスとして異世界に転生する。 「目立つとろくなことがない。絶対に目立たず生きていくぞ」 生前、目立っていたことで死神に間違えられ死ぬことになってしまった経験から、異世界では決して目立たないことを決意するロートス。 十三歳の誕生日に行われた「鑑定の儀」で、クソスキルを与えられたロートスは、最弱劣等職「無職」となる。 そうなると、両親に将来を心配され、半ば強制的に魔法学園へ入学させられてしまう。 魔法学園のある王都ブランドンに向かう途中で、捨て売りされていた奴隷少女サラを購入したロートスは、とにかく目立たない平穏な学園生活を願うのだった……。 ※『小説家になろう』でも掲載しています。

今世では溺れるほど愛されたい

キぼうのキ
ファンタジー
幼い頃両親を亡くし、親戚の家を転々としてきた青木ヨイは居場所がなかった。 親戚の家では煙たがられ、学校では親がいないという理由でいじめに合っていた。 何とか高校を卒業して、親戚の家を出て新しい生活を始められる。そう思っていたのに、人違いで殺されるなんて。 だが神様はヨイを見捨てていなかった。 もう一度、別の世界でチャンスを与えられた。 そこでのヨイは、大国のお姫様。 愛想、愛嬌、媚び。暗かった前世の自分に反省して、好かれるために頑張る。 そして、デロデロに愛されて甘やかされて、幸せになる!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

前世魔王の伯爵令嬢はお暇させていただきました。

猫側縁
ファンタジー
前世、我は魔王であった。 王座について勇者を待ち、倒しては新たな勇者を待ち……。そんな日々に飽きていた我。しかしいつのまにか人間の令嬢なんぞに転生していた。 何?我が居るせいで姉2人の結婚が決まらない?義母は毒殺しようとしてくるし、父親も基本我に関わらず。……ふむ。ならば我、好き勝手生きたいから出てく。 これは見た目は可憐な令嬢(中身数千年生きた魔王)が、元配下と料理長のせいでついた変な常識の元、無自覚チートで逞しく世界を進んで行くお話。

処理中です...